内制止
内制止(internal inhibition)とは、消去手続により形成される積極的な制止過程のことで、反応を生じさせないようにと働く生体の積極的な抑制作用のことである。内制止は、パブロフ氏が用いた概念で、消去による反応の減衰は自発的回復や脱制止の現象を考えれば単純な興奮過程の減衰ではなく、反応を積極的に制止する内的過程の発達によるとされた。 条件づけにおける消去と自発的回復 ここでいう「条件づけ」における消去とは、条件刺激のみを提示し、無条件刺激を随伴させないことで「条件刺激」を消失させる手続きのことである。また
内集団バイアス(内集団びいき)
内集団バイアス(内集団びいき)とは、外集団の者より内集団の者に対して好意的な認知・感情・行動を示す傾向であり、より望ましい属性を認知し、高く評価し、優遇するという認知のあり方である。 内集団(ないしゅうだん)とは、もちろん「自己が所属する集団」であり、会社であれ、団体であれ、家族であれ、自己が所属する集団は、各々の領域において内集団である。 なお、現在属しているかだけでなく、経歴といった形で自分の属性のあり方として内集団の概念や内集団バイアスが出ることもある。例えば、「母校の後輩だから大目に見よう」というのも内集団
アナウンスメント効果
アナウンスメント効果(announcement effect/アナウンス効果)とは、候補者の当落や政党の議席の増減についてアナウンスメント(世論調査に基づく予測や観測報道)することで、当落や議席増減に影響を及ぼす現象のこと。投票行動研究の用語であり、単純に言えば「報道の効果」である。 アナウンスメント(announcement)とは、発表や声明を意味するため、外部の人間に対して何かしらの情報を与えるというような意味になる。そうした発表や声明としての「アナウンスメント」がそれを受けた側にもたらす影響がアナウンスメント
モダリティ効果
モダリティ効果(modality effect)とは、言語材料を記銘(新しく記憶)する時、呈示モダリティによって記憶成績に差が生ずることで、主に視覚よりも聴覚のほうが新近効果(新近性効果)が得られること。言語材料を視覚よりも聴覚で呈示したり音読させる条件の方が、単語や文字のリストの直後再生において特にリスト終末部の成績良いというような効果が代表的である。モダリティ効果は、「2秒間程度持続する聴覚的感覚記憶」である「前カテゴリー的音響貯蔵庫=PAS」を仮定することによって説明されたが、唇だけ動かす条件や、唇の形や手話
クロスモダリティ・マッチング
クロスモダリティ・マッチング(cross-modality matching)とは、モダリティ(感覚様相)が異なれば、主観的体験の内容は全く異なる中、二つの異なるモダリティの間で、その二つの感覚量が主観的に等しくなるようにマッチングを行うことである。 このモダリティ(sense modality)には、一般に視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、触覚・皮膚感覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚、運動感覚(筋感覚)、平衡感覚、内臓感覚(有機感覚)といった区分がある(モダリティ効果「モダリティ(sense modality/感覚様相)」
ヤーキーズ-ドッドソンの法則
ヤーキーズ-ドッドソンの法則(Yerkes-Dodson’s law)とは、「覚醒レベル」と「学習のパフォーマンス」と関係において「逆U字型」の関係があり、「ある最適水準までは覚醒の増加とともにパフォーマンスは向上していくが、最適水準を超えると逆に低下していく」という法則である。 アメリカの心理学者であるヤーキーズ氏(Yerkes,Robert Mearns)とドッドソン氏(Dodson,John Dillingham)が行った「ネズミを使った学習実験」からこの法則が導き出された。 その後、ロフタス氏に
アルベド知覚
