オキザリスは、カタバミ科カタバミ属の多年草(ものによっては一年草)です。カタバミ属の学名がオキザリス(Oxalis)なので、カタバミ科カタバミ属の植物全般を指します。カタバミ(酢漿、片喰、方喰、傍食)も当然ながらそれに属しますが、主にオキザリスと呼ばれる時は園芸品種のものを指します。アフリカや中米・南米に生息しています。
オキザリス

オキザリス1
オキザリスには、ハナカタバミ(花片喰)という品種があったり、多種多様な花の色の品種があります。

オキザリス
カタバミと同様三つ葉の葉っぱが特徴的です。
紫色の花で自生している帰化植物として、ムラサキカタバミやイモカタバミがあります。ムラサキカタバミの球根には百合根のような鱗茎があり、イモカタバミの塊茎は硬く節があります。
カタバミ

カタバミの花
カタバミ(酢漿、片喰、方喰、傍食)については、白詰草(しろつめくさ) クローバーで、シロツメクサに似た植物としてご紹介していましたが、こちらにも再掲します。カタバミは五弁の黄色い花をつけます。

カタバミ
このカタバミは、道端で発見することができます。
カタバミの葉は夕方になると閉じて朝になると開きます。また曇りのときも閉じているようです。なお、葉が暗い赤紫色のアカカタバミという種もいます。

カタバミの実(果実)
カタバミの実は、まるでオクラのような風貌をしています。実が破裂してタネを飛ばしまくるようです。
酢漿、片喰、方喰、傍食の名
カタバミの漢字表記としての酢漿という名は、噛むと酸っぱい汁が出るという意味からのようですが、片喰、方喰、傍食というものについては、夕方や曇の日に半分に閉じた葉の様子が「片方・傍らを喰む・食む」という感じから字が当てられたようです。
学名: Oxalis
指先で触れる「生きた大砲」
道端でカタバミを見つけたら、花だけでなく、その後にできるオクラのような形をした果実を探してみてください。そして、熟していそうなものにそっと指先で触れてみてください。その瞬間、パチッという音と共に、あなたの指は種子の爆撃を受けることになるでしょう。
彼らは風や虫に運んでもらうのを待つような受動的な植物ではありません。果実の外皮の細胞が成熟とともに収縮し、内部の圧力(水圧)を極限まで高め、わずかな刺激で弾け飛ぶ「自力散布」のメカニズムを備えています。その射程距離は、彼らの小さな身長からは想像もつかない1メートル以上に及びます。あの可憐な姿の下には、子孫を新天地へ送り込むための、高精度のバリスティック(弾道)システムが組み込まれているのです。
鏡を磨く「酸」の化学
オキザリス(Oxalis)という学名は、ギリシャ語の「酸(oxys)」に由来します。その名の通り、葉や茎を噛むと酸っぱい味がするのは、体内に「シュウ酸」を含んでいるからです。
古くは、この草をすり潰した汁で、曇った青銅の鏡や仏具を磨いていました。シュウ酸の還元作用が、金属のサビや汚れを化学的に分解し、輝きを取り戻させるからです。鏡を磨く草、すなわち「鏡草(カガミグサ)」という別名は、彼らが単なる雑草ではなく、生活に役立つ天然の研磨剤、あるいは化学薬品として人々に利用されてきた歴史を物語っています。
武士が兜(かぶと)に刻んだ理由
日本の家紋において、カタバミの紋(片喰紋)は「五大紋」の一つに数えられるほど、武家社会で絶大な人気を誇りました。なぜ、踏まれても生えてくるような小さな雑草を、誇り高き武士たちがこぞって家紋にしたのでしょうか。
それは、彼らの持つ凄まじい「繁殖力」に、家家の繁栄と存続を重ね合わせたからです。地上部を刈り取られても、地下に根を残していれば何度でも再生し、種を飛ばして領土を広げる。その決して絶えることのない生命力は、戦国の世において「家を絶やさない」という最強の願いを託すにふさわしい象徴でした。あのハート型の葉のデザインには、可憐さではなく、一族の生存をかけた執念が込められているのです。
「片側を食われた」という誤解
「カタバミ(片喰)」という名前は、葉が虫に食べられて欠けているように見えることから名付けられたという説が一般的です。しかし、植物の生態をよく観察すれば、別の真実が見えてきます。
カタバミは夜になると、あるいは雨が降ると、3枚の葉を真ん中で折り畳んで閉じてしまいます。この「就眠運動」によって半分に折り畳まれた姿が、あたかも葉の片側が欠けてしまったかのように見える。これこそが名前の真の由来ではないでしょうか。彼らは食べられたのではなく、夜間の冷気や水分の蒸発から身を守るために、自ら傘を畳んでいるのです。それは弱さではなく、エネルギーを温存するための賢明な「休息」の姿勢です。
ピンク色の「不妊」の侵略者
都会の植え込みでよく見かける、鮮やかなピンクの花を咲かせる「ムラサキカタバミ」。実は彼ら、種を作ることができません。明治時代に観賞用として入ってきた外来種ですが、日本の環境では受粉しても実を結ばないのです。
では、なぜこれほどまでに日本中で増殖しているのでしょうか。それは、地下に無数の「鱗茎(りんけい)」と呼ばれる小さな球根を作り、それを土の中でばら撒いているからです。種という正規のルートを捨て、自身のクローンである球根を密かに増産して広がる。華やかな花の裏で進行するこの地下組織のような拡大戦略こそが、彼らが在来の黄色いカタバミを脅かすほどの勢力になった理由です。
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