物事に没頭し、深夜どころか朝まで何かをやり続けてしまうような時、ふとベランダに出て、まだ青というまでにはなっていない夜明けの空を見ると非常に心地よい風がやってきます。
夜明けの直前から鳥は鳴き始めるようで、まだ微妙に薄暗い中微かに聞こえる鳴き声が、その「まだ青というまでにはなっていない夜明けの空」をさらに感慨深いものにしてくれたりします。
一応、体としては日中の方に力が出るようになっているという感じがしますが、街がもう動いていて、あれこれ何かとできてしまうとか、人から連絡が来るかもしれないとか、そうした様々な要因から意識の散乱が起こりやすいため、社会の中で人間が本当に集中しようと思うと、深夜から早朝でないと難しいという感じになってしまうのでしょう。
「みんなが寝静まった中、一人で黙々と」というのは、なかなか贅沢な時間です。
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そういえば、中学1年生の頃、「48時間遊び続け大会」とか「72時間遊び続け大会」という大会を幼稚園からの幼馴染と繰り広げたことがあります。
まだ僕たちが見たことのない世界、見たことのない景色を見てみよう、ということになりますが、その方向として「馴染み深い風景の別の姿」を見てみようという感じで企画しました。
もちろん深夜徘徊という形になりますが、「友人宅にお泊り」という形を取り、結局ご家族が寝静まった後、自転車で冒険に出るという感じで楽しみました。
深夜の地元というものは、一応正月などであれば見たことはあります。その他、家族でどこかに行った帰りにちらっと見た、という程度であればそれまでにも経験があります。
でも、「車の中から」とか、「家族と一緒で」とか、「正月でいつもと違う感じ」というようなものではなく、生身の僕たちが僕たちだけでその場所に飛び込むということに意義があるという感じで外に出ました。
初めてそれを決行したのは、確か今くらいの時期です。冬休みに入り、まだ大晦日を含めた正月モードに完全にはなっていない微妙な時期に決行しました。
普通、家族にバレるだろうということになりますが、その幼馴染宅は寺であり、友人は離れに部屋があったので大丈夫だったいう感じでした。
深夜に本堂脇の廊下を抜き足差し足で抜け、こっそりと外に出た僕たちは、寝静まった街を自転車でぐるぐる回ったりしました。
そして、かなりくだらないことですが、「死ぬまでにはやっておきたい」ということで、まだ青というまでにはなっていない夜明けの空の下、堀川五条の歩道橋に自転車を担ぎ上げ、二人で全力疾走しました。
走り終わった僕らは、世界を手に入れたような気分になりました。
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