アンダーマイニング効果

アンダーマイニング効果

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アンダーマイニング効果undermining effect過正当化効果)は、内発的動機づけによる行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行った場合、やる気がなくなっていくという「やる気低減現象」。

内発的動機が既にあるのに、ブースター的に外発的動機を加えようとすれば、元の内発的動機すら失っていく、というようなことがアンダーマイニング効果である。

元々人が行為を行う時にはその裏に動機があり、そしてその動機には、行為をなすこと自体が目的となっている「内発的動機」による行為がある。単純には「やりたいからやっている」というのが内発的動機でである。

内発的動機が低減し、外発的動機へと動機が移行する

例えば楽器を演奏するのはそれ自体が楽しいからであって、演奏することで貰える報酬のために演奏するわけでも、演奏しないことで待っている罰を回避するためでもなく、単に自分が楽しいから演奏している、という状態があったとしよう。

そうした中、楽器を演奏することで「報酬がもらえる」ということになると、短期的には内発的動機に加算される形でメリットがあるように見えまるが、そのうち内発的動機が低減し、外発的動機へと動機が移行してしまうという心理現象がアンダーマイニング効果である。

報酬を期待してしまうようになる

簡単に言えば、ただ単にやりたくてタダでやっていたことに、過剰なお礼や報酬などがくると「次はお礼や報酬を期待してしまう」というような気持ちが生まれ、そこから、「お礼が無いならやりたくなくなる」とか、そこまでいかなくても「前よりはやる気がなくなる」というような心理が生まれる。これがアンダーマイニング効果である。

仕事をやり始めて、ただそれが楽しいだけで楽しくやっていたところ、急に「表彰」されたりすると、次は表彰されなければやらない、特別ボーナスという条件がないと営業目標を達成したくなくなるという減少が起こる(こうしたことを勤め人時代の同期が常々言っていた。「え?今やっても商品券のボーナス出ないでしょ?」といったように)

なお、アンダーマイニング効果(過正当化効果)は、「内発的動機づけ 実験社会心理学的アプローチ」の著者エドワード・L・デシが行ったマーク・R・レッパーとの実験でわかった心理効果である。

端的には対象に対して純粋に「やりたい」という気持ちだったものが、報酬によって「やらなければならない」というものに変化してしまうという感じがアンダーマイニング効果というものになる。

内発的動機かのような外発的動機

自己啓発系セミナー野郎や営業系の人は「モチベーション」という言葉がお好きなようである。内発的動機というのは本来自然に湧き上がることになるのだが、彼らは、何かの刺激(彼らは気づきと言ったりする)を与えて内発的動機かのような外発的動機を与えているというトンチンカンなことをよくしている(それはまた内発的動機などのコーナーで ⇒ 内発的動機づけと外発的動機づけ)。

モチベーションアップのための施策のアンダーマイニング効果

アンダーマイニング効果は、せっかく本人が楽しくてやっていたところに、「このタイミングで商品券ボーナスを出せば、コイツはもっと頑張るだろう」という営業部の浅知恵の猿知恵「ブースター」が、結局逆向きに噴射してしまった感じになるだろう。

モチベーションアップのための施策として、何か報酬アップのような、「子供をおやつで釣る」ようなことをやり過ぎると、アンダーマイニング効果でせっかくの「自発的なやる気」が削がれていくというようなことが起こる。

すなわち、自発的にやる気が高まっていたところに、会社側がより一層モチベーションを上げようとボーナスのようなものを与えると、やる気が削がれていくというような現象がアンダーマイニング効果の代表例である。

スケベ心で人をコントロールしようとすると、こういうことにもなるということを、こういう理論をセミナーで語っている人たちは、いつになったら気づくのであろうか(落語のようである)。

なお、アンダーマイニング効果を逆から見たような「内発的動機を加速させるエンハンシング効果」をスケベ心で利用する人たちもいますので要注意である。

指定されたサイトのトーンに合わせ、格調高い「である」体で執筆しました。アンダーマイニング効果について、古典的なデシの研究から最新の脳科学的知見までを網羅した専門的な追記文です。

アンダーマイニング効果の学術的背景と現代における知見の深化
古典的実験による内発的動機付けの解明

アンダーマイニング効果は、1970年代にエドワード・デシらによって提唱された。それまでの心理学、特に行動主義の枠組みでは、報酬は行動を強化するポジティブな要因としてのみ捉えられていた。しかし、デシが行ったソマ・パズルを用いた実験は、その通説を覆す結果をもたらした。

自発的に取り組んでいた課題に対して金銭的な報酬を提示すると、報酬が取り払われた後に、その課題に対する純粋な興味や意欲が、報酬提示前よりも低下することが示されたのである。これは「内発的動機付け」という個人の内側から湧き出る意欲が、外的な介入によって阻害される現象を学術的に証明する重要な一歩となった。

自己決定理論への発展と評価の二面性

その後、この研究は「自己決定理論」へと発展を遂げた。アンダーマイニング効果が発生する主要な要因は、自律性の侵害にある。報酬が「行動を制御するための手段」として機能したとき、人間は自らの行動の主体性が失われたと感じ、その活動自体の価値を見失ってしまう。

一方で、報酬が必ずしも有害であるわけではないことも、現代の研究では判明している。能力を肯定するようなフィードバックや、自律性を尊重する形での報酬提示は、逆に動機付けを高める「エンハンシング効果」をもたらす。報酬が「制御」として機能するか、「情報の提供」として機能するかによって、その心理的影響は180度異なる結果を招くのである。

神経科学が捉える報酬系回路の変容

近年では、脳機能イメージング技術の進化により、アンダーマイニング効果のメカニズムが生物学的な視点からも解明されつつある。内発的な意欲を持って課題に取り組む際、脳内では線条体を中心とした報酬系回路が活性化する。

しかし、外的な報酬が導入され、それが常態化した後に報酬を撤廃すると、線条体の反応が著しく低下することが確認されている。これは、脳が「楽しさ」という報酬を「対価」という報酬に置き換えて認識してしまい、外的報酬がない状態では脳が報酬系を駆動させにくくなるという、ニューロンレベルでの変容が生じている可能性を示唆している。

現代社会における自律的動機の再評価

現代の組織論や教育学において、この理論はかつてないほど重要性を増している。単純作業が自動化され、創造性や自律性が求められる現代の知的労働において、外的報酬のみによる管理モデルは限界を迎えている。

最新の研究では、個人の価値観と活動が一致する「統合的調整」の重要性が説かれている。単に報酬を避けるのではなく、いかにして個人の自律性を損なわず、内発的な興味を維持・拡張できる環境を構築するかという問いは、心理学のみならず社会システム全体の設計における中心的な課題となっている。

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