蓮(はす)は、ハス科ハス属の多年性水生植物。インド原産で、水の底にある地中の地下茎から茎を伸ばし水面に葉を出します。草高は約1mで葉には撥水性があります。
地下茎は根菜でおなじみの蓮根(れんこん、はすね)。
蓮の葉を荷葉(かよう)と呼ぶように、蓮は「荷」と書かれたり「藕」と表記されることがあります。なお、蓮の形の台座を意味する「荷葉座」は「かしょうざ」と読みます。
また、アオイ科フヨウ属(芙蓉属)ではありませんが、芙蓉(ふよう)水芙蓉(すいふよう、みずふよう)と呼ばれることがあるようです。その他、異名として不語仙(ふごせん)、池見草(いけみぐさ)、水の花といった呼称があります。
蓮の花

蓮の花
白~ピンクの花を咲かせます。
蓮の花期は一般的には7月下旬~8月上旬のようですが、様々な地方で見かける限り、概ね6月から8月ごろという感じです。

蓮(はす)
仏教絡み等々一般的な感じで表記される蓮華(レンゲ)はこちらであり、マメ科ゲンゲ属「レンゲ」、「蓮華草」こと「ゲンゲ(紫雲英)」とは別物です。

蓮の花(三室戸寺にて)
早朝にポンッと咲き、昼ごろから閉じだすのが特徴です。
蓮の蕾

蓮(はす)の蕾
蓮(はす)の蕾です。
蓮の葉

蓮の葉
ハスの葉「荷葉(かよう)」。円形です。蓮の葉には撥水性があり、水を弾くことで有名です。
ロータス効果
葉の表面についた水が表面張力によってに丸まって水滴となり、異物を絡め取りながら転がり落ちる現象をロータス効果と呼ぶそうです。ちなみに蓮の英名はロータス(Lotus)です。
学名:Nelumbo nucifera
「清らかさ」の正体はナノテクノロジー
泥の中から立ち上がり、泥に染まらず咲く蓮の姿は、古来より清浄さの象徴とされてきました。しかし、その「濡れない」「汚れない」という現象(ロータス効果)は、精神論ではなく、驚異的な物理学によって説明されます。
蓮の葉の表面を電子顕微鏡で覗くと、そこには無数の微細な突起がびっしりと並んでいます。このデコボコ構造が空気の層を作り、水滴を物理的に持ち上げているのです。水は葉に馴染むことができず、表面張力で丸まり、転がり落ちる際に表面の汚れを絡め取っていきます。つまり、蓮は魔法で清らかさを保っているのではなく、最先端のナノテクノロジーを駆使して、物理的に汚れを「拒絶」し続けているのです。
花は自ら「発熱」する
早朝、蓮の花が開くとき、その内部で激しいエネルギー燃焼が起きていることをご存知でしょうか。蓮は変温動物ならぬ「発熱植物」の一つであり、開花中の花の中心部は、外気温に関わらず30度〜35度前後に保たれています。
これは、寒い早朝に活動する昆虫(特に甲虫類)を招き入れるための、温かいホテルのようなサービスです。同時に、この熱によって特有の香気成分を揮発させ、遠くのパートナーへ信号を送っています。静かに咲いているように見えますが、その内側では、愛(受粉)を成就させるために、まるで情熱的な動物のように体温を上げているのです。
泥の底へ繋ぐ「シュノーケル」
食材として親しんでいるレンコン(蓮根)。あの特徴的な「穴」は、単なる模様でも食感のためでもありません。あれは、酸素のない泥の中で生きるための生命維持パイプラインです。
泥の中は酸素が極端に乏しい「嫌気(けんき)状態」です。通常の植物なら根腐れして死んでしまう環境ですが、蓮は葉の気孔から取り込んだ新鮮な空気を、茎(葉柄)の中にある通気組織を通して、地下のレンコンまで送り届けています。あの穴は、地上と地下を繋ぐ長い長いシュノーケルであり、泥沼という過酷な環境を生き抜くために進化した、高度な換気システムなのです。
音もなく咲く「沈黙」の重み
「蓮の花が開くとき、ポンという音がする」という言い伝えがありますが、植物学的な観点からも、実際の観測からも、これは詩的な錯覚であると言わざるを得ません。
蕾の中に溜まった空気が弾ける音だと信じられてきましたが、ハイスピードカメラによる検証でも、蓮は極めて静かに、厳かに花弁を解くことがわかっています。むしろ、あの巨大な花が完全に開くまでの数日間、何の音も立てずに劇的な変化を遂げることこそが神秘です。「ポン」という音は、人々がその神々しい開花の瞬間に期待した、心の耳が聞いた幻聴なのかもしれません。
2000年の時を超える「最強の種子」
蓮の種子の皮は、植物界でもトップクラスの堅牢さを誇ります。あまりに硬いため、自然状態では簡単には発芽しません。しかし、その頑丈さが奇跡を生むことがあります。
昭和26年、千葉県の遺跡で発見された2000年前の種子が発芽し、開花した「大賀ハス(二千年ハス)」の話はあまりに有名です。数千年の時を泥炭層の中で眠り続け、条件が整った瞬間に目覚める。蓮の種子は、単なる繁殖のための道具ではなく、時間を超えて遺伝子を運ぶための、完璧に設計されたタイムカプセルなのです。庭で蓮を育てるとき、私たちは数千年前の古代人と全く同じ景色を共有していることになります。
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