スノッブ効果

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スノッブ効果(snob effect)とは、多数派嫌悪といった形で、多数の支持を集めているものを嫌う心理効果である。「人気のあるもの」を人気があることを理由に嫌い厭うといった心理である。

人気があるもの、多数派のものに対して「人気があるから嫌いだ」「多数派には便乗しない」という形で嫌悪感を示す。

このスノッブ効果は、単純にはバンドワゴン効果の完全逆バージョンであり、「勝ち馬に乗る」「多数に与する」ということを否定し、「多数に支持されているようなものに自分は同調しない」というのがスノッブ効果である。いわゆる「あまのじゃく」というような感じになるだろう。

多数派を支持しないという心理

多数派を支持しないという心理には、アンダードッグ効果というものもあるが、アンダードッグ効果が「負け犬を応援する」という比較的ポジティブなものなのに対して、スノッブ効果は「勝ち馬だから嫌う」といった形になり、そうしたネガティブな評価がスノッブ効果の特徴になる。

多数派だから嫌うというだけでなく、「どうせ仕掛けに反応して多数になっただけだ」といった感じで多数派になりうるものに対しても嫌悪感を抱く。

ただ、基本的には「多数派だから支持する」ということも錯覚なので、「その多数派が正しくない」という意見に対してスノッブ効果を示して論駁しようとするのは誤りである。

こちらとしては単に本当に面白くないとか良くないと思っているにもかかわらず、「人気があるから嫌いなんでしょ?」というのはおかしいということだ。

しかしながら「多数派だから嫌う」というのも嫌悪感という嫌な感情には違いないので、本質だけ見るようにしていれば良い。

なお、説得など送り手の意図に反して、唱導された立場から離れる方向へ意見や態度を変える「説得への抵抗、動的・積極的抵抗」としてブーメラン効果というものがある。

独自性欲求のパラドックスと現代的消費の変容

スノッブ効果は、他者の消費が増えるにつれて個人の需要が減少する現象を指し、大衆化への忌避感と差別化への渇望を原動力とする。これは単なる「天邪鬼」な性格の問題ではなく、社会的階層構造の中での自己位置を確認し、再定義しようとする高度な社会的シグナリングの一種である。現代において「人と同じ」であることは、しばしば没個性や主体性の欠如と見なされるリスクを孕んでおり、この恐怖こそが市場における希少性の価値を支える根源的なドライバーとなっている。

ライベンシュタイン氏の需要理論と社会的外部性

1950年、経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタイン氏が発表した画期的な論文『バンドワゴン効果、スノッブ効果、及びヴェブレン効果』は、個人の消費行動が他者の消費行動に依存しないという従来のミクロ経済学の前提を覆した。彼は、商品の有用性が他者の消費量によって変動することを「消費の外部性」と呼び、これを体系化した。

スノッブ効果はこの中で「負の外部性」として機能する。つまり、ある財を保有する人数が増加すればするほど、その財が持つ「排他性」という効用が減少し、結果としてスノッブ(通人・気取り屋)層の需要曲線は左方へシフトする。これは、商品そのものの品質や機能が劣化したわけではないのに、単に「みんなが持っている」という事実だけで価値が毀損される現象を理論的に説明したものであり、流行のライフサイクルが短期化するメカニズムの核心を突いている。

独自性欲求(NFU)の多層的構造

心理学の領域において、スノッブ効果の個人差を測定する尺度としてC.R.スナイダー氏とH.L.フロンキン氏が開発した「独自性欲求(Need for Uniqueness: NFU)」がある。彼らの研究によれば、独自性の追求は単一の行動ではなく、主に三つの次元で構成されている。

一つ目は「創造的選択カウンター適応」であり、社会的な規範には従いつつも、アクセサリーや趣味などで個性を表現しようとする健全な差別化である。二つ目は「不評な選択カウンター適応」で、あえて社会的に不評なものや逸脱した行動をとることで注目を集めようとする過激な差別化である。三つ目は「類似性回避」で、主流派と同じに見られることを生理的に嫌悪し、人気商品を避ける行動である。マーケティングにおいて、ターゲット顧客がどのタイプのNFUを持っているかを見極めることは、製品デザインやプロモーション戦略の成否を分ける重要な要素となる。

マス・カスタマイゼーションと「ロングテール」の罠

インターネットと生産技術の進化は、スノッブ効果のあり方に質的な変化をもたらした。かつて希少性は物理的な供給制限によって担保されていたが、現代では3Dプリンターやオンデマンド生産による「マス・カスタマイゼーション」が可能となり、誰もが容易に「世界に一つだけの製品」を手に入れられるようになった。

しかし、クリス・アンダーソン氏が提唱した「ロングテール」の世界では、逆説的に「個性的であること」自体がコモディティ化するという現象が起きている。あらゆるニッチな嗜好が即座に市場化され、SNSを通じて可視化されるため、「自分だけの発見」という優越感を維持することが極めて困難になっている。現代のスノッブ効果は、単なる所有の希少性から、そのモノを選び取るまでの「物語(ナラティブ)」や「文脈」の希少性へと、その価値の源泉をシフトさせている。

シグナリング理論とハンディキャップの原則

進化心理学や生物学的な視点から見ると、スノッブ効果はアモツ・ザハヴィ氏の「ハンディキャップ理論」によって解釈可能である。孔雀が捕食者に狙われやすい派手な尾羽を持つのと同様に、人間があえて入手困難なものや、実用性の低いアンティーク、理解されにくい前衛芸術などを好むのは、そのような「コスト」を支払ってもなお生存できるという余力を周囲に誇示するためのシグナルである。

機能性だけを追求するならば安価な量産品で十分な場面において、あえて非効率な選択をすることは、その個体の高い知性や美的センス、あるいは経済的なステータスを証明する証明書となる。スノッブ効果とは、社会的な群れの中で自分の遺伝子や存在価値を際立たせるために深くプログラムされた、本能的な生存戦略の発露といえるかもしれない。

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Category:心理学

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