朝顔(あさがお)

朝顔(あさがお) は、ヒルガオ科サツマイモ属の一年性植物。

アサガオはつる性で高温を好む植物で短日性。葉は広三尖形で細毛をもち、花は大きく開いた円錐形で、5枚の漏斗状の花弁は融合しており、萼が5つ、雄蕊が5つ、雌蕊が1つ。真夏に開花します。小学校の時によく育てたりしますね。

なお、昼まで咲いているのは昼顔(ひるがお)です。

朝顔の葉の形状

朝顔の葉の形状は広三尖形でいわゆるM字型です。細毛が生えているのも特徴です。こうした点が昼顔(ひるがお)との区別するわかりやすい点の一つとしてあげられます。

牽牛子

朝顔の種子は、牽牛子(けんごし、けにごし)として生薬に利用されます。薬効成分は主に脂配糖体のファルビチン(pharbitin)です。牽牛という言葉自体が、中国語で朝顔を意味し、子は種子を意味します。

朝顔の学名と属名

朝顔の国際的な学名は「Ipomoea nil」であり、サツマイモ属に分類されています。しかしながら、日本国内において朝顔は、アサガオ属として、「Pharbitis nil」と表記されることがあります。

この違いについては、スイスの植物学者ジャック・ドニス・ショアジー氏が、1833年に朝顔をサツマイモ属からアサガオ属(Pharbitis)として独立させ、日本ではそれが馴染んだものの国際的には採用されていないということから起こっているようです。

朝貌の花

秋の七草としてのアサガオは、万葉集における山上憶良の旋頭歌による「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志また藤袴 朝貌の花」より朝顔とされますが、桔梗(ききょう)とする説が有力のようで桔梗のようです。他にも木槿(ムクゲ)や芙蓉(フヨウ)とする説があるようです。

秋の七草

日本において朝顔は、種子を薬用に利用するため、中国から持ち込まれてから栽培が始まったようですが、その時期としては学説により奈良時代末期という説もしくは平安時代であるとする説などに分かれているようです。しかしながら、万葉集における朝貌は、その渡来時期に若干の差があっても、歌の成立時期よりかなり前から他の花と肩を並べる程度に広く定着している必要があるような気もするので、やはり朝貌は桔梗ではないでしょうか。

学名: Ipomoea nil

牛一頭と交換された「劇薬」

可憐な花を咲かせるアサガオですが、その種子には、かつて「牛一頭と交換する価値がある」とされたほどの強い力が秘められています。

漢方では、アサガオの種を「牽牛子(けんごし)」と呼びます。これは、種を粉末にしたものが強力な下剤として重宝され、その薬効に感謝した農民が、牛を引いて謝礼に行ったという故事に由来します(諸説あり)。しかし、素人が手を出すのは禁物です。成分のファルビチンには毒性があり、量を間違えれば激しい腹痛や血便を引き起こします。美しい花が終わった後に残る黒い粒。それは命を救う薬であり、同時に命を脅かす毒でもあるのです。

江戸のバイオテクノロジー「変化朝顔」

メンデルが遺伝の法則を発見するずっと以前、江戸時代の日本人は、経験則だけで遺伝子を操る高度なバイオテクノロジーを持っていました。それが「変化朝顔(へんかあさがお)」の世界です。

「これがアサガオか?」と疑うような、花弁が細かく裂けたもの、牡丹のように八重咲きになったもの、葉が縮れたもの。これらはトランスポゾン(動く遺伝子)による突然変異を選抜したものです。彼らは、種ができない変異株(出物)を維持するために、兄弟株(親木)から種を採るという、現代の遺伝学でいう「劣性遺伝の維持」を完璧に理解し、実践していました。その情熱は、園芸というよりも、ある種の狂気と美学の結晶です。

朝日ではなく「夜の闇」を測る

「アサガオは朝の光を感じて咲く」と思っていませんか? 実は、彼らがカウントしているのは光ではなく「闇の長さ」です。

アサガオは典型的な「短日植物」です。夕方、日が落ちて暗くなってから、約9〜10時間後に開花するように体内時計がセットされています。つまり、彼らにとって重要なのは「連続した暗闇」の時間です。もし夜中に街灯や部屋の明かりが当たってしまうと、彼らの時計はリセットされ、翌朝花が咲かないことがあります。彼らの開花は、静寂な夜の闇が積み重ねた時間の集大成なのです。

「左巻き」の物理学

アサガオのつるが支柱に巻きつく際、必ず決まった方向があることに気づいていますか? 上から見て「反時計回り(左巻き)」です。

北半球でも南半球でも、この方向は変わりません。これは「成長運動(回旋運動)」と呼ばれる、先端が円を描きながら伸びる性質によるものです。何かに触れると、その接触刺激によって成長ホルモン(オーキシン)の分布が変わり、巻きつき始めます。無理やり逆に巻こうとしても、すぐに解けて元に戻ろうとします。その頑固なまでの方向感覚には、植物としての譲れない意志のようなものを感じます。

現代の革命「曜白(ようじろ)」の誕生

昭和50年代、アサガオ界に一つの革命が起きました。それが「曜白(ようじろ)アサガオ」の誕生です。

それまでのアサガオにはなかった、花弁の白い筋(曜)が縁まで突き抜ける斬新な模様。そして何より、夕方までしおれずに咲き続ける驚異的な花持ちの良さ。これは日本の育種家が、日本のアサガオと西洋のアサガオ(マルバアサガオ)を種間交雑させるという難業を成し遂げて生まれた傑作です。私たちが夏祭りや軒先で夕方まで美しい花を楽しめるのは、この技術革新のおかげなのです。

「行灯(あんどん)」に閉じ込める美学

アサガオといえば、支柱をリング状に組んだ「行灯仕立て」が一般的です。つるを長く伸ばさず、コンパクトな空間の中で花を咲かせるこの仕立て方は、盆栽にも通じる日本独特の「縮小の美学」です。

無限に伸びようとする生命力を、あえて小さな籠の中に導き、凝縮させる。そうすることで、一輪の花の存在感が際立ちます。早朝、行灯の中で露を纏(まと)って咲く姿は、単なる植物観察を超え、夏の朝の空気を浄化する茶室の花のような風格を漂わせています。

Category:植物

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