蕪

蕪(かぶ)菘・鈴菜(すずな)

蕪(かぶ)は、アブラナ科アブラナ属の越年草です。主に根菜として丸い根の部分が食用となりますが、茎や葉なども食用です。春の七草としては、大根と同じく葉の部分をさすのでしょう。

蕪

蕪(かぶ)鈴菜(すずな)

春の七草の「鈴菜(すずな)」こと蕪(かぶ)です。カブラ、カブナ、カブラナなど、いろいろな呼ばれ方をします。

春の七草としては、鈴菜(すずな)と呼ばれますが、菘と書かれることもあります。

蕪(かぶ・かぶら)

蕪(かぶ・かぶら)

蕪(かぶ・かぶら)はアブラナ科アブラナ属なので春の七草のひとつである大根(清白・蘿蔔)の親戚ですね。下部は大根の親戚ということで、同じように根の部分が可食部になっています。根の部分の栄養素についても大根と同じような感じです。だしのしみ込み方が芸術的であり、「こだわりの和食」の食材としてはよく利用されます。

鈴菜の名

蕪(かぶ・かぶら)

蕪(かぶ・かぶら)

この蕪の根の部分が鈴のような形をしていることから、春の七草としては鈴菜と呼ばれるようです。なお、京野菜の「聖護院かぶら」等々、蕪(かぶ)は、漬物や料理などではよく「かぶら」と呼ばれたりします。

蕪の別称

蕪(かぶ・かぶら)

蕪(かぶ・かぶら)

蕪の別称としては鈴菜・菘(すずな)の他、豊菜(ほうさい)、大頭菜(だいとうな)や漢語である蕪菁(ぶせい)、蔓菁(まんせい)、扁蘿蔔(へんらふく)などの呼ばれ方をします。なお漢語表現で言えば現地中国では諸葛菜(しょかつさい)と呼ばれることもあるようです(諸葛孔明の逸話から)。

春の七草

私たちが食べているのは「根」ではない

スーパーでカブを手に取ったとき、誰もが「これはカブの根だ」と思うでしょう。しかし、植物解剖学の視点で見ると、それは厳密には正しくありません。

あの白く丸く肥大した部分は、主に「胚軸(はいじく)」と呼ばれる器官です。茎と根の中間にある、発芽した時に最初に伸びる軸の部分です。では、本当の根はどこにあるのか。それは、丸いお尻からチョロリと伸びている、あの細長いひげのような部分です。 多くの人が切り捨ててしまうあのひげこそが、本来の根(主根)。私たちは、根そのものではなく、茎と根をつなぐ「架け橋」が異常発達した部分を、美味しそうだと感じて食べているのです。

シルクロードで分かれた「二つの顔」

カブの歴史は古く、シルクロードを経由して東西へ広がる過程で、二つの全く異なるタイプへと進化しました。

寒冷なヨーロッパ方面へ向かったものは「洋種」となり、家畜の飼料としても使えるよう、固くて貯蔵性の高いものになりました。一方、温暖なアジア方面へ向かったものは「和種」となり、瑞々しく繊細な甘みを持つ、人間が食べるための野菜として洗練されました。 日本のカブは、この二つの血統が複雑に交差するホットスポットです。西日本の「天王寺かぶ(和種系)」と、東日本の「金町小かぶ(洋種系)」。関ヶ原の戦いのように、カブの世界でも東西で勢力図が異なり、その境界線(愛知県あたり)では「カブラライン」と呼ばれる興味深い分布が見られます。

天然の「胃腸薬」を噛み締める

春の七草粥にカブ(スズナ)を入れるのは、単なる儀式ではありません。正月のご馳走で疲れ切った胃腸を修復するための、極めて合理的な医療行為です。

カブの白い部分には「アミラーゼ(ジアスターゼ)」という消化酵素が豊富に含まれています。これは唾液や膵液に含まれるものと同じで、デンプンを分解し、胃もたれや胸焼けを解消する働きがあります。 ただし、酵素は熱に弱いという弱点があります。プロの料理人が、カブを煮込みすぎず、少し食感を残して仕上げたり、生のまま薄切りにしてサラダや浅漬けにしたりするのは、この酵素の力を殺さないための知恵でもあります。

「主役」は葉にあり

白くて丸い部分(胚軸)ばかりが注目されますが、栄養学から見れば、カブの本体はむしろ「葉」の方です。

白い部分が淡色野菜であるのに対し、葉はバリバリの「緑黄色野菜」です。β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄分。これらすべての含有量において、葉は白い部分を圧倒的に凌駕しています。葉を切り落として売る、あるいは調理の際に捨ててしまう行為は、サプリメントの瓶を中身ごと捨てて、空き瓶だけを食べているようなものです。細かく刻んで油で炒め、ジャコと混ぜたふりかけは、捨てられかけた命が放つ最強の栄養爆弾です。

神を呼ぶ「鈴」の音

古くは「スズナ(鈴菜)」と呼ばれましたが、これはその形が神楽(かぐら)などで使われる「鈴」に似ていることに由来するという説があります。

万葉の昔から、鈴の音は神を招き、邪気を払う清め(祓い)の道具でした。真っ白なカブの姿を、清らかな鈴に見立てた古代人の感性。土の中から掘り出された白く輝く球体は、冬の枯れた大地に響く、春の訪れを告げる無音の鈴の音だったのかもしれません。

アブラナ科

Category:植物

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語のみ