アハー体験

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アハー体験とは、ひらめき・気付きの感動の瞬間であり、「解決を模索しつつも行きづまる準備段階」や「問題との取組みを一時放棄するあたための段階」を経て、問題に取り組んでいるとき、または何気ない時に、突然問題の再構造化による解決を得て「あ!」、「は!」となる瞬間の心的体験を意味する。創造的問題解決の過程の最も核心部分である「ひらめき」を指すが、心理学用語ながらネットスラングレベルで「Aha!」という叫びから名付けられた。

創造的問題解決の過程

アハー体験とは、端的にはひらめきであるが、特に創造的問題解決の過程におけるひらめきを意味する。

通常、問題解決に当たっては、それがより抽象的な問題であればあるほど、手前にデータが必要になる。しかし、具体的な問題であれば解決策は探せばすぐに見つかることもあるものの、様々な問題は、演繹で解決できるような問題ばかりではなく、仮に個人レベルの問題であったとしても、時に答えがまだ世に示されていなかったりすることも多々ある。

何かにつけて問題の解決には、直接的な解決策を調べるといった調査や解決法を習う・学習するという方法もあるが、一方で「自分で考えてみる」という方法もある。

検索・調査や学習といったことでは解決できないような問題に対する「創造的問題解決」においては、後者の自分で考えるということが採用される。

問題の抽象レベルが高ければすぐには答えを導き出せなかったりする。そうした時においては単に調査等でデータを集めただけでは答えを導き出せない。

そうした問題に対してはデータの収集を含めた「準備」や「あたため」が必要になり、「準備」「あたため」「ひらめき」「検証」といったプロセスを経て問題が解決に向かう。

「ひらめき」アハー体験の瞬間

いろいろと情報を集め、試行錯誤を繰り返している中、温泉に浸かったり山の景色などを見ていると突然に「問題の再構造化による解決」が起こることがある。そして外国人なら「Aha!」という感じ、日本人なら普通に「あ!」という感じで声を上げてしまうほどの感動の体験を伴いながらひらめくことがある。

これは、表面的な意識を手放し、無意識がフルに働いて問題解決を行うことから起こる現象で、そうしたひらめきにアイツこと自我が驚くというような感覚である。

なお、「あは。いっぱいします?」のあは嬢がもたらしてくれる「人生の中の大切なもの」に対する気付きも一種のアハー体験であると考えることができよう。

洞察の瞬間における神経生理学的ダイナミクス

ゲシュタルト心理学における構造的転換
アハー体験、すなわち「洞察(Insight)」という現象が学術的に定義されたのは、20世紀初頭のゲシュタルト心理学の功績が大きい。ヴォルフガング・ケーラー氏は、カナリア諸島のテネリフェ島で行ったチンパンジーの実験において、学習が単なる試行錯誤の連続的な蓄積(漸進的学習)だけでは説明がつかないことを証明した。

檻の中のチンパンジーは、手の届かない場所にあるバナナを取るために、箱を積み上げたり、棒を繋いだりする解決策を、ある瞬間に「突然」発見する。ケーラー氏はこれを、問題の全体像(ゲシュタルト)が脳内で組み替わる「再構造化」のプロセスであると論じた。既存の要素同士の結びつきが一度解体され、新たな意味的ネットワークとして結合し直されるとき、我々は主観的なひらめきの快感を伴うのである。

側頭葉におけるガンマ波バーストと神経回路の同期

現代の神経科学は、この主観的な現象を客観的な脳活動として捉えることに成功している。ジョン・クニオス氏とマーク・ビーマン氏によるfMRI(機能的磁気共鳴画像法)とEEG(脳波)を用いた先駆的な研究は、洞察が生じる瞬間の脳内プロセスをミリ秒単位で解明した。

彼らの研究によると、アハ体験が生じる約0.3秒前、右半球の「上前側頭回(Anterior Superior Temporal Gyrus)」において、40ヘルツ帯域のガンマ波の急激なバースト(突発的な活動)が観測される。この領域は、離れた概念同士を結びつけたり、メタファーを理解したりする高次な言語処理に関与している部位である。論理的な積み上げによる解決が左脳主導であるのに対し、洞察による解決は右脳の広範なネットワークが瞬時に同期発火することで生じることが示されている。

視覚的ゲーティングと「脳の瞬き」

さらに興味深いのは、そのガンマ波バーストの直前に観測される「アルファ波」の増大である。クニオス氏らは、洞察が訪れる直前の約1秒間、後頭葉の視覚野における活動が抑制されることを発見した。

これは「感覚ゲーティング(Sensory Gating)」と呼ばれる現象で、脳が外部からの視覚情報を一時的に遮断し、内的な思考プロセスにリソースを集中させようとする生理的な反応である。アハ体験の直前、人は無意識に目を閉じたり、虚空を見つめたりすることがあるが、これは脳が微弱なアイデアの萌芽をノイズから守り、意識の表層へと引き上げるための「脳の瞬き」とも言える準備状態なのである。

インキュベーションとデフォルト・モード・ネットワーク

なぜ、アハー体験は机に向かって集中している時よりも、シャワーを浴びている時や散歩中などのリラックスした状態(三上・三中・三下)で訪れやすいのか。この謎は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」の機能によって説明が可能である。

集中思考を行っている際は「実行制御ネットワーク」が優位になり、注意のスポットライトは狭く限定されている。しかし、思考を一時中断し、課題から離れる期間(インキュベーション期)を設けることで、脳の支配権はDMNへと移行する。DMNは脳内の離れた領域同士をバックグラウンドで接続し、一見無関係な記憶や知識をランダムに照合する役割を担う。アハ体験とは、この無意識下での広範な探索と、意識的な焦点化が奇跡的に交差した瞬間に発生する、認知システムの相転移現象として理解すべきである。

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Category:心理学

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