春の七草

春の七草として七草粥を食べたことは数回しかありませんが、見直してみるとうさぎの好物ばかりです。七草粥を食すという風習は、中国より伝来し、日本では平安時代初期にに宮中や幕府の行事として伝わり、その後庶民へと広まって来たようです。 1月7日(人日の節句)に食べるのが一般的な風習のようですが、旧暦なので現在の2月にあたります。

春の七草は、芹(せり)、撫菜(なずな)、御形(おぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座(ほとけのざ)、鈴菜(すずな)、清白(すずしろ)の七種の植物です。なお七種と書いて「ななくさ」と読む場合もあります。撫菜は薺、鈴菜は菘、清白は蘿蔔と書く場合もあります。

しかしながら、一部は平安時代などの古来の呼称であり、現代では馴染みがなかったり、呼称は通称名で同名別種の植物があったりと間違えやすいため現代の呼称を列挙しておきます。

芹(セリ)、ぺんぺん草、母子草(ハハコグサ)、ハコベラ・ハコベ、小鬼田平子(コオニタビラコ)、蕪(カブ)、大根といった感じです。仏の座(ほとけのざ)として別に正式な「ホトケノザ」というシソ科の植物(別名三階草)がいますが、春の七草における仏の座は「小鬼田平子」を指します。

なお、この春の七草の分類は現代のものであり、鈴菜(すずな)に関しては蒜(ひる)・野蒜(のびる、ののひる)を指し、清白(すずしろ)に関しては、キク科の嫁菜(ヨメナ)・菟芽子(ウハギ)を指す場合もあります。これについては後述します(他の春の七草の分類)。

芹(せり)

芹の葉

芹(せり)。シロネグサ(白根草)とも呼ばれ、春は葉のみで夏に白い小花を付ける春の七草です。水辺や湿地に多く生息していますが、芹科はうさぎの大好物が多いですね。水菜に見えてセリだったというケースがたまにあります。知人が水耕栽培で生産されています。芹(せり)に限らず、セリ科は独特の芳香を持っています。

芹(せり)

撫菜(なずな)

ナズナ

撫菜(なずな)、薺。アブラナ科ナズナ属の越年草。ロゼット状の根生葉で、春に4枚の白い花弁の十字型の花が咲きます。別名ぺんぺん草(ペンペングサ)、三味線草(シャミセングサ)。

撫菜(なずな)

御形(おぎょう)

ハハコグサ

御形(おぎょう)。五形、御行、ゴギョウとも言われるそうです。母子草(ハハコグサ)というようです。キク科ハハコグサ属の越年草で、葉は白い産毛に覆われています。茎の先端に黄色い頭花の塊(頭状花序)がつきます。冬は根出葉がややロゼットの状態で育ち、春になると茎を伸ばして花をつけます。

母子草(ハハコグサ)

繁縷(はこべら)

ハコベ

繁縷(はこべら)。インコなど小さい鳥が大好きな草です。旧字では蘩蔞と書くようです。ナデシコ科ハコベ属をさしますが、ハコベというときは、ハコベ属の1種であるコハコベかミドリハコベをさすようです。

繁縷という字の繁は、文字通り「繁(しげ)る」から、蔓延り繁るという意味で、そして「縷(る)」は「細々と連なる糸筋」という意味があることから、茎を毟ると筋が糸のように出てくる特性から、と推測されています。

繁縷(はこべら、ハコベ)コハコベ ミドリハコベなど

仏の座(ほとけのざ)小鬼田平子

タビラコ コオニタビラコ

春の七草としての仏の座(ほとけのざ)は、小鬼田平子(コオニタビラコ)キク科に属する越年草です。近くの公園に自生しています。持って帰って養子のうさぎに与えると、嬉しそうに食べていました。ホトケノザに限らず、ディーゼルエンジンから排気される有害物質には気をつけたいところです。よく洗ったほうがいいと思います。なお春の七草の仏の座(ほとけのざ)は、キク科の植物であり呼称は通称名です。シソ科のホトケノザとは完全に別種です。

仏の座(ほとけのざ)小鬼田平子(コオニタビラコ)

菘・鈴菜(すずな)

蕪(かぶ)鈴菜(すずな)

