最もよい約束の仕方

ある約束がされるとき、約束するものは、言葉ではなく、言葉の背後にあって言い表されないものである。それどころか、言葉は約束を弱めるのである。約束をするあの力の一部分にあたる力を放出し、消費することによって。諸君はそれ故に手をさしのべ、同時に指を口にあてよ。― そうすれば諸君は最も確実に誓うことになる。 曙光 350

最もよい約束の仕方というものは、何か相手から約束事を提案された時は黙ることです。

断る場合は断って、了承する場合も黙りこむ、そうすれば万が一約束を果たせなかった時でも、嘘をついたことにはなりません。

しかし、社会で生活する上では、返事をしないと事が進まない、了承のサインを相手に示さないと、断ったとみなされることがほとんどでしょう。

意図しなくても、約束事が嘘になってしまうことがあります。

「行く」と言って行けなかった、ある期限までにやると言ったことが期限までに果たせなかった、そんなことは相手を欺くつもりがなくても、一応期待を裏切ってしまうことです。

意図的な裏切りでなくとも、自分が原因で相手に期待を持たせてしまうということになってしまいます。

なるべくそういうことを避けるために本来最もよい約束の方法としては、約束事を提案されても黙りこむ、ということ以上のやり方はありません。

こちらから約束事の提案をする場合

逆にこちらから約束事の提案をする場合は、相手の返答が嘘にならないように配慮するというのが望ましいでしょう。

約束の仕方として相手に「絶対」という縛りをもたらさないという感じです。

約束事を無下にすることや裏切ることを意図していなくても、環境要因の変化で結果的に約束が守られず、ということが起こりうる可能性は「未来の約束事」という性質上常につきまとっています。

なので、事前準備や計画というものもあるので、約束事は確定しているに越したことがないというのはわかりますが、自分や相手の心の負担を考えれば、可能な限り「絶対」や「確実」という概念を持ち込まないほうが理想です。

究極的に相手が約束事を果たせなかったとしても問題はないという心持ちがあれば、相手を縛るような気持ちも和らいでいくでしょう。

ビジネスの場ではそうもいかないというケースが多いと思いますが、少なくとも個人的なことで、かつ、感情面の比重が大きいようなことに対しては、なるべくそうした配慮をした方が良いはずです。

「お互いの関係が良好であること」が最も意図することであり、「遊びに行く」などはその手段にしか過ぎないのですから、「予定が狂った!」と自分の感情がかき乱されるという理由を持ち出して相手を縛るということは避けるべきであると考えることができます。

返事をしなければならない義務はない

さて、約束事でも質問であっても、それに応答する義務というものはありません。

会社の中などで、返事をする義務があるというのは、裏返しの権利としての賃金や役職の権限などがあるからです。

そうした義務が定められていたとしても「権利が欲しければ」という条件付きの義務のようなものです。

黙りこんでいて失うものがあるとすれば、それは質問者に対してこちらが持っているある種の権利くらいのもので、「またゼロに戻る」位の感覚でいれば、なんてことはありません。

横暴な客の要求に答える義務はない

横暴な客の要求に答える義務はないどころか、そういうタイプの人の質問に答える義務すら無いということです。

マスコミに「どうなんですか?」と質問されて、答える義務はありません。

せいぜい、「質問に対して黙り込んでいた」と書くことくらいしかできません。

それをどう判断されようが、それは「記事」と「記事を読んだ人」との関係であって、自分には関係無い話です。

それが「人からの支持」によって左右されるようなもの、例えば政治家とかタレントとか、企業家でとりわけ株式公開をしている会社の役員などなら、権限や収益に関係してきますから天秤にかけるところでしょう。

無視しても何の問題もない

しかし、人からの支持を必要としないような事柄であれば、無視しても何の問題もありません。

例えば、自分が仕事をやめて独立する、という時に人からの支持はあった方がいいくらいのもので、誰かの支持がなければできないというものではありません。

どれだけ両親や配偶者に嫌がられようが、両親とは絶縁、配偶者とは離婚でもすれば、独立はできます。

それに際して援助なんてあてにせずに、また慰謝料などを払えるのであれば何の問題もありません。

必要とは「必ず要る」ということ

必要とは「必ず要る」ということです。無ければ成り立たないという事柄です。

生命維持に酸素は必要な事柄ですが、「両親に好かれる」とか、「クラスで人気者」とかいう要素は「必要」ではなく、あってもなくてもよい要素です。

そういうわけで、質問や約束に返答しなくても何も困りません。

答える/答えない、返事をする/しないは「自分が決めること」、ということになります。

最もよい約束の仕方 曙光 350

Category:曙光(ニーチェ) / 第四書

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