ワイヤープランツは、タデ科ミューレンベッキア属の耐寒性常緑つる性木本です。オーストラリア南東部、ニュージーランド原産の植物でワイヤーバイン(wire vine)と呼ばれる他、学名・属名からミューレンベッキア(muehlenbeckia)と呼ばれることもあります。

ワイヤープランツ
紅色から茶色の細い茎(枝やつると表現しても良いでしょう)に小さく細かな葉を密集する形でたくさんつけます。花期は夏で小さな白い花をつけます。
ワイヤープランツの名の通り針金のような茎をしています。

ワイヤープランツの茎(枝、つる)
地を這うように伸びる匍匐性があるため、鉢を吊るしておくと下にでれーんと伸びていきます。
ワイヤープランツの葉
細かな丸い葉をたくさんつけるワイヤープランツ。葉のサイズは0.5mm~2cmくらいです。形状はだいたい丸型で、互生します。
霜がつくと落葉してしまうようですが、基本的には常緑です。

ワイヤープランツ3
斑入り種
なお、ワイヤープランツには斑入り種もいます。

ワイヤープランツ 斑入り種
緑色に白色が加わる斑入り種の他、薄い赤茶色系の色が混じる種もいるようです。
学名:Muehlenbeckia axillaris
creeping wire vine
「針金」を纏(まと)う理由
その名の通り、銅線や針金のように細く硬い茎を持つワイヤープランツ。なぜ、彼らはこのような特異な質感を選んだのでしょうか。彼らの故郷であるニュージーランドの岩場や吹きさらしの環境を想像してみてください。
柔らかな茎では、強風ですぐに折れてしまいます。しかし、金属的な強度としなやかさを併せ持つこの「ワイヤー」ならば、どんな突風も受け流し、岩肌にしがみつき続けることができます。あの無機質な手触りは、過酷な自然環境が生み出した、究極の構造力学の結晶なのです。一見ひ弱に見えますが、その骨格は鋼(はがね)のように強靭です。
「チリチリ」になるのは死ではない
ワイヤープランツを育てていて、うっかり水を切らし、葉がチリチリに乾燥して大量に落ちてしまった経験はありませんか? 多くの人はこれを「枯らしてしまった」と嘆き、鉢を捨ててしまいます。しかし、早まってはいけません。
これは植物全体が死んだのではなく、水不足という緊急事態に対して、水分を蒸発させる「葉」を自ら切り捨てて本体(茎と根)を守ろうとする、トカゲの尻尾切りのような防衛反応である場合が多いのです。 茎が生きていれば、まだ脈はあります。葉がすべて落ちて丸坊主になったとしても、バケツに水を張って鉢ごと沈め、十分な水分を与えれば、数週間後にはその針金の節々から、驚くべき生命力で新しい緑の芽が吹き出してきます。彼らは簡単には死にません。ただ、眠って嵐が過ぎるのを待っているだけなのです。
地植えという名の「パンドラの箱」
鉢植えで楽しむ分には、おしゃれで愛らしいインテリア・グリーンですが、庭の地面に直接植えるときは覚悟が必要です。プロの造園家にとって、ワイヤープランツの地植えは、取扱注意の「劇薬」にも等しい行為です。
一度大地に根を下ろすと、彼らはリミッターが外れたように巨大化し、マット状に地面を覆い尽くし、近くにある低木やフェンスさえも飲み込んでしまいます。その勢いは「可愛い」を超え、「獰猛(どうもう)」ですらあります。鉢の中という窮屈な鳥籠(とりかご)にいるからこそ、あの繊細な美しさが保たれているという事実を忘れてはいけません。
幻の「ガラス細工」を探して
観葉植物として室内で育てていると気づくことは稀ですが、条件が整うと、ワイヤープランツは非常にユニークな花と実をつけます。
花は小さすぎて見過ごされがちですが、その後にできる果実は、まるでガラス細工か氷砂糖のような、半透明のぷるぷるした肉質に包まれています。中心に黒い種が透けて見えるその姿は、人工的なアート作品のようです。もしあなたのワイヤープランツがこの宝石のような実をつけたなら、それは彼らが今の環境に心から満足し、野生の本能を取り戻したという、最高位の幸福のサインです。
絡まり合う「トピアリー」の才能
ワイヤープランツの茎は、互いに絡み合う性質が非常に強いです。この性質を利用して作られるのが、ハート型や動物の形をした「トピアリー」です。
剪定を繰り返すことで、絡まった茎が内部で密な層を作り、外側の葉がその形を浮かび上がらせます。ただ伸び放題にするのではなく、ハサミを入れて形を整えることで、彼らの無秩序なエネルギーを「造形美」へと昇華させる。その制作過程は、暴れ馬を手懐(てなず)けるような楽しさに満ちています。
タデ科
- タデ科イヌタデ属 犬蓼(イヌタデ) 赤まんま
- タデ科イヌタデ属 姫蔓蕎麦(ひめつるそば)
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