ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)

粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)ことルドベキア・ヒルタ(Rudbeckia hirta)は、キク科ルドベキア属(オオハンゴンソウ属)の多年草です(一年草・二年草扱いされることもあるようです)。北米原産で、荒れ地や草原、あまり木々が密集していない林などに自生してるようです。

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ

単にルドベキアと呼ぶ場合もありますが、ルドベキアは属名であり、植物名ではないようです。

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ1

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ1

花期は夏から秋で、黄をベースとし中心が茶となるようなキク科らしい花の付き方をします。

粗毛反魂草と反魂草と大反魂草

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ2

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ2

反魂草という名から、すぐにペルソナシリーズの反魂香を思い出してしまいました。

ルドベキア・ヒルタ(Rudbeckia hirta)は粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)ですが、反魂草や大反魂草と呼ばれる別の種があります。大反魂草(オオハンゴンソウ)は、ルドベキア・ヒルタと同じキク科ルドベキア属(オオハンゴンソウ属)の多年草です。

反魂草は、キク科キオン属の多年草「Senecio cannabifolius」を指すようで、同科別属の別種のようです。オオハンゴンソウと葉の切れ込みが似ているということで名が似ていますが、属が違うためあまり近くはないという感じになるでしょう。

流れとしては、反魂草と大反魂草が何となく近いということで名が似る形になり、大反魂草と同属ということから粗毛反魂草と呼ばれるという感じで名がついていったのでしょう(詳しくは知りません)。

ルドベキア・ヒルタの花

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 花

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 花

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)の花です。黄色と茶色のグラデーションが印象的です。

夏らしい花のひとつです。

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 花1

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 花1

花の中心の感じはキク科らしくひまわり系です。

(この時、緑色の蜘蛛が鎮座していました)

粗毛反魂草(アラゲハンゴンソウ)の名にちなむ葉

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 葉

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 葉

粗毛ということで、葉や茎には毛が生えています。何だか北アメリカ原産のキク科植物は毛がよく生えているような気がします。表記として粗毛の他に荒毛と表記されることもあります。

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 葉2

ルドベキア・ヒルタ 粗毛反魂草 アラゲハンゴンソウ 葉2

学名:Rudbeckia hirta

「粗毛(アラゲ)」という名の物理的武装

和名にある「粗毛(アラゲ)」の通り、茎や葉を撫でると、植物とは思えないほどジョリジョリとした硬い感触に驚かされます。園芸店で売られている改良品種では多少マイルドになっていますが、野生種に近いものほど、それは毛というより「針」に近い剛毛です。

彼らの故郷は北アメリカの乾燥した草原です。この全身を覆う硬い毛は、強烈な日差しによる水分の蒸発を防ぐためのコートであり、同時に、水分を狙って齧り付こうとする草食昆虫や動物の口の中を傷つけるための、物理的なバリケードでもあります。あの鮮やかな黄色の笑顔の下には、乾燥と外敵から身を守るための、痛々しいほどの完全武装が隠されているのです。

人間には見えない「隠された標的」

ルドベキア・ヒルタの花は「鮮やかな黄色」一色に見えるかもしれません。しかし、彼らの主要なパートナーであるミツバチや蝶の目には、全く異なる景色が見えています。

紫外線を可視化する特殊なカメラで撮影すると、花の中心部分が黒く浮かび上がり、外側に向かって明るくなる「ブルズアイ(牛の目=標的)」の模様が現れます。これはネクターガイド(蜜標)と呼ばれ、空を飛ぶ彼らに「ここに着陸せよ」と指示する、空港の誘導灯のようなシステムです。人間にはただの美しい黄色い花に見せておきながら、真の顧客に対してだけ、蜜のありかをピンポイントで教える秘密の暗号を発信しているのです。

「反魂(はんごん)」が意味する再生の力

「反魂草(ハンゴンソウ)」という、いささかおどろおどろしい名前。これは「死者の魂を呼び戻す」という意味を持ちます。本来は葉の形状が似ている別の植物(キオン属のハンゴンソウ)から借用された名前ですが、お盆の時期、猛暑の中で他の植物が萎れている時に、太陽を睨みつけるように咲き誇るこの花の姿を見ていると、名前の由来以上の説得力を感じずにはいられません。

死んだように乾いた地面から、強烈なエネルギーを持って蘇り、真夏の太陽と対峙する。その姿は、生命力が死(枯死)を凌駕する瞬間を目撃しているかのような畏敬の念を抱かせます。

「太く短い」命の燃焼

園芸分類上は「宿根草(しゅっこんそう)」として扱われることが多いルドベキア・ヒルタですが、実際には数年で株が衰えて消えてしまう「短命な宿根草(ショート・リブド・ペレニアル)」、あるいは「二年草」としての性質が強い植物です。

これは決して弱さではありません。彼らは、何十年も細く長く生きるよりも、短い期間に爆発的なエネルギーですべての花を咲かせ、大量の種子を残すという「集中投資型」の生存戦略を選んだのです。株が枯れてしまっても、その周囲にはこぼれ種から無数の子供たちが芽吹いているはずです。個体としての永続性よりも、世代交代による更新を選んだ彼らの生き様は、夏の夜空に開く花火のような潔さ(いさぎよさ)を持っています。

禁止された「巨人」との違い

ルドベキアの仲間には、日本の生態系を脅かすとして「特定外来生物」に指定され、栽培が法律で禁止されている「オオハンゴンソウ(Rudbeckia laciniata)」という巨人が存在します。

私たちが庭で楽しむルドベキア・ヒルタ(アラゲハンゴンソウ)は栽培可能ですが、彼らもまた、道端で野生化するほどの強靭さを持っています。プロフェッショナルとして庭に植えるならば、その種子が風に乗って近隣の自然エリアへ飛び火しないよう、花が終わったら種ができる前に摘み取る(花殻摘み)という管理責任を果たすべきでしょう。その美しさを庭の中だけで完結させることこそが自然への礼儀です。

キク科

Category:植物

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