想起集合

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想起集合喚起集合)とは、消費者がある目的をふと思い、何らかの商品を購入しようとする時、その購入検討の対象となるブランドの集合が頭の中の集合である場合の集合。「○○と言えば?」という質問に対し、ある分野のブランド名、企業名の想起を求めた場合に対象者に想起された一群のものが想起集合(喚起集合)である。

いわば想起集合は、ある分野で想起される対象の一群ということでありながら、まさに一軍という感じになる。消費者に商品を購入してもらったり、店舗に来店してもらうためには、想起の段階で想起集合に入っている必要がある。その分野のブランド、企業として認知されているだけでなく、「一軍」として想起される時の一群の中に入っている必要がある、という感じで捉えることができる。

想起集合(喚起集合)の例

想起集合(喚起集合)の例としては、ソースカツ丼といえばヨーロッパ軒、というようなことになるだろう。ということで、「本を売るなら」の後に「ブックオフ」というような想起も該当すると考えることができる。つまり関連思考をしてもらうためにこのようなコピーがたくさんあるということになるだろう。おそらく「カステラ1番、電話は2番、3時のおやつは文明堂」も同様。

古典的定義から認知心理学的アプローチへ

想起集合(Evoked Set)という概念は、1960年代のハワードとシェスによる包括的な消費者行動モデルに端を発する。当初の研究では、消費者の情報処理能力には限界があるという認知心理学の知見が土台となっていた。

人間が短期記憶で一度に扱える情報の数、いわゆる「マジカルナンバー7(プラスマイナス2)」の法則などが引用され、市場に無数に存在するブランドの中から、実際に購入検討のテーブルに乗る数は極めて限定的であることが学術的に示されてきた。

この段階での理論は、消費者が認知している「知名集合(Awareness Set)」から、好意的な「想起集合」、中立的な「不活性集合(Inert Set)」、そして否定的な「不適切集合(Inept Set)」へと分類される静的な構造として理解されることが一般的であった。

デジタル環境下における集合形成のダイナミズム

インターネットの普及と検索エンジンの発達は、この古典的な枠組みに大きな再考を迫った。かつての物理的な店舗棚(シェルフスペース)の制約がなくなり、消費者は理論上無限の選択肢にアクセスできるようになったからである。

しかし、現代の研究においても、最終的な想起集合のサイズが劇的に増大したわけではないという結果が多く報告されている。これは、情報環境が変化しても人間の認知処理能力自体は変わっていないことを示唆している。

一方で、集合の「流動性」は高まっている。検索行動によって、検討段階の後半でも新たなブランドが想起集合に割り込む現象が頻繁に観測されるようになった。現代のマーケティングにおいて、初期のブランド認知だけでなく、検索段階での「再想起」や「割り込み」をどう設計するかが重要である。

データサイエンスと神経科学による新たな光

近年のマーケティング・サイエンスの領域では、アンケートによる主観的な回答だけでなく、POSデータやスキャナーパネルデータを用いた客観的な行動履歴から、消費者の「潜在的な想起集合」を推定する数理モデルの研究が進んでいる。

消費者が実際に迷った形跡や、比較検討のタイムラグを解析することで、脳内で競合していたブランド群を逆算する試みである。

さらに、ニューロマーケティングの分野では、ブランドロゴを見た瞬間の事象関連電位(ERP)を測定し、そのブランドが想起集合に含まれているかどうかで脳の反応速度や活性化領域が異なることを生物学的に解明しようとする動きもある。

戦略的示唆

これからのブランド戦略において、想起集合はただの「知名度ランキング」ではない。消費者の購買プロセスにおける「メンタル・アベイラビリティ(精神的な利用可能性)」をどのタイミングで、どの強度で発揮させるかという、動的な認知獲得競争の場として捉え直す必要がある。

世界的なトップブランドは現在、この「想起されるタイミング」をコンテキスト(文脈)とセットで管理する方向にシフトしている。「喉が渇いた時」ではなく「スポーツをした後の水分補給」という具体的な状況下で、いかに想起集合のトップ(Top of Mind)を占めるか。ここが勝負の分かれ目となる。

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Category:心理学

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