菊 キク

菊(キク)

菊(キク)は、キク科キク属の鉢植えなど鑑賞用として栽培される多年草で短日性植物。草丈1mほどで、やや木質。葉は有柄で卵形か卵形披針形で互生しています。基部がやや木質化した茎の頭部と葉腋に頭花をつけます。茎は時に帯紫紅色を帯びます。

白菊花、黄菊花など主流となる菊の他、観賞として改良された多種多様な菊が存在します。日本においては、主にキク(学名:Chrysanthemum morifolium)やイエギク(Chrysanthemum grandiflorum Kitam.)を指します。菊は食用、観賞用に分けられたりしますが、日本においては、食用に中国からやってきた後に観賞用の風習が生じたという流れになるようです。

菊花

菊 キク 黄色

菊 キク 黄色

菊(キク)の花は頭花で、花期は主に9~11月。園芸品種が多数あり、切り花用として、温室で周年栽培されています。ここでの菊はもちろん観賞用としての菊ですが、食用菊など菊の仲間には日常でたくさん触れる機会があります。自然に開花する時期によって夏菊、夏秋菊、秋菊、寒菊と分類されたりします。

頭花(頭状花)・頭状花序

キク科の植物の特徴が菊に代表される花のつき方、頭状花序です。菊の花は、小花(しょうか)という雄蕊と雌蕊をもった小さ花の集まりで形成されており、これは頭花(頭状花)と呼ばれます。

舌状花と筒状花で構成され、それぞれの特徴を持った小さい花が集まって、大きな花のように見える形状を作る、というのが菊花を始めとしたキク科の花の特徴です。花びら一枚が一つの花となり、舌状花は雄蕊だけを持ち、筒状花は雄蕊と雌蕊を持ちます。

菊花の薬効

なお、菊花には薬効成分があり、生薬としても利用されます。生薬として利用されるのは、キク Chrysanthemum morifolium Ramatulle と、シマカンギク Chrysanthemum indicum Linné(Compositae )の頭花です。主要成分は、フラボノイドのルテオリン(luteolin)のようです。

菊の名と別称

菊 キク

菊 キク

標準和名の「キク」は漢名である菊の音読みをそのまま用いています。別の呼称として、霜見草(しもみぐさ)、星見草(ほしみぐさ)、千代見草(ちよみぐさ)、隠逸花(いんいつか)、陰君子(いんくんし)などがあります。なお、菊は異名として翁草(おきなぐさ)と呼ばれることがありますが、本来オキナグサは、キンポウゲ科の別の植物です。

日本では、薬草や観賞用植物として平安時代より用いられ、桜花とともに日本の二大国花として、よく知られている花で、50円玉にも描かれています。

菊 キク 白

菊 キク 白

菊(キク)は中国からの渡来植物とされていますが、その原産地はどこなのかはっきりはしていないようで、キクそのものの原種は発見されていないようです。有力説は、島寒菊(シマカンギク、近畿地方以西から中国人陸に分布する黄花の野生菊)と、朝鮮野菊(チョウセンノギク)との分布が重なる中国中部で交雑し成立したという説(北村四郎博士)です。

この菊(キク)は牧野富太郎博士によって、新・秋の七草の一つに選定されました。

日本三大名菊

古典観賞菊として日本三大名菊とされるのが、京都嵯峨の嵯峨菊、江戸の江戸菊、肥後の肥後菊です。その他古典菊として有名なものに、美濃菊、伊勢菊・松坂菊があります。

嵯峨菊

菊の品種

また国内の有名な菊の品種としては、神馬、新神、秋芳の力、精興の誠、精の一世、精雲、岩の白扇、フローラル優香などがあります。

無側枝性ギク

新神や精の一世、岩の白扇は芽なしギクと呼ばれる無側枝性ギクで、これは突然変異により各節から出てくるわき芽が伸びない品種となっています。

「闇」を測る、精密な時計

菊が秋に咲く理由を「涼しくなったから」だと思っていませんか? 実は、彼らは気温ではなく「夜の長さ(暗闇の時間)」を厳密に計測しています。これを「短日植物(たんじつしょくぶつ)」と言いますが、プロフェッショナルな視点で見れば、彼らは「長夜植物」と呼ぶべきかもしれません。

