姫蔓蕎麦(ひめつるそば)は、タデ科イヌタデ属の多年草です。「ヒメツルソバ」の名の通り蕎麦(そば)に似ています。近縁種の蔓蕎麦(ツルソバ)は花が白色ですが、姫蔓蕎麦の花はピンク系です。カンイタドリという別名があります。

姫蔓蕎麦 ヒメツルソバ2
姫蔓蕎麦の茎は匍匐性で、土に接した節から発根して広がっていきます。冬なると地上部が一度枯れますが、暖かさとともにまた新芽が成長していきます。

姫蔓蕎麦 ヒメツルソバ3
繁殖力が強いので種子が飛び散って野草化していたりします。姫蔓蕎麦は、暑さや乾燥に強く、市街地にもよく生えています。家の前や石垣にも生え、アスファルトの隙間からどんどん自生していくので、道を歩いているとちらほら発見したりすることがあります。

ヒメツルソバ 姫蔓蕎麦
誰かが育てだした後、種が飛び散る形で半野草花しだすと、その近所の道端でちらほら見かけるようになります。枝分かれしながらマット状に広がっていきます。年々どんどん範囲が広がっていくのかなぁと思ったりもします。
姫蔓蕎麦の花
姫蔓蕎麦(ひめつるそば)の花は小花が球形にまとまった集合花で、金平糖のような形と表現されたりします。基本的にはピンク色です。茎の先から1~3個程度の花序をつけます。

姫蔓蕎麦 ヒメツルソバ 花2
集合花の大きさは約1cm程度、爪くらいのサイズです。花期は4月から5月頃です。開花してしばらくはピンク色系の花をつけていますが時間の経過とともにだんだん色が抜けていって白い花へと変化していきます。

色が抜け白色になりつつある姫蔓蕎麦(ヒメツルソバ)の花
姫蔓蕎麦の葉
姫蔓蕎麦(ひめつるそば)の葉は濃い緑にV字形の茶色の斑紋がつきます、秋になると紅葉していきます。

姫蔓蕎麦 ヒメツルソバ 葉2
葉の緑色の感じや斑紋の感じは温室で見る植物ような色彩といった感じがします。

姫蔓蕎麦 ヒメツルソバ 葉3
学名:Persicaria capitata
葉に刻印された「勝利(Victory)」のサイン
ヒメツルソバの葉をよく観察すると、中心に黒っぽい「V字」の模様が入っていることに気づくでしょう。
この形を見て「Victory(勝利)」の頭文字を連想しますが、あながちその直感は間違っていません。
彼らにとってこの模様は、地面を覆い尽くし、領土を拡大していく「勝利者」としての旗印のようにも見えます。このV字模様は、強い日光に当たるほど濃く鮮明になります。つまり、あの日向(ひなた)でくっきりと浮かび上がる黒い紋章は、彼らが太陽のエネルギーを最大限に吸収し、光合成という戦いに勝ち続けている証拠なのです。
ヒマラヤの岩肌を記憶する「都市の登山家」
なぜ、ヒメツルソバは土のないコンクリートの隙間や、石垣のわずかな割れ目からあふれ出すように咲くことができるのでしょうか。その答えは、彼らの故郷であるヒマラヤ山脈にあります。
彼らの遺伝子には、荒涼とした岩場で生き抜いてきた記憶が深く刻まれています。彼らにとって、日本の都市にあるブロック塀や舗装道路のひび割れは、故郷の岩肌と同じ「足場」に他なりません。肥沃な花壇よりも、むしろ乾いた石の隙間の方を好むその性質は、園芸植物というよりも、過酷な環境を制覇する登山家(アルピニスト)のそれに近いものです。
「金平糖」が仕掛ける甘い罠
地面に散らばった金平糖(こんぺいとう)のような、ピンク色の真ん丸な花。その愛らしい姿に惹かれて庭に植えたなら、あなたはすでに彼らの術中にはまっています。
この可愛らしい花は、春から晩秋、霜が降りる直前まで咲き続けるという、驚異的な持久力を持っています。しかし、その裏には「種をばら撒き続ける」という執念が隠されています。一粒の金平糖の中には無数の種が詰まっており、それらが絶え間なく周囲に拡散されます。「可愛いから」と放置していると、数年後には庭の主役だったはずの他の植物を飲み込み、一面ピンク色の絨毯に変えてしまうでしょう。それは「緑の侵略」ならぬ「ピンクの侵略」です。
冬に燃える「紅葉」のグラデーション
ヒメツルソバの魅力は花だけではありません。寒さにあたると、葉が見事な赤色に紅葉することも見逃せない特徴です。
多くの植物が枯れて茶色くなる冬の庭で、彼らはまるで燃え残った残り火のように、地面を赤く染め上げます。残ったピンクの花と、真っ赤に染まった葉。その鮮烈なコントラストは、寂しくなりがちな冬の地面に、温かみのある情熱的なリズムを与えてくれます。花が終わってもなお、色を変えて地面を彩り続ける。その二段構えの美学こそが、彼らが最強のグラウンドカバーと呼ばれる所以です。
「ソバ」の名を持つが、食せぬ野生
名前に「ソバ(蕎麦)」とつきますが、これはタデ科の植物特有の種子の形がソバに似ていることに由来します。しかし、麺にして食べるあの蕎麦とは違い、ヒメツルソバは食用には適しません。
彼らは人間に食べられるために進化したのではなく、人間に踏まれ、排除されそうになっても、その茎の節々から根を下ろし、ちぎれた断片からでも再生するために進化しました。可憐な名前と姿の下には、決して人間に媚びない、野生の強靭なプライドが隠されているのかもしれません。
タデ科
- タデ科イヌタデ属 犬蓼(イヌタデ) 赤まんま
- タデ科ミューレンベッキア属 ワイヤープランツ
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