君は情熱に別れを告げようとするのか?そうしたまえ。しかし情熱に対して憎しみをもたずに! 曙光 411 序
情熱と別れということで、叶わなかった恋、そして叶わせなかった恋というものについてでも書いていきましょう。
いくら情熱を持とうとも叶わなかった恋というものもあります。しかしやはり、何にも情熱を持てないままに過ごすよりは随分とその瞬間を輝かせるものとして、その成就に関わらず良い経験であると思っています。
一方、いくら情熱を持たれても叶わせなかった恋というものもあります。「何がいけないのか?」と聞かれれば、「いけないものは何もない」と言わざるをえないのですが、だからといってこちらに情熱があるかと言われればそうしたものは湧き起こってこない、だからダメだったというようなケースです。
受け取らなかったプレゼント
僕は生まれてこの方、お付き合いした人、そこまでには至らなかった人、全ての人に憎しみを持ったことはありません。むしろその後の関係がどうあれ幸せでいて欲しいと思っています。
そういうわけで、十代の頃にお付き合いしていた人とも未だに交流があったり、昔お付き合いしていた人数人からは、誕生日のお祝いメッセージや年賀状が届いたりします。
そんな中で一度、誕生日のプレゼントを受け取らなかったというような思い出があります。
受け取っていないので、そのプレゼントが何だったのかすらわかりません。
ただ受け取ってしまうと、どうもダメな気がして受け取りませんでした。
もちろんお返しをするのが嫌だとかそういうものではないのですが、徒にその人を翻弄させてしまうのが嫌で受け取りませんでした。
「渡したいものがあるから」
その日は僕の誕生日。電話口でそう言われ、夜にある場所まで来てくれないかと言われました。
とっさに断らなければならないと思った僕は、用事があるから行けないと言いました。
それは嘘ではありませんでした。
別の子とデートの約束があったからです。
「あの人と一緒に過ごすんですね」
そう言われました。
沈黙が流れました。
「わかりました」
そう言うとその子は静かに電話を切りました。
電話を切って、その場で僕は泣きました。
―
「その子は元気かなぁ」
今でもまれにそんなことを思う時があります。
どうか幸せでいてくれ。
憎しみをもたずに 曙光 411
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