長実雛芥子(ながみひなげし)は、 ケシ科ケシ属の一年草です。長実雛罌粟と表記されることもあります。地中海沿岸が原産の外来種でケシやヒナゲシの仲間です。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ2
ナガミヒナゲシという名を持ちますが、ケシのような成分はありません。他の植物の生育を抑えるアレロパシーと強い繁殖力から生態系への影響を懸念されていますが、一応今のところは特定外来生物としては扱われていません。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ
長実雛芥子の花
長実雛芥子(ナガミヒナゲシ)の花。オレンジ色の花がつきます。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ 花2
開花期は4月から5月で、花弁は基本的に4枚です。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ 花3
長実雛芥子の葉と実
芥子坊主と呼ばれる果実が細長く中にたくさんの種が入っています。自然界のマラカスです。「芥子粒ほどの大きさ」と言う言葉が示すとおり、かなり細かく小さな粒がたくさん入っています。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ 葉
葉は結構細かめです。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ 実ができる途中
実ができる途中の状態です。少し毛が生えています。

長実雛芥子 ナガミヒナゲシ 実ができる途中2

実ができつつある長実雛芥子の群生
また実の中身の種が確認できそうな頃に種の写真を追加しようと思います。
学名:Papaver dubium
根から放たれる「化学兵器」の冷徹さ
春の道端で揺れる薄いオレンジ色の花は、その儚げな外見とは裏腹に、冷徹なまでの排他性を持っています。ナガミヒナゲシの周囲を見てみてください。他の植物があまり生えていない、あるいは極端に少ないことに気づくはずです。これは偶然ではありません。
彼らは根から「アレロパシー(他感作用)」物質を分泌し、周囲の植物の成長を阻害したり、発芽を抑制したりしています。いわば、自らのテリトリーを確保するために土壌に化学兵器を散布し、競争相手を排除しているのです。可憐に咲いているその足元では、目に見えない化学戦争が静かに行われており、彼らはその勝者としてそこに立っているのです。
一株が生む「15万」の絶望
もし、庭に咲いた一輪のナガミヒナゲシを「きれいだから」と放置した場合、翌年あなたを待っているのは、指数関数的な「絶望」です。
一つの果実(ケシ坊主)の中には、約1,000〜2,000粒もの微細な種子が詰まっています。条件が良い株であれば100個以上の実をつけるため、計算上、たった一株から「最大15万粒」もの種子がばら撒かれることになります。
しかも、その種子は「未熟」な状態でも発芽能力を持ち、土の中で数年以上も休眠できる「埋土種子(まいどしゅし)」としての能力まで備えています。一度種をこぼしてしまえば、そこから数年間は、忘れた頃にまた生えてくるゾンビのような殲滅戦を強いられることになるのです。
「アヘン」を持たぬケシの毒
「ケシ」と聞くと、麻薬(アヘン)の原料になるのではないかと心配される方がいますが、ナガミヒナゲシはあへん法で規制される種(ソムニフェラム種など)ではありません。警察に通報する必要はありませんが、だからといって無害なわけでもありません。
茎を折ると出てくる「黄色い乳液」には、植物性アルカロイドが含まれています。これに触れると、肌の弱い人は激しいかぶれや炎症を起こすことがあります。 駆除しようとして素手で引き抜くのは、プロの視点ではあまりに無防備な行為です。彼らは麻薬成分を持たない代わりに、身を守るための別の化学的な毒を体内に巡らせています。必ず厚手の手袋をして、肌を露出せずに挑むべき相手です。
車輪と共に旅する「ハイウェイ・スター」
ナガミヒナゲシがなぜ、これほどのスピードで日本中の道路沿いに広がったのか。その理由は、彼らが現代の「車社会」を巧みに利用したからです。
彼らの種子は粘り気がなくサラサラしており、微細な凹凸に入り込むのに適しています。自動車のタイヤの溝や、私たちの靴の裏。それらに付着し、何キロ、何百キロという距離を移動します。そして、雨で洗い流された先(道路脇や中央分離帯)で発芽するのです。 風に飛ばされるだけでなく、文明の利器を「乗り物」としてハッキングする。その都市環境への適応能力こそが、彼らが最強の帰化植物と呼ばれる所以(ゆえん)です。
駆除の作法は「揺らさない」こと
もし駆除を決意したなら、最も重要なのは「実が割れる前」に行うことです。しかし、もし既に実ができている場合は、細心の注意が必要です。
実の頂部にある隙間が開いている場合、少し揺らすだけで胡椒(こしょう)を振るように種が飛散します。引き抜いた瞬間の振動で、数万の種を庭に撒き散らすことになりかねません。 プロフェッショナルな駆除とは、まずゴミ袋を静かに被せ、株全体を覆ってから引き抜く、あるいは根元で切断するという、外科手術のような慎重さを伴うものです。「抜く」のではなく「封じ込める」。その意識がなければ、彼らとの戦いには勝てません。
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