花簪(はなかんざし)は、キク科ローダンセ属(Rhodanthe、ローダンテ属、ロダンテ属)の半耐寒性多年草(生育環境によっては一年草扱い)。オーストラリア原産で、かつてはへリプテルム属に分類されていたため、へリプテルムと呼ばれることもあります。現在はキク亜科メナモミ連ローダンセ属(ローダンテ属、ロダンテ属)に分類されます。同属のローダンセ(ヒロハノハナカンザシ)は一年草のようです。

花簪(はなかんざし)ローダンセ アンテモイデス2
花簪(はなかんざし)の名は流通名であり、本来のハナカンザシは「Rhodanthe chlorocephala subsp. rosea」の和名であり、ここではローダンセ アンテモイデス(Rhodanthe anthemoides)について触れていきます。

花簪(はなかんざし)ローダンセ アンテモイデス
花簪(ローダンセ アンテモイデス)の花
花簪(はなかんざし)ことローダンセ アンテモイデスの花弁は八重咲きでカサカサ気味ですが、珪酸質のため色や形がキープされています。真ん中の黄色い筒状花が花であり、白色の部分は総苞片です。

花簪(はなかんざし)ローダンセ アンテモイデスの開花
花が開く少し前はこんな感じです。
花簪(ローダンセ アンテモイデス)の葉

花簪(はなかんざし)ローダンセ アンテモイデスの葉
花簪(はなかんざし)ローダンセ アンテモイデスの葉はこんな感じです。幅3mm程度の細い葉がつきます。
学名: Rhodanthe anthemoides
「花びら」ではない、という美しい裏切り
私たちが「白い花びら」だと思って愛でているあの部分は、植物学的には花弁ではありません。「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれる、葉が変化してできた鎧(よろい)のような器官です。
本当の花は、中心にある黄色い部分に密集している小さな管状のものです。あの白くカサカサとした部分は、大切な花を守るために進化した、言わば「高機能な包装紙」なのです。花びらではないからこそ、散ることがなく、いつまでも色褪せない。私たちがハナカンザシに感じる「永遠性」や「作り物のような美しさ」は、この構造的なトリックによって生み出されています。
湿度を測る「白いセンサー」
ハナカンザシの蕾(つぼみ)を観察していると、日中はふっくらと開いているのに、夜や雨の日には堅く閉じて、赤い真珠のような姿に戻ることに気づくでしょう。
これは、光や温度だけでなく、「湿度」に敏感に反応する開閉運動です。彼らの故郷は乾燥したオーストラリアの大地です。貴重な花粉を湿気で濡らしてしまうことは、次世代を残せないという死活問題になります。そのため、空気中の水分量が増えると、即座に総苞片というシェルターを閉じ、内部を完全防水します。あの可憐な動きは、雨から身を守るための必死の防衛システムであり、庭における天然の湿度計としても機能しています。
砂漠が生んだ「音」の出る花
指で触れると「カサカサ」と音がする。生花でありながらドライフラワーのような質感を持つこの不思議な手触りは、彼らが過酷な乾燥地帯で生き抜くために獲得した生存戦略の証です。
水分を極限まで減らした組織は、強烈な太陽光による水分の蒸発を防ぐと同時に、枯れても形を保つ強度を持っています。水をたっぷりと含んだ日本の植物のような瑞々しさはありませんが、その代わりに「乾くこと」を恐れない強さを持っています。その乾いた音は、遠い砂漠の風の記憶を私たちに伝えているのです。
「死」と「生」の境界を消す魔法
ハナカンザシは、切って吊るしておくだけで、色も形もほとんど変えずにドライフラワーになります。多くの花が、枯れると茶色く変色し、萎れてしまうのに対し、彼らは「死んだ」のか「生きている」のか判別できないほどの姿でそこに留まり続けます。
生花の状態から、すでにドライフラワーとしての完成度を内包している。この「時間の凍結」とも言える性質こそが、リースやクラフト素材として絶大な人気を誇る理由です。彼らは枯れるのではなく、ただ静止する。その姿には、朽ちることへの抵抗と、美を永遠に留めたいという願いが具現化されています。
日本の「蒸れ」との孤独な戦い
彼らにとって、日本の梅雨や真夏の高温多湿は、故郷の環境とは真逆の地獄です。土が常に濡れている状態を極端に嫌います。
「かわいそうだから」と水をやりすぎてはいけません。鉢植えであれば、雨の当たらない軒下に避難させ、土がカラカラになるまで水を断つ勇気が必要です。彼らの美しさは「乾き」の中にこそ宿ります。水を控えることは彼らの原点(オリジン)を尊重する最高の愛情表現となります。
キク科
- キク科キク属 菊(キク)
- キク科キク属 嵯峨菊
- キク科ヤブタビラコ属 小鬼田平子(コオニタビラコ)
- キク科ガーベラ属 ガーベラ
- キク科コスモス属 秋桜(コスモス)
- キク科ヒヨドリバナ属 藤袴(ふじばかま)
- キク科ムカシヨモギ属 姫女菀(ひめじょおん)
- キク科ハハコグサ属 母子草(ハハコグサ)御形(おぎょう)
- キク科アザミ属 野薊(のあざみ)
- キク科オケラ属 朮(オケラ)白朮(ビャクジュツ)
- キク科モクシュンギク属 マーガレット
- キク科シカギク属(カミツレ属、マトリカリア属) ジャーマンカモミール(カモマイル)
- キク科ルドベキア属(オオハンゴンソウ属) ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)
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