菊は、連続した暗闇が一定の時間(品種によりますが約13時間など)を超えると、「冬が来る前に急いで子孫を残さなければ」と判断し、花芽(はなめ)を作ります。電照菊(でんしょうぎく)という栽培技術は、この性質を逆手に取り、夜中に電球をつけて「まだ夏だ」と菊を騙し、開花時期をコントロールする「時間のハッキング」です。彼らの体内時計は、現代のデジタル時計にも劣らぬ精度で、季節の移ろいを秒単位で監視しています。

一本の根から作る「宇宙」

菊花展などで見かける、巨大な花が三つ並んだ鉢植え。あれを「三本仕立て」と呼びますが、単に三本の苗を植えているわけではありません。あれは、たった一本の苗を摘心(てきしん)し、三本の枝に分岐させ、それぞれを「天・地・人」に見立てて配置した、高度な建築的構造物です。

一番高い後ろの花を「天」、左前を「地」、右前を「人」とし、一株の中で森羅万象や宇宙の調和を表現する。しかも、三つの花が同時に満開になるように、それぞれの枝への栄養配分をミリ単位で調整する技術が必要です。あれは園芸という枠を超えた、植物による彫刻であり、自然の奔放さを人間の美意識で統制しようとする、日本特有の「作為の美」の極致なのです。

「甘くない」香りの正体

菊の香りを深く吸い込んだとき、バラやジャスミンのような甘美な陶酔感ではなく、どこかスーッとするような、背筋が伸びる感覚を覚えませんか?

その正体は、樟脳(しょうのう)にも似た「カンファー」や「ボルネオール」などのテルペン類です。これらは古くから薬として使われてきた成分で、鎮静作用や殺菌作用を持っています。「重陽の節句」に菊酒を飲んで不老長寿を願うのも、単なる迷信ではなく、この香気成分が持つ薬理効果(デトックスや血行促進)を、先人たちが経験的に知っていたからです。菊の香りは、誘惑するためのものではなく、心身を「清める」ための機能的な芳香なのです。

なぜ「仏花」であり「皇室」なのか

菊は皇室の紋章(十六八重表菊)であると同時に、葬儀の定番でもあります。「高貴」と「死」。この両極端なイメージを背負える理由は、菊が持つ圧倒的な「日持ち」の良さにあります。

菊の切り花は、水揚げが良く、他の花よりも遥かに長く咲き続けます。さらに、茎から放出される成分には、水中のバクテリアの繁殖を抑える天然の抗菌作用があり、水を腐らせにくいという特質があります。「枯れない」「水を汚さない」。この「永遠性」と「潔癖さ」こそが、長く続く皇統の繁栄を象徴し、同時に、故人への変わらぬ愛を捧げるための供花として選ばれた理由です。死してなお、その場を清浄に保とうとする意志。その凛とした強さが、日本人を魅了し続けてきたのです。

花びらの「結束」が生む幾何学

一輪の菊を構成する花びらの数は、多いもので数百枚に及びます。しかし、それらは無秩序に並んでいるのではなく、フィボナッチ数列にも通じる完璧な数学的秩序に従って配置されています。

中心に向かって螺旋(らせん)を描きながら、一枚一枚が互いを支え合い、完璧な球体や円盤を作り上げる。雨風に耐え、型崩れしないその強固な結束力は、個よりも集団の調和を重んじる日本の精神性とどこか共鳴しています。ルーペでその配列を覗き込めば、そこには自然界が描いた最も美しい幾何学模様が見つかるはずです。

キク科の植物

キク科の植物は被子植物の中で最も繁栄しているものの一つで、世界中に2万種以上が自生しているようです。

馴染み深いもので言えば、道端に咲くタンポポやノゲシ、ハルジオンや姫女菀(ヒメジョオン)野薊(ノアザミ)の他、春の七草である母子草(ハハコグサ)小鬼田平子(コオニタビラコ)もキク科の植物です。その他秋の七草である藤袴(ふじばかま)や薬用秋の七草の植物の朮(オケラ)もキク科です。

またお花屋さんや園芸店で馴染み深いもので言えば、通常の菊やスプレーマム(スプレー菊)、ピンポンマム(ピンポン菊、ポンポン菊)などもありながら、ガーベラ秋桜(コスモス)、ヒマワリ(向日葵)、カモミール、デージー、ダリア、マーガレット、マリーゴールド、アスター、リアトリス、ツワブキ(石蕗)、ハナカンザシ(花簪)、キンセンカ(金盞花)、などもキク科に属します。

キク科

Category:植物

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