嚢をかたぶけて酒飯の設をす

高校生くらいの時の話ですが、友人宅に行くと、その友人の友人がそのまた友人を連れてやってくるという感じになりました。まあそのくらいの年齢の頃にはありがちです。

その友達の友達の友達くらいの人をひとまずAさんと呼ぶことにしましょう。ちなみに女子です。

どのような経緯があったのかはわかりませんが、Aさんは最近学校を辞めており、どこかの機械工場に勤めているという感じだったようです。

それはそれでいいのですが、Aさんは友達と一緒に僕の友人宅までやってきました。

人数分のドリンクを持ってきてくれたという何とも粋な感じでした。僕の感覚からするとやはり「働いているものは違うなぁ」という感じでした。

そして日が暮れだした頃、ほぼ全員に睡魔がやってきました。

その中で僕や友人、そしてAさんがうたた寝してしまったというのは良いのですが、後日聞くところによると、Aさんを連れてきた友人(女子)が一人だけ睡魔に勝っていたようで、知らぬ間にAさんの財布をチェックするという事態が起こっていたようです(ということは僕の財布も盗み見されていたのでしょう)。

まああんまりそんなことはするなよ、とは思いましたが、

「2円しか入ってなかった」

という驚きの事実を聞くことになりました。

蓋を開けてみると、どうやら初任給はまだ入金前ということのようでまさに金欠状態だったということだったようです。

それにしても普段ですら「2円になるまで使い果たす」ということ自体があまりないという中、全員分の飲み物を買ってくるなど、当時の僕たちの感覚では考えられません。

その後、Aさんとは特に会っておらず今ではまったく知りませんが、どこかで幸せに暮らしていて欲しいと思ったりします。

若き日の夏。

嚢をかたぶけて酒飯の設をす。

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