万年青(おもと)

万年青(おもと)

万年青(おもと)は、キジカクシ科(クサスギカズラ科)スズラン亜科オモト属常緑多年草で、代表的な古典園芸植物のひとつです。

一年中しっかりとした緑の葉をつけています。

万年青(おもと)

万年青(おもと)

真ん中の赤いものは万年青の実です。カタツムリなどの有肺類を媒介して花粉を媒介する「カタツムリ媒花」という特殊な受粉の仕方をしています。

万年青(おもと)2

万年青(おもと)2

藤子不二雄A氏の漫画で「万年青(まんねんあお)」という作品があり、万年青がテーマとなっていたことで知りましたが、万年青栽培の愛好家も結構多いようで、上質の万年青にはそれぞれ名前がつけられたりもしているそうです。

万年青(おもと)の葉

万年青(おもと)の葉

万年青(おもと)の葉

革質の分厚い葉を年中つけています。

昔は薬草として用いられていたようですが、今は専ら観賞用の利用ということのようです。

万年青(おもと)の葉2

万年青(おもと)の葉2

関西では葉が10枚、実が1つが規格となっているようですが、関東では13~15枚、実が2つとなっているようです。

万年青の品種

我が家の万年青は、たまたま株分けされているものを通りすがりに購入したものですが、万年青栽培はマニアの世界のようで、1000を超える品種があるようです。ということで、マニアではないので我が家の万年青の品種など、詳しいことはよくわかりません。

伝統品目のため品種は固定とされており、一般的には都の城というものが流通している他、大宗冠というものも有名なようです。

学名:Rohdea japonica

葉一枚に森羅万象を見る「芸(げい)」

万年青(オモト)の世界において、葉は単なる光合成器官ではありません。それは鑑賞のすべてであり宇宙そのものです。葉に現れる斑(ふ)やシワ、ねじれなどの変異を総称して「芸(げい)」と呼びます。

葉の表面が鮫肌のように細かく縮れた「羅紗(らしゃ)」、葉先が鈴虫の尾のように跳ね上がる「鈴虫剣(すずむしけん)」、龍がとぐろを巻くような「竜巻き」。わずか数十センチの緑の中に、荒れ狂う海や、静寂な山脈、神話の生物を見出すのです。花を愛でるのではなく、葉が織りなす「形と質感のミクロな風景」を読み解く。これこそが、江戸時代から続く世界最古のミニマリズム・アートの真髄です。

美しき赤に潜む「心臓への一撃」

冬になると、万年青は株元に艶やかな赤い実をつけます。常緑の葉と赤い実のコントラストは、お正月の縁起物として愛されますが、その美しさには冷徹な裏があります。

この実や根茎には「ロデイン(ローデイン)」という強力な強心配糖体が含まれています。かつては少量を用いて強心剤や利尿剤として使われましたが、素人が扱えば心不全を引き起こす猛毒となります。「万年青」という永遠の命を感じさせる名の裏で、心臓を止めるほどの死の力を内包している。その赤い実は、生命の輝きであると同時に、決して触れてはならない警告の赤信号でもあるのです。

家康が頼った「緑の結界」

徳川家康が江戸城入城の際に、真っ先に万年青を運び込ませたという逸話は有名です。しかし、それは単なる縁起担ぎではありませんでした。

風水や陰陽道の視点において、万年青は極めて強力な「陽」の気を持つ植物とされています。鬼門(北東)に置くことで、邪気の侵入を防ぐ「生きた結界(バリア)」として機能させようとしたのです。家財道具よりも先に、まず一鉢の植物を置く。それは、物理的な引っ越し作業の前に、その土地の「気」を鎮め、空間を浄化するための、呪術的ともいえる厳かな儀式でした。

切り刻まれても蘇る「芋吹き」の秘術

万年青の生命力は、私たちの想像を遥かに超えています。それを証明するのが「芋吹き(いもぶき)」というプロの増殖技術です。

長く育った万年青の茎(芋と呼ばれる根茎部分)を、あろうことか包丁で輪切りにしたり、縦に割ったりして、苔の上に転がしておきます。一見、植物を殺しているようにしか見えませんが、数ヶ月もすると、その肉片のような欠片から、小さな緑の芽(当たり芽)が吹き出してきます。身体をバラバラにされても、その欠片一つ一つから再生し、クローンとして復活する。この恐ろしいまでの再生能力こそが、「万年」の名を冠する真の理由かもしれません。

一攫千金の「実親(みおや)」探し

通常、美しい「芸」を持つ万年青は株分けで増やしますが、稀に種から育てることもあります。しかし、素晴らしい芸を持つ親から生まれた子供が、必ずしも同じ芸をするとは限りません。

その中で、遺伝的に優れた特徴を子に確実に伝える能力を持った特別な個体を「実親(みおや)」と呼びます。これはブリーダーにとっての宝です。何千、何万という実生(みしょう)苗の中から、突然変異によって見たこともない「芸」を持つ個体が生まれた時、その一鉢には数百万円、時には一軒の家が建つほどの値がつきます。静寂な古典園芸の世界ですが、その水面下では、遺伝子の偶然に人生を賭ける熱狂的な夢が渦巻いています。

Category:植物

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