ウツボカズラ 靫葛

ウツボカズラ

ウツボカズラ(靫葛)は、 ナデシコ目ウツボカズラ科ウツボカズラ属の食虫植物です。落とし穴式で捕虫するタイプで、食虫植物の代表格とも言える植物です。熱帯地域を中心に広く分布し、100種以上の種類が確認されています。

ウツボカズラ

ウツボカズラ

こうした食虫植物も光合成をしていますが、光合成だけではエネルギーが足りないような場所に生息しているようで、栄養を補うために捕虫するという感じのようです。

ウツボカズラ 靫葛

ウツボカズラ 靫葛

ウツボカズラの捕虫方法

ウツボカズラ 捕虫方法

ウツボカズラ 捕虫方法

ウツボカズラは、葉の先が捕虫嚢という袋状になっており、この中に虫を誘引して落とし込み、消化吸収します。捕虫嚢の入口付近や内部にある蜜腺で誘き寄せるようです。

捕虫嚢内部は固くロウ質になっているためすべりやすく、一度入った虫がよじ登ろうと思っても滑って落ちてしまうという構造になっています。

ウツボカズラ2

ウツボカズラ2

中には水が溜まっており、その水で虫は溺れ死んでしまうようです。雨水が溜まっても吸収し、乾いていても地下から水を吸い上げて一定量水を満たすという感じで調整されているようです。

同じ落とし穴式の捕虫を行う植物にサラセニアなどがいます。

悲しみを忘れるための「薬瓶」

学名である「ネペンテス(Nepenthes)」という響きには、深い物語が刻まれています。これは古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』に登場する「悲しみを消し去る薬(ネペンテ)」に由来します。

分類学の父リンネがこの植物を見たとき、その袋の中にたまった液体を、旅の苦しみや憂いを忘れさせる魔法の薬に見立てたのかもしれません。あるいは、そのあまりに奇妙で美しい造形に見入ってしまうと、時間を忘れ、現実の辛ささえも忘却の彼方へ消えてしまうことから名付けられたとも言われています。ジャングルの奥地で揺れるこの袋は、捕食のための胃袋であると同時に、見る者の心を癒やす精神的な薬瓶でもあるのです。

地を這う若さと、空を目指す成熟

ウツボカズラを育てる楽しみの神髄は、「変身」を見届けることにあります。実は、同じ株であっても、子供の頃と大人になってからでは、袋の形も色も劇的に変化します。

株が若いうちは、地面を這う虫を捕らえるために、丸みを帯びた「下位袋(かいタイ)」を形成します。しかし、つるが伸びて木に絡まり、高く登り始めると、今度は空を飛ぶ虫を狙うために、漏斗(ろうと)状でスマートな「上位袋(じょういタイ)」へと変化します。多くの園芸書には下位袋の写真ばかりが載っていますが、この空を目指し始めた上位袋の洗練されたフォルムにこそ、植物としての成熟とエレガンスを感じます。

蓋(ふた)は決して閉ざされない

「虫が入ると蓋が閉まるのですか?」とよく聞かれますが、これは最大の誤解です。ウツボカズラの蓋は固定されており、ハエトリソウのように動くことはありません。

では何のために蓋があるのでしょうか。主な役割は「雨除け」です。熱帯のスコールが袋の中に入り込むと、せっかく分泌した消化液が薄まったり、重みで袋が倒れてしまったりします。それを防ぐための傘なのです。また、蓋の裏には強烈な甘い香りを放つ蜜腺があり、虫を滑りやすい袋の縁(ふち)へと誘導するガイド役も果たしています。動かない蓋は、静かに、しかし確実に獲物を誘うための計算され尽くした装置です。

殺戮の場であり、生命の揺りかごでもある

袋の中は、強力な消化酵素や酸が含まれた「死のプール」ですが、驚くべきことに、この過酷な環境を好んで住処(すみか)とする生物がいます。特定のボウフラやバクテリアたちは、消化液に耐性を持ち、落ちてきた虫の死骸を分解してウツボカズラの消化を助けています。

これを「インキリヌス(同居生物)」と呼びます。ウツボカズラは一方的な捕食者として君臨しているのではなく、自らの体内に小さな生態系(マイクロコズム)を抱え込み、他者と利益を分け合いながら生きているのです。死をもたらす場所が、別の生命にとっては安全な保育器になっている。自然界の善悪では割り切れない複雑さがここにあります。

ジャングルの水筒としての純度

まだ蓋が開いていない、成長途中の袋の中に入っている液体は、実は無菌状態に近い極めて清浄な水(植物由来の分泌液)です。現地のジャングルでは、喉が渇いた時にこの未開封の袋を探し、中の水を飲んで渇きを癒やすことがあります。

少し青臭く、とろみがありますが、非常時の水源としては十分に機能します。昆虫にとっては恐ろしい罠であっても、人間にとっては命をつなぐ水筒になり得る。植物という存在は、関わる相手によって全く異なる顔を見せる多面体のようなものです。

湿度という「見えない水」を操る

栽培において最も重要なのは、鉢に水をやることよりも、空気そのものを水に変えることです。ウツボカズラは、根から吸う水以上に、袋や葉から感じる「空中湿度」を渇望しています。

日本の冬の乾燥した室内は、彼らにとって砂漠も同然です。ガラスケースに入れたり、頻繁に霧吹きをしたりして、肌に触れる空気を潤してあげることが、美しい袋を付けさせる唯一の近道です。目に見えない湿気というベールを常に纏(まと)わせてあげること。それは、彼らの故郷である熱帯雲霧林の吐息を再現する作業といえるでしょう。

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Category:植物

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