コンフリクト状況

コンフリクト状況

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同時に二つ以上の欲求があり、これらに対応する目標の心理的な方向が相反し、かつ、その誘意性の強さがほぼ等しい場合はコンフリクト状況が出現する。そうなるといずれの目標を選択するか決定できず、コンフリクト行動を起こす。

コンフリクト(conflict)とは「葛藤(かっとう)」、心理的な葛藤を意味し、同時に満足させることが困難な欲求や衝動が同じくらいの強さで個人の内部に存在することで行動を決定できない状態を意味する。

コンフリクト状況 三つの型

コンフリクト状況として以下の三つの型があげられる。

  • 接近-接近(approach – approach)
  • 接近-回避(approach – avoidance)
  • 回避-回避(avoidance – avoidance)

接近-接近(approach – approach)

おもちゃを買ってもらえるのだが、欲しいおもちゃが2つあり一方を選ぶことを迫られると言うような状況。生物体が、二つの正の誘意性をもつ目標の間におかれている場合の状況である。
目標が近くに来ればその目標は誘意性が増大する。

接近-回避(approach – avoidance)

行きたい学校があるのだが入試が難しく、受けるのが嫌なので、その学校への志望を決定できないと言うような状況。

回避-回避(avoidance – avoidance)

学生が勉強は嫌だが留年も嫌だと思いながら、遊びと勉強をどちらも取ることができず、ただだらだらと時間を浪費しているような状況。

接近-回避型のコンフリクトにおいては、成功回避動機が生まれる。また心理的拘泥という現象が起こることもある。

コンフリクト状況の学術的背景と意思決定のダイナミクス

人間が直面する意思決定のプロセスにおいて、相反する欲求や目標が衝突するコンフリクト(葛藤)は、精神的なエネルギーを著しく消耗させる事象である。この内面的な摩擦を解明することは、心理学が古くから挑んできた中心的な課題の一つである。

レヴィンによる葛藤の三類型と場の理論

コンフリクト(葛藤)状況の学術的な定式化は、カール・レヴィンによる「場の理論」に遡る。レヴィンは、個人の行動を環境との相互作用の中に位置づけ、コンフリクトを「等しい強さを持つ対立する力が、個体に同時に作用する状態」と定義した。

この枠組みにおいて提示された「接近ー接近葛藤」「回避ー回避葛藤」「接近ー回避葛藤」の三つの基本類型は、現代の意思決定理論においても極めて重要な基礎概念となっている。特に「接近ー回避葛藤」は、一つの対象が魅力と脅威を併せ持つ状況を指し、個体が目標に近づくほど回避の力が強まるという動的な均衡状態を生み出すことが示されている。

二重プロセス理論と認知的不協和の解消

現代の認知心理学では、コンフリクトは「二重プロセス理論」の観点から再解釈されている。直感的なシステム1と論理的なシステム2が、異なる選択肢を支持した際に生じる内的な摩擦が、コンフリクトの正体である。

この摩擦が生じた際、人間は「認知的不協和」を解消しようとする心理的動機を持つ。最新の研究によれば、人間は必ずしも最も客観的な選択肢を選ぶのではなく、自身の過去の信念やアイデンティティと最も矛盾の少ない選択肢を選ぶことで、内的なコンフリクトを終結させようとする傾向がある。このプロセスは、個人の心理的安定を維持するための防御的な適応戦略といえる。

神経科学が捉える前帯状回と意思決定のコスト

脳科学的なアプローチでは、コンフリクトの検出と処理に大脳皮質の「前帯状回(ACC)」が中心的な役割を果たしていることが判明している。複数の選択肢が拮抗した際、ACCは「エラー関連負電位」に近い信号を発し、脳の他の領域に対して、より高度な注意と認知的リソースを動員するよう指令を出す。

近年の神経経済学の研究では、このコンフリクトの処理自体が脳にとって大きな「エネルギーコスト」を要する作業であることが示唆されている。脳は可能な限りコンフリクトを回避、あるいは早期に終結させるために、ヒューリスティックな判断(直感的な簡略化)を採用することが多く、これが時に非合理な意思決定の要因となる。

現代の複雑系社会におけるコンフリクトの変容

現代社会において、個人の直面するコンフリクトは単一の対象に対する好悪を超え、多層的な価値観の対立へと深化している。最新の社会心理学では、時間的な制約や膨大な情報量が存在する環境下で、人間がいかにして「満足化(サティスファイシング)」を達成するかが研究の焦点となっている。

コンフリクトは、単に精神的な苦痛をもたらす障害ではなく、自己の優先順位を再定義し、新たな適応行動を生み出すための「進化的トリガー」としての側面も持っている。物理世界と情報の境界が曖昧になる中で、内面的な対立をいかにして統合的な成長へと転換するかという問いは、現代の行動科学における中心的な命題の一つである。

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Category:心理学

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