母子草(ハハコグサ)は、キク科ハハコグサ属の越年草。道端、野原、河原などに生息し、葉と茎には白い綿毛に覆われています。葉は白緑色で、白い産毛に覆われ、へら形でやわらかく、茎の先端に黄色い頭花の塊(頭状花序)がつきます。葉は白緑というより、緑の上に白がかぶっているので白緑の印象を与えるのでしょう。冬は根出葉がややロゼットの状態で育ち、春になると茎を伸ばして花をつけます。高さは10〜30cm。花期は4〜6月。
ハハコグサ(母子草)の頭花は黄色で筒状花(直径1mm程度)。果実期になると花の部分がほおけだすことから「ホオコグサ」と呼ばれそれが訛って「ハハコグサ」と呼ばれるようになったと言われています。種には冠毛がついており、冠毛は長さ0.5mm程度と極小です。
ハハコグサがあるように、父子草(チチコグサ)という同じキク科の植物もいます。チチコグサは草丈15cm程度です。
冬越しの際は長さ3センチほどの細いヘラ型の葉を3、4枚ロゼット状にして過ごします。この時も葉は白い毛を持っているためフェルトのような感じの質感を持ちつつ、色彩は白に近い淡い緑のような感じになっています。
春になると草丈が7、8センチになり、草の上部に黄色いつぶつぶの細かな花をつけます。この黄色い花はひとかたまりずつになっています。
母子草(ハハコグサ)の利用
ハハコグサは、昔は草餅に用いられ、春の七草として扱われる時は御形(おぎょう)五形、御行、ゴギョウとも言われるそうです。母子草(ハハコグサ)の全草を日干ししてお茶にしたりするようです。食べ方としては草餅やお茶の他、天ぷらにするという手もあるようですが、味はイマイチのようです。
ハハコグサ(母子草)の草餅については、ヨモギを草餅に使用していなかった時代に「餅のつなぎとして使用されていた」ということのようで、現代では特に草餅に使用されることはないようです。ただ、現代においても東北地方ではこの花を餅や団子に混ぜる風習があるということのようです。
学名: Gnaphalium affine
全身を包む「白いベルベット」の機能美
ハハコグサの最大の特徴は、葉も茎も全体が白っぽく見えることです。これは汚れやカビではなく、植物学的には「綿毛(トライコーム)」と呼ばれる、微細な毛がびっしりと生えているためです。
まだ寒さの残る早春に芽吹く彼らにとって、この毛はダウンジャケットのような「保温機能」を果たしています。同時に、春先の乾燥した風から水分が蒸発するのを防ぐ「保湿機能」も兼ね備えています。指で触れた時のあの優しく温かみのある手触りは、彼らが厳しい寒さを乗り越えるために身につけた、高機能な防寒着の質感そのものなのです。
ヨモギに奪われた「草餅」の王座
現在、草餅といえば「ヨモギ」が常識ですが、明治時代頃までは、このハハコグサ(御形)こそが草餅の材料の主役でした。なぜ、主役交代が起きたのでしょうか。そこには、日本人の言葉に対する繊細な感性が関係していると言われています。
「母子草(ははこぐさ)」という名前を持つこの草を、杵(きね)で叩いて餅にする。その行為が「母と子を搗(つ)く(苦しめる)」ことを連想させ、縁起が悪いと忌避されたという説が有力です。また、ヨモギの持つ強い香りが、魔除けとしてより好まれたという実利的な理由もあります。歴史の影でひっそりと姿を消した「元祖・草餅」の味。それはヨモギのような鋭い香りではなく、春の野原のような、もっと穏やかで優しい風味だったと言われています。
「花びら」を捨てた黄金の粒
ハハコグサの黄色い花をよく見ると、ヒマワリやコスモスのような「花びら」が見当たりません。黄色い粒々が集まっているだけのように見えます。
実は、この粒の一つ一つが、花びらを持たない「筒状花(とうじょうか)」と呼ばれる小さな花の集合体です。彼らは虫を呼ぶための派手な看板(花びら)を捨て、種を作る機能だけに特化した、極めて実用的な形態を選びました。地味に見えますが、ルーペで覗くと、その小さな粒の中で雄しべと雌しべが完璧な生命の営みを行っている、ミクロの宇宙が見えてきます。
「這う子」から「母子」へ
名前の由来には諸説ありますが、地面を這うように広がる姿から「這う子(はうこ)」と呼ばれ、それが転じて「ハハコ」になったという説があります。
踏まれても踏まれても、地面にへばりついて生き抜くその姿は、儚(はかな)げな「母子」のイメージよりも、もっと泥臭く、強靭な生命力を感じさせます。道端のアスファルトの隙間や、踏み固められた公園の土の上。他の植物が根を上げそうな過酷な場所でこそ、彼らはその白い綿毛を輝かせ、静かに、しかし力強く春を告げています。
キク科
- キク科キク属 菊(キク)
- キク科キク属 嵯峨菊
- キク科ヤブタビラコ属 小鬼田平子(コオニタビラコ)
- キク科ガーベラ属 ガーベラ
- キク科コスモス属 秋桜(コスモス)
- キク科ヒヨドリバナ属 藤袴(ふじばかま)
- キク科ムカシヨモギ属 姫女菀(ひめじょおん)
- キク科アザミ属 野薊(のあざみ)
- キク科オケラ属 朮(オケラ)白朮(ビャクジュツ)
- キク科モクシュンギク属 マーガレット
- キク科シカギク属(カミツレ属、マトリカリア属) ジャーマンカモミール(カモマイル)
- キク科ローダンセ属 花簪(はなかんざし)
- キク科ルドベキア属(オオハンゴンソウ属) ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)
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