アルベド知覚(albedo perception)とは、照明条件の変化にかかわらず、視覚系を通じて得られる「その物体の知覚上の明るさ」は比較的一定に保たれる現象のことである。例えば、太陽の光の下でも、暗い部屋の光の下でも、紙は白く見え、黒い服は黒く見えるような場合がある。これがアルベド知覚である。アルベドとは心理学・知覚的には「外界の物体の明るさに関する情報に関連する指標」を意味する。 人間の活動する環境における照明条件は常に変化する。環境・状況に応じて光の入り方は非常に大きく変化し、外界の物体から視覚系に送り込ま
経歴効果(履歴効果)
経歴効果(履歴効果/career effect)とは、心理学における実験、測定において、「前回の測定が今回の測定に影響する」といった形で捉えられる影響のこと。実験の測定値に異なりがあった場合に条件統制の問題として考えられる場合の影響を意味する。 心理学における実験や測定は、物理的測定を代表としたような、自然科学の分野のように条件を同一にできず、学習や動機づけ等の要因により測定値が異なる場合がある。測定の経過に伴い対象が変化するため、各々の測定が独立することはない。よって同一対象に同じ測定を繰り返したとしても、学習や
アンカリング効果
アンカリング効果(Anchoring)とは、ある基準を与え、後の判断の際にそれ以前に提示された基準が影響を及ぼすという効果で、狭義には、係留効果(anchor effect)を意味する。また、「アンカー(錨/いかり)とトリガー(引き金)」という概念で、ある特定物との関連付けにより、その刺激に触れると特定の概念や情動を呼び起こすこともアンカリング、アンカーリングと呼ばれる。 アンカリング効果は、先行する情報として、後の判断に直接関係のないような「数値」や「色」が影響を与え、本来その情報とは関係のない「後の判断」の際に
ラポール
ラポール(rapport)とは、カウンセリングなどの心理療法において、治療者(面接者)と患者の間に存在する人間関係のうち、相互信頼の関係が成立している状態を指す。通常、受容的態度によって治療に有効なラポールが形成されると考える。臨床心理学における用語だが、実験・テストにおいても、実験者・テスターと被験者・被検者との良好な関係も「ラポール」と呼ばれ、広く二者間において「信頼関係が築かれている状態」「心が通い合っている状態」を意味する。 このラポールという概念の裏には、心理治療の目標として、単純に「既に結果としている心
コスチューム効果・ユニフォーム効果
コスチューム効果とは、着ている服装が持つイメージ・期待に合わせて意識が変化するという効果であり、それが集団になるとユニフォーム効果として、さらに仲間意識ができたりするというような心理効果が現れる。 着ている服装の色彩的な心理効果も影響はあるが、大きく影響するのは「社会的な期待」であり、職業に応じた「制服」であれば、その制服を着用する職業人が社会に求められているであろう「あるべき姿」に合わせて行動を取ろうとするような効果である。 単体であれば「コスチューム効果」と表現するほうが良いかもしれないが、集団で制服を着て行動
ラベリング効果
ラベリング効果とは、ラベリングされレッテルを貼られることで、そのレッテルに合わせるように心理が誘導されてしまうという効果。ラベリングが言語的媒介過程を通して学習、記憶に影響を及ぼすことがラベリング効果である。 「あなたは頭がいい」と言われ続ければ、本当に頭が良くなったり、「あなたはいい人ですね」と言われ続けていれば「良い人」であろうとする心が働くといった具合である。 ラベリング効果は、学習記憶に影響を与えるという形になるが、期待に沿うようにとラベリングされたことに合わせてに心や人格が誘導されるという現象であると考え
アンビバレンス(アンビバレンツ)効果
