威厳と恐怖心

儀式、職務と地位上の服装、真面目な顔つき、厳かな眼つき、ゆったりした足どり、曲がりくねった話しぶり、威厳とよばれるもののすべて、これは実際のところ恐怖心をもつ人々の偽装形式である。― 彼らはそれによって(自分を、あるいは彼らが代表するものを)恐怖を与えるものにしようとする。恐怖心をもたない人々、すなわち、もともといつも明らかに恐ろしいものをもっている人々は、威厳と儀式を必要としない。彼らは誇りとする恐ろしいものの徴候として、正直と言葉や挙動の率直さとが評判になり、その上排斥までされる。 曙光 220

坊主がやたらと高そうな金糸の刺繍で装飾された服を着たりするのはなぜでしょうか。その高そうな服も元は宗教代です。それでさらにパフォーマンスをしています。

宗教屋に限らず大きな企業などでは「儀式」と「役職」が大好きな人などがいます。大きな企業でなくても、「社長すごいですね」と言われたがっているオーナー社長や、同族企業何代目かの「J」から始まる若手経営者の集まりで飲み明かしているボンボンなどは、そういった威厳を主張することが好きな傾向にあります。SNSで外車をカバー写真にしているようなタイプですね。

間接的な威嚇

この手の人々は、自らの恐怖心から「相手に恐怖心を与えなければならない」と思っています。恐くなかったらそんなことをする必要はありません。

つまり「所詮ボンボンが」などと思われることに恐怖して、外車をカバー写真にしたり、儀式を行って、代表あいさつというものをやったり、雰囲気重視の式典をやって「表彰状を渡す側」をやっています。

表彰状を渡すということは相手を褒めているという要素もありますが、「オレが褒めてやってんのよ?」という、「おまえを褒めてやっている側のオレのほうが偉い」という威嚇でもあります。

相手を褒めるというだけならば「式典」である必要はありません。わざわざジャケット着用という取り決めをしなくても済みます。

ほめる・ほめられるという関係

「ほめてあげている」から、こちらはほめられているあなたよりすごいのだ、という一種の力の誇示のような構図があります。

だからこそほめるということは慎重にしなければなりません。そういえば寒い人がいましたね「ほめる」。それに、ほめるだけの「威厳」を、そもそもどうしてあなたが、もっているということになっているのか、ということもセンチメンタルな人の頭にはよぎります。

「ほめてあげている」のだから、私は「ほめられているあなた」よりすごいのだ。

この構図が時に世間では理解不能とされているような現象を呼び起こします。

世界的に有名なのはサルトルのノーベル賞辞退や、近年では「もらっておいてやる」と芥川賞を受賞したあの人などです。

世間では「もらえるものをなんでありがたくもらわないのだろう」と考えるようですが、褒められるということは一歩間違えれば「褒めている側の踏み台」にしかならないということです。気をつけないと、褒められている側より、褒めている側のほうが偉くなってしまうという構図です。

会社で表彰されるということは、基本的には会社という、その会社の従業員よりも、一応「大きい存在」が、従業員を「ほめてあげている」という形になっています。

会社のほうが存在が大きいと思っているから、褒められて喜んでいます。「自分より強いもの」が、自分を評価してくれた、と思っているからです。ボーナスはもらってもいいですが、表彰されるというのは少し嫌な気がします。

しかしながら、その会社の従業員ということは会社にお世話になっているということです。ぶら下がっているのだから、表彰を辞退することは難しいでしょう。

現金はもらってもいいですが、式典で表彰されるというのは、相手を自分より強いものだと認めるというようなことです。体育会系ですね。

それを断ることができないというのも一つの苦しみです。思想信条に関係なく合掌や二礼二拍手一礼を強要されるようなものです。そういえば、「評価はいらない、金はもらう」と、言った人がいます。三大16ビート漫才師の一角を担った人であり、映画監督のあの人です。

ただ、勤め人でもボーナスが出ますが、会社勤めでないフリーの制作者などであっても、今も昔も評価をされると「広告費が浮く」「宣伝効果で売上が上がる」という、収入が左右される点も考えどころです。「広告費を浮かせたいだろう?」という脅しでもあります。

売上が上がれば次回作への投資もできるだろう、という脅しです。この脅しを使って、「オレのほうが偉い」を主張していきます。本当にそういう点がないかどうか、褒め方には十分注意したほうが良いでしょう。

https://youtu.be/WpuBhWv1WmI?t=5m58s

虚栄心の原因と心理の裏側

威厳と恐怖心 曙光 220

Category:曙光(ニーチェ) / 第四書

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