山茶花(さざんか)

山茶花(さざんか)

山茶花(さざんか)は、ツバキ科ツバキ属(カメリア属)の常緑広葉樹です。漢字の名称である山茶花(さんさか)が誤る形で訛り「ザザンカ」となったようです。

山茶花(さざんか)全体

山茶花(さざんか)全体

山茶花は同属の椿との区別がつきにくいですが、開花時期であれば花びらが落ちるのが山茶花であり、花ごと落ちるのが椿といったような見分け方があります。

山茶花(さざんか)2

山茶花(さざんか)2

しかしながら山茶花と椿の交雑種である寒椿は同様に花びらが落ちます。見分けるのは結構困難であり、一般的に寒椿は椿の名がつきつつも山茶花的な分類をされているようです。なお、寒椿に比べて幹がまっすぐ上に伸びやすいという特徴があるようです。

山茶花の花

山茶花(さざんか)

山茶花(さざんか)

鮮やかな赤系の山茶花の花。品種によって赤からピンク、白といった色の花がつくようです。

山茶花(さざんか)の花

山茶花(さざんか)の花

山茶花の葉

山茶花(さざんか)の葉

山茶花(さざんか)の葉

鋸歯の葉を持つ山茶花。椿よりは鋸歯のギザギザが深く、寒椿よりは細長く尖り気味という感じですが、寒椿との差は遺伝の出方や育ち方によってどう出るかわからないという感じがします。

山茶花(さざんか)3

山茶花(さざんか)3

学名: Camellia sasanqua

「首」か「花弁」か 散り際に見る死生観

サザンカとツバキの決定的な違いとして語られるのが「散り方」です。ツバキが花首ごとボトリと落ちるのに対し、サザンカは花弁を一枚一枚、ハラハラと散らします。

かつての武士がツバキを「首が落ちるようで不吉」と忌み嫌ったという話は有名ですが、逆に言えば、サザンカの散り方は「未練」あるいは「生の余韻」を感じさせるものです。最期まで形を保とうとするツバキの潔さと、風に身を任せて解体されていくサザンカの儚(はかな)さ。同じカメリア属でありながら、彼らは全く異なる「死の作法」を選びました。地面をピンク色の絨毯に変えるその散り際は、冬の寒々しい風景に温かな記憶を刻み込みます。

学名に残るシーボルトの「誤記」

サザンカの学名は Camellia sasanqua(カメリア・サザンカ)です。日本原産の植物が、そのままの呼び名で世界に通用するのは誇らしいことですが、ここには小さな歴史のいたずらが隠されています。

江戸時代に出島に来ていたシーボルトが、この花を本国へ紹介する際、「山茶花(サンサカ)」という当時の呼び名の読み方を誤って、あるいは訛って「サザンカ(Sasanqua)」と登録してしまったと言われています。本来なら「Sansanqua」だったかもしれない名前。しかし、その少し舌足らずで柔らかな響きこそが、この花の優しい風情に合っていたからこそ、世界中で定着したのかもしれません。

鳥を呼ぶツバキ、虫を呼ぶサザンカ

プロフェッショナルな視点で花の中を覗くと、もう一つの違いが見えてきます。それは「香り」と「雄しべ」です。

ツバキは主に「鳥(ヒヨドリやメジロ)」に花粉を運ばせる「鳥媒花(ちょうばいか)」に進化したため、鳥には鈍感な「香り」を捨て、視覚に訴える赤色と豊富な蜜を選びました。一方、サザンカは「虫」にも頼る道を残しました。そのため、独特の甘く少し土っぽい香りを漂わせ、虫が着地しやすいように花を平らに開き、雄しべを広げています。冬の少ない日差しの中で活動するアブやハチにとって、サザンカの香りは命をつなぐ唯一のオアシスなのです。

「カンツバキ」という曖昧な境界線

園芸店で「サザンカ」として売られているものの中には、実は純粋なサザンカではないものが多く混じっています。特に「カンツバキ(寒椿)」と呼ばれるグループです。

これらはサザンカとツバキの交雑種(Camellia x hiemalis)であると考えられています。サザンカのように花弁を散らしますが、葉はツバキのように濃い緑で艶があります。両者の「いいとこ取り」をしたハイブリッドな存在。純血種にこだわるのも一つの美学ですが、自然界の交わりが生んだこの強健な雑種たちが、日本の冬の生垣を支えているという事実もまた、評価されるべきでしょう。

飲むことができる「茶」としての血統

サザンカは、緑茶の原料であるチャノキ(Camellia sinensis)と同じツバキ科ツバキ属の植物です。実は、サザンカの若葉も製茶すればお茶として飲むことができます。

チャノキほどの旨味や甘みはありませんが、独特の香気と、しっかりとしたカフェインを含んでいます。かつては「山茶(さんちゃ)」として、庶民の間で飲用されていた地域もあります。観賞用として愛でるだけでなく、その葉には覚醒を促す成分が流れている。美しさの中に、実用植物としての野生の記憶が眠っています。

雨に弱いという「繊細さ」

冬の花でありながら、サザンカは雨に極端に弱いという特徴を持っています。開花中に強い雨に打たれると、花弁がすぐに茶色く変色し、傷んでしまいます。

厚みのあるツバキの花弁が雨を弾くのとは対照的です。この繊細さは、ガーデナーにとっては悩みの種ですが、見方を変えれば、晴れた日の美しさをより際立たせる要素でもあります。雨上がりの地面に散らばる花弁の哀愁も含めて、日本の冬の湿潤な空気感を体現する花といえるでしょう。

Category:植物

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