アンビバレンス効果(ambivalence)とは、両面価値や両価感情と訳され、同一の対象に対して、相反する感情や態度を同時にもつ現象およびその現象による心理効果のこと。相反する感情を同時に起こったり、相反する態度を同時に示すことがアンビバレンスである。なお、ドイツ語の「ambivalenz」から「アンビバレンツ」とも呼ばれる。こうした相反する両面の感情が同時に起こった時、どちらか一方の感情が抑圧され、抑圧されたものが行動に影響を与えるというのがアンビバレンス効果(アンビバレンツ効果)である。 目の前の現象自体は無属
リボーの法則(リボーの逆行律)
リボーの法則(Ribot’s law/リボーの逆行律)とは、記憶の忘却に関する経験則で、記憶障害や進行性痴呆などの場合において、忘却が新しい記憶から古い記憶へ、また単純な記憶から複雑な記憶へと進行すること。直観的な予測とは反対に「新しい記憶」から忘れたり、「複雑な記憶」から先に忘れたりする現象。「リボーの法則」の名称は、フランスの心理学者・精神病理学者、哲学者であるリボー氏から。名前の綴りからリボットの法則と表記されることもある。 最近覚えたことの方がよく記憶されていそうなものだが、「私ご飯食べたかしら
エンメルトの法則
エンメルトの法則(Emmert’s law)とは、「残像の大きさは、眼から投射面までの距離に正比例する」という法則である。 このエンメルトの法則は、残像の見えの大きさに関する法則であり、残像の見えの大きさは残像が投影される面までの距離に比例するが、投影面までの物理的距離だけでなく見えの距離も影響を及ぼすとされる。なお、この法則は、投射距離が一定範囲を超えると成立しない。 残像の大きさを確認する例として、ストロボを用いて、至近距離のものと奥にある壁の残像の比較をするとわかりやすい。残像の見かけの大きさは距
レストルフ効果(孤立効果)
レストルフ効果(Restorff effect/孤立効果)とは、記憶材料の中に異質項目があるとその再生がよいという心理効果。孤立の程度は項目間の相対的関係によって決まるが、項目の類似性と異質性は知覚的にも意味的にも捉えることができる。そうした中、記憶をしていく上で、異質の項目があったほうが記憶を呼び出しやすいという効果がレストルフ効果である。 記憶する材料のリストの項目は、互いに似ている場合と異質の項目を含む場合とがあるが、無意味綴り・図形・数字・文字・色を組み合わせて、記憶材料の中に異質項目があったほうがその再生
バラード-ウィリアムズ現象
バラード-ウィリアムズ現象(Ballard-Williams phenomenon)とは、有意味材料の記憶で数日程度の比較的長い時間間隔で生じるレミニセンス(一定時間経過後の方が記憶を想起しやすくなる現象)のこと。 詩や散文などの有意味材料を記憶した場合、記銘直後よりも2、3日後の方が保持成績が良いことがバラード-ウィリアムズ現象である。 バラード-ウィリアムズ現象のメカニズム バラード-ウィリアムズ現象が起こるメカニズムとして、学習時には、「正反応」と同時に「妨害的反応」や「誤反応」も学習されるが、それらは急速に
ワード-ホブランド現象
ワード-ホブランド現象(Ward-Hovland phenomena/ワード-ホヴランド現象/ワード-ホブランド効果)とは、無意味材料の記憶や運動学習で数分程度の比較的短い時間間隔で生じるレミニセンス(一定時間経過後の方が記憶を想起しやすくなる現象)である。無意味綴りなどの記憶材料で数分内の短い時間内に見られるレミニセンスが、ワード-ホブランド現象である。 換言すれば、ワード-ホブランド現象とは、「無意味なことに対する記憶」や動きなどの運動においては、学習直後よりも数分後(概ね10分以内)の方が思い出しやすいという
レミニセンス
レミニセンス(reminiscence)とは、学習直後より一定時間経過後の方が学習成績が良くなる現象のこと。記憶の保持は時間経過とともに一般的に減少していくが、時に記憶直後よりもある時間を経過した方が再生がよい場合がある。レミニセンスはそうした「条件によっては一定時間が経ってからのほうが、記憶をより想起できる」現象のことを示す。 通常、記憶実験における記銘材料の再生や運動学習において、その学習の成績は、学習直後から時間の経過とともに低下するが、条件によっては、学習直後より一定時間を経過した後の方が成績がよい場合があ
