資格ビジネスとマルチ商法の構造の類似性

資格ビジネスには、国家資格や本当にある程度の評価がなされるような民間資格を取得するためのサービスから、胡散臭い民間資格まで多種多様なものがあります。講義型・通信教育型を問わず、共に資格検定講座・資格検定試験で収益をあげようとするという点は一致していますが、異なる点があります。

業務独占の国家資格や一般的な社会的評価を得ているような民間資格に関する資格ビジネスあれば、比較的教育としての要素が強いものの、胡散臭い民間資格は、教育的サービスの他に実際にその業界で起業させようとか、周りの人間も呼び込もうというような意図があります。

こうした胡散臭い「資格ビジネス」とマルチ商法には構造的な類似性があります。

それでは、資格ビジネスに関する本質とさらに胡散臭い資格ビジネスのマルチ商法的構造について考えてみましょう。

資格ビジネスに踊らされる人たち

就職活動を控えた大学生からも資格取得に関する相談を受けることがあるのですが、そのときにはまず最初に次のようなことを伝えています。

基本的に業務独占の資格ではない名称独占資格などほとんど意味はありませんし、業務独占資格にしろ簡単に取れるようなものはその簡単さに比例して価値がありません。

一見有用そうな国家資格取得講座や民間のスキル習得講座のようなものでも、結局役に立たないことがほとんどです。

資格ビジネスの広告には、あたかもその資格を取ったりスキル習得講座を受ければ、その業界で食べていけるかのような表現がなされています。

短期間で取得できるスキルや資格

資格難易度が低く取得しやすいということを逆に推しているのか、短期間で取得できるスキルや資格がよくネット広告で表示されたりします。

しかしながら

「3ヶ月で〇〇に」

ということであれば、基本的に誰でも3ヶ月でできるようになるようなスキルです。

そのレベルの知識やスキルは、学力のある人、スキル習得センスの良い人であれば1ヶ月もかからずに習得してしまうでしょう。

しかも世の中では資格という一種の肩書で仕事が入ってくるわけでもありませんし、実務がこなせるようになるわけではありません。難関資格を取得しようが、経済オンチで食うに困っている人もたくさんいるくらいです。

人のお役に立ってこそ

事業をするにしろ勤めるにしろ、人のお役に立ってこその仕事であり収益です。結局人の役に立たなければ、どうあがいてもほとんど価値はないのです。

たまにまあまあ難関とされる士業の資格を取得してすぐに独立した事務所を構える人もいますが、概してすぐに廃業しています。

本人としては「この資格さえ取れば」という感覚だったのでしょうが、結局商いはそういうことではないのです。

難関国家資格などでもそうした有様なのに、3ヶ月学んだくらいで人から重宝されるような強力なスキルがつくはずがありません。

もちろん遊んだりしているわけではないので、勤め人になる場合「前向きさ」は評価対象になるかもしれませんが、その程度だと思っておいたほうが良いでしょう。

実力仮定証明書

所詮評価しようにも実績を示すことができない人たちが誰かに雇われるための、一種の「実力仮定証明書」くらいの機能しかないのです。本当に実力があれば、そんな証明書は要りません。

また、資格取得と同様に専門学校を代表例とした専門技術的な「学歴」といった一種の資格のようなものは、所詮雇う側、つまり企業などの側として職業技術訓練費用が安く上がるという程度のものなのです。

何も知らない新入社員を教育するにもその間は人件費が必要になるので、「資格」を必須条件とすることで教育の手間、教育にかかる人件費を安くあげようという程度の感覚です。そしてそれが資格ビジネスの利権構造と互いに都合が一致したのでもてはやされているに過ぎないという感じになります。

しかし、基本的には資格というものは、実力を他人に示せない人たちが実力仮定証明書として提示する程度のものであり、本当に実力があったり、それを示すことができるのであれば不要です。

資格と利権

元々資格というものの機能は「素人にやられては困る」ということに対して、安易に素人に手を出されて社会的被害が出ないようにするためという感じです。

ところが世間では、大学教授たちですら一種の利権獲得のために検定試験を創設したりもしています。国家資格などは元々そのようなあって作られたのだと思いますが、結局は資格試験料、認定料で稼ぐことができるという構造に酔いしれて利権のためだけに新設されているとしか思えないようなものも増えてきています。

現代においては所詮資格などほとんどがビジネスなのです。聞いたこともないような社団法人などならなおさらです。

さて、資格ビジネスについての概観はこれくらいにして、資格ビジネスのマルチ商法的構造について触れていきましょう。

資格ビジネスのマルチ商法的構造

マルチ商法の全体像については、「マルチ商法(MLM)と洗脳」をご参照いただくとして、今回は経済社会に疎い人たちをカモにする胡散臭い資格ビジネスのマルチ商法との類似性について触れていきます。

インターネット上でも紙の広告でも最近はよく出ていますが、主に女性起業家(笑)になりたい人たちをカモにするような資格ビジネスが横行しています。エステ的なやつとか、マッサージ的なやつとかヨガ的なやつとかです。ダイエット講座的なやつもあるくらいです。

経営者の会合のようなところにひょっこり現れるそうした人たちから名刺を頂戴する度に「…」という感じがします。

まあこうした資格ビジネスの罠にハマるのは、何も女性に限ったことではないのですが、会合でよく見かけるのは女性だったのであえて女性起業家(笑)と表現してみました(社会において「女性起業家」という表現がたまになされていますが、根本的に「起業家」の前に「女性」という冠をつけることに意味があるのでしょうか?)。

