「改良」や「取捨選択」という社長の仕事

「社長の仕事は何ですか?」というような話題がたまにあります。たいていは「判断や決断」といった回答がやってきます。受け売りで話している自称コンサルにありがちな回答です。

個人的には「改良」と「取捨選択」というのが社長の仕事であると思っています。もちろん細かい点で言えば、「業務の穴を埋める」といったものや「書類に責任を持つためにハンコをつく」といった「責任を取る」という点もありますが、基本的には事業の改良と取捨選択というのがメインになるのではないかと思っています。

そういえば、最近の介護関係の問題において、「ふむ、より一層収益を上げて国の介護を支えるべきだろう」というようなことを思ってしまいました。

企業がきっちりと収益を上げて賃金を上昇させられれば、「40歳以上の介護保険料が上がる」といったことを経て介護の財源が潤うというような感じになっているので、母がお世話になっている分、収益をさらにもっと上げるというのが正しい道となります。

もちろん税を納めることは障害者福祉の増進にも繋がります。なので、社長たるもの収益を上げることが一番の社会貢献です。

「改良」の奥深さ

さて、「改良」というものも単純といえば単純ですが、一歩間違えると「改悪」になってしまうことがあります。事業家感覚のない公務員や勤め人にありがちです。

「改良」というものはフィードバックを取ることができます。

企業は「売上」等々でそれが見えやすく、改良を楽しむことができます。

ただこの「改良」の要素はかなり多岐にわたっています。また、改良に対する副作用のようなものも出てくる場合があり、結果改悪になってしまう場合もあります。

改良の要素としては、取扱商品やサービスの質というものから、接客、マーケティングのあり方、広告の文言から、従業員の働きやすさ等々本当にたくさんあります。

改良の副作用が結果「改悪」となる

また「副作用」というものは、例えば次のようなものです。

「電話をフリーダイヤルにすればもっとお客が来るだろう」と思ったら、「フリーダイヤルなら連絡してあげる」といったある意味「質の悪い層」ばかりがやってくるようになって、売上の増加に対して応対にコストがかかって利益としてはマイナスになった、というような感じです。

またさらに、システムや機械の利用と依存で触れていたように、システムや機械を利用するのではなく、依存することによって、「本来の目的が達成されない」ということもよく起こります(顧客満足度向上のためにある機械を利用したものの、「読み方に揺れのある名前の読みの入力の間違い」によって、顧客の名前をスタッフ全員で間違え続け、顧客を激怒させた事例)。

しかし、常に改良を行うというのを楽しみとしなければなりません。

また、やってうまくいかなかったことは、切り捨てる覚悟も必要です。埋没費用効果のようなものに足を取られて継続すると、本来の意図である収益の増加から逆行してしまうことになります。

改良というものは、細かなマイナーアップデートは常に行うことができます。しかしあるタイミングで大掛かりなメジャーアップデートの時期がやってきます。その時に若干トラブルが起こることがあります。

「取捨選択」において捨てられた側から恨みを買う

改良のためにということでやってみたことが結局うまくいかない場合、それを切り捨てるということを決断する必要が出てきます。

それでそうした「取捨選択」において、人が関わっている場合「捨てられた側」から恨みを買うこともあります。

しかし、それは恨むほうが間違いです。

これは男女の仲のようなもので例えるとわかりやすいと思います。

「相性が悪かった者同士が別れなければ、それぞれ相性の良い人と出会えない」

ということです。

売り場にスペースを空けなければ、売れる商品を置くこともできません。

売れない商品を「いつか売れるかもしれない」とそのままにしておくことは、「売れる商品を置く」ということを避けてしまいます。

そしてそうして売れない商品を抱えている間、固定費等々は出ていきます。

すると極端に言うとどうなるかといえば、結果売り場ごと手放さなければならなくなります。

ということは、売れない商品は、ただ売れないだけでなく、店ごと潰してしまったということになります。

そうなると売れなかった商品は二重に浮かばれません。

インターネットを利用したサービス紹介等々であれば、そうしたスペースの問題はないのではないか、と思われがちですが、「目立つ場所」というものには限りがあります。置いておいてもいいですが、目立つ場所、見る人が見やすい場所に居座るというのは避けるべきです。

近年の企業にありがちな「モテないやつの発想」

さて、少し話が変わりますが、本来事業家、社長というものや「収益を上げること」はもっと評価されてもよいはずですが、世間での印象はイマイチです。

その根底にあるのは、かつてであれば、押し売り、ぼったくり、不正行為バンザイの悪徳企業、近年であれば新しい企業にありがちな「モテないやつの発想」ではないでしょうか?

