沈黙効果(マム効果/mum effect)とは、対人的コミュニケーションにおいて、送り手が相手にとって不利な情報、不快な事を伝達することを避けようとする傾向のこと。
相手にとって不利な情報、都合の悪い情報を伝える時に起こる抵抗感が沈黙効果(マム効果)である。日常でも実感のある抵抗感であり、伝える情報が直接的に自分にとって関係のないことであっても、相手との関係性が変化することを恐れて心理的抵抗が起こる。これが沈黙効果である。
沈黙効果の要因
沈黙効果の要因としては、「調子に乗っていると思われたくない」というような心理や、自分が相手より有利な立場になることに伴う罪悪感、否定的評価を受けることをためらうというような要因が考えられており、相手としても、それを聞いたら傷ついてしまうとか、「そういう情報はいらんわ」と突っぱねてくるのではないかという感じのことが考えられる。
相手に対して「相手に都合の悪い情報」を言いたくなくなるという抵抗感、抑制が沈黙効果(マム効果)ということになるが、これは日常でもよく「上司に悪い情報が伝わりにくい」ということの要因となっていると考えられるだろう。
テクニックとしての沈黙効果
なお、マム効果とはあまり関係がないが、交渉においては沈黙テクニック、沈黙スキルというものがあり、沈黙の緊張に耐えかねて相手が沈黙後の第一声で譲歩してくるという心理もある。
営業や恋愛などで説かれるようなテクニック・スキルになるが、説得において追加情報を与えるのではなく、沈黙することが時に交渉を有利に進めることになるというものである。互いに黙りだした時、緊張に耐えかねて「どうですか?」と連続して聞くのではなく、あえてその緊張を維持し沈黙を続けることで、相手が譲歩してくるのを待つというようなテクニックである。
例えば営業をするの人と営業されている人を想定してみよう。
交渉が最後の段階、つまりクロージングの段階に入り、沈黙が流れたとする。ここでスキルの浅い者であれば、「どうですか?」とか「分割払いもできますよ」などと追加情報を加えようとする。
しかし、あえて黙っていると営業されている側から譲歩する形で口を開きだしたりする。
対面したコミュニケーションにおいては、1分以上の沈黙はコミュニケーションの危機と言われたりするが、それくらいの時間以上の沈黙が続くと、時間経過に比例して緊張感がどんどん高まっていく。
そうした緊張に耐えかねる形で、相手が譲歩して第一声を開くという形になる。
「…分割払いはできるの?」とか「クーリング・オフはできるの?」という第一声がやってくるというといった具合だ。
この質問は、購入・契約の締結が前提になっているため、その後の交渉を進めやすくなる。これがテクニックとしての沈黙効果だ。
ただしどのような心理効果やテクニック・スキルでも同じだが「それを知っている人」には使えない。
「はいはい、沈黙を守るつもりね」と見抜かれた場合には、相手は譲歩をしない。そして、下手にテクニックに走っていることを見抜かれてしまった場合は逆に怒りを買うことになる。
「そうやって自分の都合に導いていくつもりだな」
という感じで、逆鱗に触れることになるだろう。
安易にテクニックに走るよりも真心を保つようにしよう。
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