ネオフォビア(新奇恐怖)
ネオフォビア(neophobia/新奇恐怖)とは、自分の知らない新しいものには恐怖心を抱いてしまうという心理で、今まで慣れたものとは異なる新奇な刺激に接したとき、それを非難したり恐れたり避けようしたりとすること。 このネオフォビアは、本能的な心理であり、生存本能として「生き延びること」を最大の目的とした場合、今までどおりでも生きてこられたのだから、新しいもの、未知のものは基本的に危険であり避けるべきであるというような本能を発端とする。 逆に言えば慣れ親しんだものは「それが何であり、どのような属性で、どのような機能を
ロストゲイン効果
ロストゲイン効果とは、希少価値効果(希少性の原理)をさらに高めたような心理効果であり、「ラスト1つ」といった形で、限定的でその後機会が消失してしまうことをイメージすることによってもたらされる欲の刺激のこと。 期間限定や数量限定といった希少価値によって購買意欲などが促されるという現象をさらに強化し、あと一つで入手チャンスなどが失くなってしまうことを危惧する形でもたらされるのがロストゲイン効果である。ゲイン(gain)とは、獲得や入力を意味するため、「入力が絶たれる」「入力経路が消失する」「獲得することを喪失する」とい
クレイク-オブライエン効果(コーンスウィート錯視)
クレイク-オブライエン効果(Craik-O’Brien effect/コーンスウィート錯視/コーンスイート錯視)とは、明るさ知覚に関する現象(錯視)の一つで、同一輝度の面に明暗のある境界線を引くと隣接している側の明暗がどちらかによって線によって分割された各々の面全体の見え方か変化する現象である。 このクレイク-オブライエン効果(コーンスイート錯視)は、一様な輝度分布の面に明暗2本の線からなる境界線を隣接させ二分しているとき、輝度の高い線に接する側は全面が全体に明るく見え、輝度の低い線に接する側は暗く見え
アロンソンの不貞の法則
アロンソンの不貞の法則とは、関係性が強い人からの評価よりも関係性の希薄な人から受ける評価の方が承認欲求が満たされ嬉しい気分になるというような心理効果である。 単純には、内輪から褒められるより、友達の友達くらいの関係の人から褒められる方が、「内輪びいきがないだろう」ということで嬉しくなるというような効果である。おかあさんに「それ似合っているよ」と言われるより、たまたま紹介された友達の友達に「オシャレを教えてください」と言われる方が嬉しいというような感覚である。 このようにアロンソンの不貞の法則は、長年の付き合いのある
スティンザー効果(スティンザーの3原則)
スティンザー効果(スティンザーの3原則)とは、アメリカの心理学者スティンザー氏の研究による「小集団における心理的効果・原則」で、主に会議中の心理の法則である。次の3つの原則で示されるため、スティンザーの3原則と呼ばれる。 ①会議の時に正面に座る人は、反対意見を持つ人、過去に激しく口論になった人が多い。 ②会議の時に、ある発言があった後、次に発言する人は意見に反対である場合が多い。 ③会議の議長の主導権が強い場合は、隣同士の人達の間で私語が多く、主導権が弱い場合は、正面に座る人同士の私語が多い。 スティンザー効果(ス
ロミオとジュリエット効果
ロミオとジュリエット効果(Romeo and Juliet effect)とは、困難・障壁がある方が気持ちが燃えるという心理効果で、元はもちろんウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」から。 困難・障壁によって恋心は燃えやすくなる ロミオとジュリエット効果は、特に恋愛において、困難・障壁がある方がかえって恋心が燃えやすいという効果であり、逆にそうした障壁が取り除かれると急に熱が冷めるという側面も持っている。 交際を誰かに邪魔されたり、反対されたりすると、当の本人たちは逆にそれを乗り越えようと燃え上がって