鈴菜(すずな)、菘。蕪(カブ)です。カブは、アブラナ科アブラナ属の越年草です。たまに京北町で買います。葉はうさぎも食べます。

蕪(かぶ)菘・鈴菜(すずな)

清白(すずしろ)

秋大根 清白・蘿蔔(すずしろ) 清白 秋大根

清白(すずしろ)、蘿蔔。大根です。ただ、七草ということで大根の葉をさすようです。大根は、アブラナ科ダイコン属の越年草です。

大根 清白・蘿蔔(すずしろ)

他の春の七草の分類

春の七草に関する情報は数多くあり、春の七草としての植物として芹(せり)、撫菜(なずな)、御形(おぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座(ほとけのざ)、鈴菜(すずな)、清白(すずしろ)の七種の植物であるということは一貫しています。

南北朝時代から室町時代前期に活躍した四辻善成氏が著した河海抄(かかいしょう。源氏物語の注釈書)において七草について触れているそうで、それが春の七草の歌として有名な

「芹(せり)薺(なずな)

御行(おぎょう)繁縷(はこべら)仏の座(ほとけのざ)

菘(すずな)蘿蔔(すずしろ)これぞ七草」

というものの元になっているようです。

しかしながら、セリやハコベに関しては、そのまま芹や繁縷を示していると解せるものの、例えば「仏の座」に関しては、同名の植物がある中、春の七草としてのタビラコ・コオニタビラコの俗称であったりと、どの植物を指しているのか不明瞭な点が残っています。

そうした中、昭和42年発行、辺見金三郎氏著の「食べられる野草」の中の解説に、鈴奈(すずな)と清白(すずしろ)に関する記述があり、鈴奈・スズナは「ノビル」、清白・スズシロは「ヨメナ」に当たると解釈されるという記述がありました。

参考までに野蒜・ノビルと嫁菜・ヨメナについて触れておきましょう。

蒜(ひる)野蒜(のびる、ののひる)

蒜(ひる)野蒜(のびる、ののひる)はユリ科ネギ属(分類によってはヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属)の多年草で、辺見金三郎氏によると春の七草の鈴奈(スズナ)は、この蒜または野蒜を指していると解釈されるようです。ただ、古名の蒜(ひる)はいわゆる大蒜(にんにく)を指したりするので、野蒜の方を指していると考えられます。

前出の書籍によると、野蒜は辣韮(らっきょう)や浅葱(アサツキ)のような味と香りを持っているようです。

確かに形状は辣韮や沖縄の島らっきょう系なので鈴奈の名の通り、鈴っぽい形状をしています。

詳しいことはわかりませんが、書籍の中にも「上古時代から広く食用されていたもののようです」という記述があり、古事記や万葉集にも「野蒜」の名が出てくるようですので、古くから日本においても馴染みのある野草であるため、春の七草として扱われていてもおかしくはないと思います。が、詳しいことはわかりません。

嫁菜(よめな)・菟芽子(うはぎ)

嫁菜(よめな)はキク科の多年草であり野菊の一種です。古名を菟芽子(うはぎ)といい、辺見金三郎氏によると春の七草の清白(スズシロ)はこの嫁菜(よめな)を指していると解釈されています。開花時期は秋ですが、春の若葉は食用になるようです。嫁菜は古名として菟芽子(うはぎ)が「うわぎ」と発音されたりするほか、「おはぎ(於波岐、莪蒿、薺蒿菜、薺頭蒿)」と呼ばれたりします。

ヨメナはキク科の野菊の一種で、通常嫁菜の花は薄紫のようですが、白い花を付けたりもするようです。

たくさんの古名がある上で、わざわざ嫁菜を清白と呼ぶ理由があるのかどうかはわかりません。

花が白いならば清白(すずしろ)に当たるというのもわかりますが、葉はもちろん緑ですし、個人的には「花が薄紫のものもたくさんある植物をわざわざ清白という別称では呼ばないだろう」と思っています。

そう考えると大根のほうがそれっぽく感じてしまいます。大根の花は白のものもありますし(薄紫系や黄色のものもありますが)、可食部が思いっきり白いですからね。

詳しいことは御本人ではないのでわかりませんが、ひとまずそんな記述も見つけたということで記載しておきました。


Category:植物

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