アンビバレンス効果(ambivalence)とは、両面価値や両価感情と訳され、同一の対象に対して、相反する感情や態度を同時にもつ現象およびその現象による心理効果のこと。相反する感情を同時に起こったり、相反する態度を同時に示すことがアンビバレンスである。なお、ドイツ語の「ambivalenz」から「アンビバレンツ」とも呼ばれる。こうした相反する両面の感情が同時に起こった時、どちらか一方の感情が抑圧され、抑圧されたものが行動に影響を与えるというのがアンビバレンス効果(アンビバレンツ効果)である。
目の前の現象自体は無属性だが、それに対する価値判断をなしたり、その現象が発端となって感情が起こる。そうして現象を捉えた時の印象は、単に一つの種類のものだけでなく、相反する感情が同時に起こったりする。
両面価値・両価感情 評価や感情の相反
様々な異なる視点から複数の評価を下すこともできるので、現象への評価や感情が相反したり、かなり複雑に絡み合うこともしばしばある。こうしたことをアンビバレンス(アンビバレンツ)と呼び、その時に起こる抑圧現象およびその抑圧が行動に影響を与えることをアンビバレンス効果(アンビバレンツ効果)と呼ぶ。
端的にアンビバレンス(アンビバレンツ)とは「好き」と「嫌い」といった二元論的で両極端な印象であり、それが同時に起こった時にどちらかを封印してしまう。そうして封印してしまった感情が行動に影響を及ぼすのがアンビバレンス効果(アンビバレンツ効果)である。
相反する感情の一方が無意識下に抑圧される
通常、両価感情が起こると一方の面(多くのケースで望ましくない面)が無意識下に抑圧され、その人の行動に影響を与えるとされる。
アンビバレンス(アンビバレンツ)の例としては、「尊敬と軽蔑」や「愛と憎しみ」などの感情を同時に持つことであり、この言葉はスイスの精神科医オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler)が使用し、後にフロイトが精神分析理論に組み入れた(「美しさと醜さを同時に感じる」といったケースもあるだろう)。こうした両面価値、両価感情が昂じると葛藤状態に陥り神経症や精神分裂病の原因となるとフロイトは考えた。
「目の前に提示された商品は素晴らしいと感じたが、店員が鬱陶しく、そんな鬱陶しい店員を雇う業者は胡散臭い」という場合でもアンビバレンス(アンビバレンツ)が起こる。
勤めている会社やその製品・サービス、そして同僚のことは好きだが、上司のことは大嫌いであるといった場合もアンビバレンス(アンビバレンツ)が起こる。
会社に行くか行かないかという行動の選択において、生活費を稼ぐためという面も影響を与えているが「そのオフィスという空間に入りたいか入りたくないか」という面で考えると「同僚とは会いたい」という面と「嫌な上司には会いたくない」という面が相反して起こる。
結局オフィスには入るのだが、その時「仕事はしなくてはならないし、同僚にも会いたいから」ということが際立ってその行動を起こしたことになるが、「上司のことは大嫌いで顔も見たくない」というネガティブな感情は消えたわけではない。
この時もアンビバレンス(アンビバレンツ)が起こっている。
アンビバレンス効果(アンビバレンツ効果)は、相反する感情の一方が無意識下に抑圧されることで行動に影響を与えるということになるので、水面下では「意識がどんどん蝕まれている」ということになる。そして限界を超えると精神疾患になるということを考えたというのがフロイト(Sigmund Freud)的な理解である。「両面価値、両価感情が昂じると葛藤状態に陥り神経症や精神分裂病の原因となる」という部分である。
なお、フロイトに従って精神分裂病と表現したが、現在では統合失調症と表現されている。これは「精神が分裂する」という視点から、「統合することがうまくできない」という視点へと捉えられ方が変化したことによる。「常にまとまり」があるという視点から「常にバラバラのものを毎度まとめている」という視点に変わったということがその理由である。
葛藤や抑圧の解放
両面価値、両価感情が昂じると葛藤状態に陥り、相反する感情の一方が無意識下に抑圧され、神経症や精神分裂病の原因となるのであれば、そうした葛藤状態や抑圧されたものを発見し、解放することによって症状が収まるという風に考えることもできる(自分を制限しているものを観て限りなく壊せ)。
また、人が笑う要素として、このアンビバレンス(アンビバレンツ)によって抑圧された部分が解放されることで笑いが生じるという部分がある(ある人にとっての「面白い」が、ある人にとっては「面白くない」のは、なぜなのか)。
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