体験と精神の薬

手塚治虫氏の漫画の中には戦時中や終戦直後の日本を取り扱った作品がいくつかあり、直接的でないにしろそうした体験を元にしたような描写が各作品に散りばめられたりしています。 社会のあり方や人間のあり方、そして人間以外の様々な生き物との接し方などについて、現代でもいろいろな人が色々な表現で描いたりしていますが、どうしてもリアリティに欠けてしまう場合があります。 それはやはり直接の体験ではなく、言語的・思考的な産物としての意見や感覚を発端としているからではないでしょうか。 直接的な体験 動物との違いとして言語による情報の伝達

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気がつくと目の前にあるという日常とサロメ

ある時家の中である本を読んでいると、その中に安部公房氏の「砂の女」について触れられている部分がありました。 そこですかさず「安部公房の砂の女持ってる?」と聞くと、「目の前にあるよ」と言われてしまいました。 本を読んでいる自分の目の前の本棚にあったのです。 … 連続するサロメ そして先日、手塚治虫氏の「七色いんこ」を読んでいると、サロメという章がありました。 何の気なしに読んでいたものの、言われて気づいたのですが、居間にぽつんと置いてあった「岩波美術館 テーマ館 第11室 幻想 ファンタジー」の表紙もサロメ(ギュスタ

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中途半端な私服勤務

IT系ベンチャーなどなどにおいて、私服勤務で「オシャレに働いている」と思っている人たちの広告写真をみるといつも違和感を感じます。 なぜなら自分たちは「スーツなんて着ない」ということをアピールしているにもかかわらず、縁の太い眼鏡をかけながら、淡色のパンツ、淡色のシャツといったように、全員同じような服を着ているからです。 A. 誰が誰かわからない というのが本音です。 私服勤務というのはいいですが、その奥に「スーツやネクタイに縛られてなどいない」とか「自分たちは自由を謳歌している」という匂いを醸し出しつつ、さらに若干の

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白露の沈鬱

夏の暑さが去り過ごしやすくなるような季節のはずなのですが、どうしても昔からこの季節になるとやる気が無くなります。 20歳前後の頃は、このシーズンによく体を壊していました。 最近では特に体は苦しくないのですが、手足に力が入らなかったり、体が微妙に震えたりもします。 偏頭痛の一種である「頭の内側の痒み」みたいなやつが来るシーズンです。 一日の気分の乱高下が激しい 極端に一日のうちでの気分の乱高下が激しく、少しやる気になったと思ったら30分でそれが終わり、ひたすらしばらく間はやる気が出ないという感じの日々が続いています。

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「世界を動かしている」という実感

それが芸術的行為であれ、社会における権力の中の行動であれ、動機をたどると結局は「世界を動かしている」という実感欲しさに人は行動をしていると考えることができます。 その奥にはもちろん「世界をコントロールできるのだ」という、自分の意志の反映の確認という意図があり、そうしたものを求める根本は「世界が自分の意志とは別に動いている」ということに対する恐怖心です。 もちろんここで言う「世界」とは、客観的な世界とイコールではなく、この自我を通した世界、つまり自分の視点で自分が経験する世界です。 意志と表象と音楽 アルトゥール・シ

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美ヶ原の牛「25番」

心にググっと群馬ツアー 2018 長野・群馬での生き物たちとの思い出

心にググっと群馬ツアー2018の番外編的に長野・群馬の旅先で出会った生き物たちとの思い出について残しておきます。 今回も碓氷峠や赤城道路を走ったり、榛名湖に行ったり伊香保温泉にも入ったりという感じでしたが、重複している場所についての新しい写真などは追々過去記事に反映することにします。 草津熱帯圏のアルパカのマーブルを筆頭に、今回はやたらと行く先々で動物や虫たちとよく接しました。 それではまず「25番」からいきましょう。 美ヶ原の牛「25番」 今回も長野県の美ヶ原に行ったのですが(しあわせ信州 2017 ビーナスライ

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中山道 木曽路 奈良井宿・馬籠宿 タイトル

中山道 木曽路 奈良井宿・馬籠宿

江戸から京都までを繋ぐ中山道(なかせんどう)。 だいたいいつもそのルートに沿って岐阜・長野・群馬方面へ向かいますが、岐阜県の中津川市から長野県塩尻市までの間の山間にある木曽路(きそじ)にもたくさんの宿場町があります。 木曽路(国道19号)は、地図上ではほぼ直線的に見えるのですぐに終わるだろうと思いつつ、100キロくらいあるためなかなか終わらず、その上「強烈な眠気スポット」のため、僕は「魔の木曽路」と呼んでいます。 強烈な眠気が襲ってくる度に「木曽路の攻撃!」とつぶやきつつ、ほっぺたを叩いて「オレの攻撃!」などと、つ

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心にググっと群馬県 2018 草津温泉&草津熱帯圏

心にググっと群馬県 2018 草津温泉&草津熱帯圏

ババンババンバンバン!ババンババンバンバン! ということで、上州草津の湯です。 草津温泉は日本一の名湯とよく言われますが、内心は「ほんまかいな」と言う感じでした。 「お医者様でも草津の湯でも惚れた病は治りゃせぬ」 と言われるからには、想像を超えてもらわねば困ると言った感じです。 … 温泉の概念を変えるほどの泉質、日本一の名湯は伊達ではありませんでした。 ― 近畿圏の方々のイメージとしては「草津=滋賀県草津市」ということで、僕も高校生の時にはバイクで滋賀県草津市に遊びに行くたび「琵琶湖しかない…温泉はどこにあるのか?

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夢二郷土美術館(岡山)&竹久夢二伊香保記念館(群馬)

夢二郷土美術館(岡山)&竹久夢二伊香保記念館(群馬)

この夏のツアーを振り返ってみると、あまり意図せず竹久夢二氏にまつわるスポットを巡っていたので、まずは「夢二郷土美術館(岡山)&竹久夢二伊香保記念館(群馬)」です。 「大正ロマン」の代名詞であり、美人画で有名な竹久夢二(たけひさゆめじ)氏ですが、これだけ連続して彼にまつわるスポットに行っておきながら僕自身は行くまでほとんど無関心レベルでした。彼の作品と彼の名が一致したのが今年です。 榛名湖にある歌碑が竹久夢二氏のものだったと知ったのも今年でした。 夢二郷土美術館 今年の7月、岡山の笠岡諸島ツアーの帰りに寄った

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一切行苦

一切行苦(いっさいぎょうく)、あるいは一切皆苦(いっさいかいく)について哲学的に紐解いていきます。一切行苦も仏教用語にはなり、諸行無常や諸法無我といった単なる理(ことわり)を表しますが、それら2つに比べてやや「どう生きるか」にわかりやすい側面を持ち、生きていく上での認識のあり方をつかみやすい面を持っています。ということで、端的には馴染みやすいという感じです。 諸行無常や諸法無我についても書いたので、一切行苦についても書いておこうかなぁと思ったしだいです。何だかんだで一切行苦という用語もちらほら使っていますが、その要

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日々の体温と人々の記憶

パソコンやスマートフォン、タブレットの光にさらされると体温が下がるような気がします。実際の体温がどうなっているのかわかりませんが、気力とでもいいましょうか、生きる力、生命力が失われ、体温が下がっていくような感覚がしています。 それは視覚にだけ集中し、変な姿勢を続けていることも影響しているのかもしれません。 衣服と肌の間にこもった体温を感じる そんな折に僕が小学生だった頃、つまりまだパソコンや携帯電話などが普及していなかった時代の音楽を聴いたり、映画を観たりすると、男性であれ、女性であれ体温の高さを感じることがありま

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