さて、まずシンプルに経済をマクロ的に俯瞰してみましょう。

①原則として需給によって価格や事業が成り立ちます。

②そして、需要のないところには供給がいくらあっても経済活動は成り立ちません。

③そしてさらに需要が増えてきた場合でも供給が増えてくれば、価格や収益は下落します。

そうした大原則を元に、五流の資格を持って事業を展開するとどうなるかを「マルチ商法はどのような構造だったか」を思い出しながら考えてみましょう。

「パート代くらいは稼げるかも」と匂わせて、資格取得講座料、資格認定試験料、団体加盟金などを巻き上げていく

いかにもそれで食べていけるかのような雰囲気を出しながら「パート代くらいのお金が稼げればいい」などと思っている人たちをカモにして資格取得講座料、資格認定試験料、団体加盟金などを巻き上げていくのがそうした胡散臭い資格ビジネスの手口です。

今までも「社団法人認定資格」などについて触れてきましたが、こうした資格ビジネスの罠にハマり、お金を巻き上げられていく様はどうも変な感じがしています。

群れ、仲間、絆、そして「ビジネス界への進出」という雰囲気を作りながら「資格取得代だから」という自己説得をさせつつ様々な名目でお金を巻き上げ、それを取り戻すためにと周りに伝播させていく様は、まるでマルチ商法と同じです。

そして例えば「ダイエット体操」的なやつだったとしましょう。そうしたものの場合、あまり稼げなかったとしても「自分は少し痩せられたし、まあいいか…」という自己説得を行うことになります。

実際に事業を展開する場合、「パート代くらいは稼げるかも」位の感覚では成り立ちません。最低でもその10倍位は稼ぐつもりでないと、土台から成り立たないはずです。

その資格で行う事業の構造

ここで先程の経済のマクロ的な構造を思い出してみましょう。

①基本的にその業界の「純粋なお客」は少ない。

②お客になる人が少ないのに、資格を取得していった人たちが事業者として増える。

③業界の認知が高まり、業界の需要が高まっても、同時に資格取得者が増えるために供給過多となる。

結果、1事業者あたりの収益は低下し、事業が成り立たなくなる。

という感じです。

まあ少し換言して「ダイエット体操」を例にとって考えてみましょう。

①「ダイエット体操」というものにお金を払う人はあまりいない。

②純粋に消費対象として「ダイエット体操」を利用しにいく人よりも、そうした資格を取ろうとする人たちが増える。

③「ダイエット体操」が流行し需要は高まったが、同時にダイエット体操のインストラクターになりたい人も増えていった。

結局、純粋に利用者としてサービスを消費する人の数の上昇よりも、教える側の人たちが増え、教える側一人あたりの収益は低下して事業が成り立たなくなった。

というような構造です。

誰でも簡単に取得できる資格やスキルであるからこそ、本当に業界全体に需要が高まった時でも、構造上収益を10倍にすることは極端に難しいという属性を持っています。

しかし、そんな中でも確実に収益を上げているところがあります。

それは資格ビジネスを展開する社団法人などの事業者です。

そして、少しでも稼ぐためにと友人知人を巻き込んでいくことになるとすれば、それはまさにマルチ商法と同じです。

「あなたも事業を始めてみない?」

などと言いながら、友人知人を資格取得や団体加盟に勧誘しているのならなおさらです。

収益に関する「子ねずみの収益の数パーセントは親ねずみに」という、ねずみ講的な構造は持っていないとしても、「起業家になれる」という自尊心ベースの釣りがあり、その活動の中で友人との信頼を消費し、わずかばかりのお金を稼ぎ、結局加盟金などで所属団体に巻き上げられていく様は、マルチ商法とイコールとは言いませんが、構造上似ていると判断せざるを得ません。

本質を見抜く目を持て

ここで強調しておきたいのは、そうした「ダイエット体操」といった事業自体をするなということではありません。胡散臭い民間の資格ビジネスの罠にハマらないで欲しいということです。

すなわち、他人から提示された安易なプランに反応せずに、自分をよりどころとして、たくさんの物事をしっかり見つめた上で判断して欲しいという感じです。

最低限「元は取れるのだろうか?」ということは考えたほうがいいでしょう。

「元を取るためにはどれくらいの時間と労力が必要で、今後事業が続いていった場合、自分は楽になっていくのだろうか?」

という感じでも構いません。

だいたい、この手のものもマルチや自己啓発と同じで、「やる気」と「興奮」を巧妙にもたらす術を駆使しています。

そうしたモチベーションのようなものはいいですが、だいたいそういう時は「興奮していて頭が働いていない」と思っておきましょう。

「もう一軒行くぞー!」と叫んでいるベロベロのおじさんと同じです。

エネルギー自体はいいですが、そうした時にでも裏側にはしっかりと冷静な頭を保っておくことです。

自分のお母さんがこうした資格ビジネスにハマり、起業するなどといい出したら嫌です。自分の弟が資格取得講座に通い、マルチ商法まがいの団体に加盟してビジネスを始めるといい出しても嫌です。

ということで、民間の資格ビジネスとマルチ商法の類似性について書いてみました。

資格ビジネスに限らず、マルチ商法的な要素を持った「仲間に入ろうよ」系の胡散臭い業者はたくさんあります。基本的なマルチ商法(MLM)の構造や特徴、実態などは「マルチ商法(MLM)と洗脳」をご参照ください。

マルチ商法(MLM)と洗脳

Category:company management & business 会社経営と商い

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