女神さんがいなくなり、僕の「ともだち化」は加速しました。
そして中学生になりました。
入学の前後あたり頃の自分は、「女神さんが引っ越した先は親戚の家の近くだから住民票を移して自分も転校する策略」などばかりを考えていました。
上級生に喧嘩を売って、あえて痛くない程度に負けて「いじめられているから仕方ない」という構造を作って大人を説得するというのがいいだろうか?
という事ばかり考えていました。
さて、最上級生から最下級生へ。
今度は少し年上も標的にしよう。どんどん大人にも挑んでいく。
行き過ぎた虚言は、行き過ぎてバレる。絶妙なところを突くんだ。切り返しを数段用意して、確実に屈服させろ。ニセモノに踊らされる奴らをせせら笑え。
女神さんで多少和らいでいた僕のこころは硬直し、ともだち化を本格化すべく、頭をフル回転していました。
おい、嘘やろ
中学に入り背の順が後ろだったやつと体育館で並んでいた時に話すことになりました。
何かしらのニセモノぶりを発揮していたはずでしたが、
「おい、嘘やろ」
とツッコまれました。
おうおう、さすが別の小学校。色んなやつがいるな。
しかし「ともだち化」していた僕は屈しませんでした。
嘘だと思われたりバレた時の返答も用意していました。
言い返すと
「ふーん」
と返されました。
やばいな。こいつは要注意だ。
同じ小学校のやつら、特に小6の同じクラスだった奴らは信用がなりません。
なので、他の学校出身者で友だちを作ろうとしていたという一方、「ともだち化」により、ニセモノが注目を集めるという構造を維持していました。関係性、パワーバランスにおいて最初からリードするためにという感じでしょう。
そして、その「おい、嘘やろ」と喧嘩になりかけました。
まあ、喧嘩で征服してもいいとも思いました。
体格は互角です。
「勝ってもあんまりメリットはないか。というか負けそう」とも思いました。
それから数日後、また何かで話す機会がありました。
また、「おい、嘘やろ」と言ってきました。
ともだち化していた僕は少し臨戦態勢に入っていました。
「生存戦略、成功法則を壊されてはならない」
そういう抵抗が起こりました。
「次こそは勝てるかはわからないが戦闘に持ち込むしかない」と思った矢先、
「まあ、嘘でもおもろかったらええやん」
と言ってきました。
「漫才なんか、嘘やん。ボケって、嘘やん。嘘でもおもろかったらええやん。おまえのそれは、ほんまなんかもしれんけど」
なんだこいつは?
緊張が解けた僕は笑ってしまいました。
「嘘やったらどうやねん。ほんまやったらどうやねん。ボケてツッコんだもん勝ちじゃ」
それから僕は、本当っぽい嘘をあえて話しました。
すかさず100%のツッコミ、完璧なツッコミが入ってきます。
「おまえ、ボケの才能あるぞ」
―
それから僕たちは親友になりました。
40歳の今で数えると、12歳から28年間ずっと親友です。
一年前、「僕には友達がいない」と思ってから一年後、一生涯の友だちができました。
―
ニセモノで注目を集めて支配しようとする「ともだち」はいなくなったのでしょうか?
いなくなったわけではなく、変化を遂げました。
ひとつの生存戦略として、一つのカードとして残りました。一種の完成です。
親友が一緒の時は出なかったような気もしますが、彼と一緒に壮大な嘘を演出したこともあります。
彼にはそこそこ年上のお兄さんがいて、そのお兄さんが松本人志氏の遺書の影響を受けて、「笑いと嘘」について彼にいろいろと吹き込んでいたようです。
―
考えてみれば、小学校の同級生の中で友だちは残らず親友はできませんでしたが、その後中学で今でも続く「親友」と「妻」に出会っています(考えてみると両方とも僕と違う小学校ですね)。
その事を高く評価することで、「小6事件」は、解決することになりました。
本来、これでお話は基本的には終わりですが、最後に「Aのその後」について触れておこうと思います。
主な登場人物
A 小6事件の張本人。僕に学級委員立候補を唆しつつ、僕に投票することもなかった女子。
B 小6事件の犯人と間違えられていた女子。中学に上がる頃に転校していった。
C 同じクラスの同級生女子 今回の記憶を探るのに卒業アルバムの名簿を送ってくれる等の協力をした女子。妻と仲が良いため未だに腐れ縁。ただ、当時僕に投票はしていない。
Z君 おそらく学級委員選挙で当選した同級生男子。人畜無害の野球少年。
Y君 いつも成績で学年2位と3位を争っていた同級生男子。僕に争っている感覚はなしだったが、彼は教育ママの影響でおそらく少し僕を敵視していた。
X君 週刊ジャンプが欲しいにも関わらず月刊ジャンプだけを買ってもらっていた同級生男子。
自作すごろくメンバー 屋根裏部屋のようなところで、自作のすごろくを作ったメンバー(眠る感覚との再会)。小学6年生当時、全員他のクラスだった(ということを確認して安心した)。
女神さん 同じクラスで唯一僕を気遣ってくれた心優しい女子。高校で再会するが、言葉を交わすことはなかった。
親友 いきなり「ニセモノ」をツッコんできて、それを肯定した中学の同級生男子。未だに親友。
おわり
そしてつづく
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