この「モテないやつの発想」とは何かというと、「いい感じで釣っておいて、四方八方から嫌がらせをして解約させない」というようなことをするようなやり方です。

入口は甘い言葉で釣りますが、解約の時に様々な負担をさせることで、解約時期を伸ばそうというようなやり方です。通信事業者にありがちです。

「望む場合はチェックしてください」

という表記であるべきものを

「望まない場合はチェックしてください」

という表現に変えることで、不本意な項目を契約に組み込むようなやり方も多く見受けられます。

「ちゃんと読まなかった人が悪い」

という理屈です。

また、表現を

「はい」

「今はしない」

という「いつかはやる」かのような表現にして無意識に働きかけるテクニックを導入している場合もあります。

モテませんね。

これは魅力のない男が、「俺から離れて一人で生きていけるのか?」と脅しているような格好にそっくりです。

消費者を馬鹿にしてますね。

「結局こういう奴らが儲けているんだ」という印象が、収益を上げて国の財政を支え、福祉を支えている事業家の印象を悪くしているような気がします。

しかしそういうタイプの企業は、人を釣るためにバンバン広告を出しているので目立っているだけです。

その裏には無数の企業があります。

改良や取捨選択の面白さ

基本的に改良や取捨選択というものは面白いものです。

面白いのですが、その面白さはどこから来るかというと、フィードバックがある点です。

結果が出るというか、何かしらの変化があるとそれは非常に面白く感じます。

悪い方に出たとしても「ああ間違いだったか」という感じで、ひとつの実験データが取れるので面白かったりします。

ところが微妙に変化が見えないときがあります。その時は多少の根比べです。良い変化にしろ悪い変化にしろ、変化が見えれば面白いのですが、何も変化がないように見えるときもちらほらあります。

単にもう少し時間がかかるのかもしれませんし、良くも悪くもないという、ある意味「改良にはなっていなかった」ということになるのか、全くわからない場合もあります。

そうした時には待つか、待たないか、放置するか、前の状態に戻すかというような判断が迫られます。そうした時の心構えと言うか、どっしりした態度というのもある意味社長の仕事なのではないかと思ったりもします。

世の中では一発で良い変化が起こらないと怒り出す人がいます。

社長として未熟な人ですね。二代目三代目の引き継ぎ社長に多い傾向にあります。

現状を打破するために費用をかけて期待を持った、ダメだった、ということにすぐ怒る人です。

こう言っては何ですが、とどのつまりは改良等々の社長の仕事を人任せにしているということになります。

これは外部業者に依頼する場合でも内輪だけの話にしても同様です。

やったら何かしらの結果が出る。それは良い変化かもしれないし、悪い変化かもしれないが、いずれにしてもまた改良する、ということを続けるのが社長です。

何割かはボツになるという前提

不得意な分野の「改良」

「改良」の要素はたくさんありますが、自分が得意なところしか改良しないというような人もいます。職人気質の人にありがちです。

それはそれで職人であるだけならいいのですが、職人かつ社長であるのならば、かなり広範囲にわたる「改良」の要素をすべて見渡すということしていかなければなりません。

商品やサービスの品質を高めるということは改良に当たりますが、それだけしかしないという場合、売れる前に会社が潰れるというようなことが起こったりもします。

案外見落とされがちなのが接客という点だったりもします。

大企業においては、ある意味よほど問題がある人以外が来ても成り立つほどの仕組みができあがっています。

なので、無愛想で暇があればスマートフォンばかりいじっているようなアルバイト店員ばかりコンビニでも成り立つわけです。

目先しか見えないと改善の価値がわからない

そこで接客というものが軽視されているような気もしますが、接客のあり方で売上というものはかなり変化します。

「俺の作る味が評価されているんだ」と思い込んでいたご主人の料理屋において、お客さんの相手をしていた愛想の良い奥さんが病気等々で出てこれなくなった瞬間に売上が激減するということはよくある話です。

たいていは、「できない」ということはありません。不得意だからやりたくないだけです。どうしても無理なら愛想の良い人にやってもらうか、何かしら穴を埋める方法を考えるしかありません。

欠点から導く知恵

「奥さんの愛想の良さが売上にかなり貢献していたんだ」ということを知ったのなら、その要素の重要性を考えて改良点として考えていかなくてはなりません。

長年修行をされていた本物の板前さん等々は「いらっしゃい」の声の出し方もプロです。脱サラの料理屋等でありがちですが、そうした点は「関係がない」と勝手に思い込んでいたりします。

本当に研究していけば「関係がないということはない」ということは見えてきますが、「改良の要素はたくさんあって、常に改良していかなければならない」という視点がないと、そうしたところには気づきません。

改良を楽しい、面白いと思えないのならば事業家には向いていない

それを楽しい、面白いと思えない人は、社長や事業主に向いていないということになります。

改良を楽しい、面白いと思えないのならば社長や事業主といった「事業家」には向いていません。人に恨まれるからとか、長年の歴史があるから等々の理由をつけて不採算部門を切り捨てる等々の取捨選択ができないのなら向いていないということになります。

そういえば勤め人時代に訪問した先で「不況だから仕方ないだろう。やれることは全部やってるよ。これ以上どうしろっていうんだ」とグチグチ言っている二代目、三代目がたくさんいました。儲かっていない事業者ばかりです。

じゃあさっさと辞めてハローワークに行けよ。

お前みたいなのは事業に向いてないよ。

事業家をナメてんじゃねぇよ。

ということですね。

まあ直接言わなくても、現実がそれを突きつけてくれますから、特に言う必要はありません。

物事の完璧さプロの定義

Category:company management & business 会社経営と商い

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