キリスト教の臨終の床で

真に活動的な人間は、現在内面的にキリスト教を持っていない。そして一層穏健で、一層観想的な、精神的には中流階級の人間は、整頓されたキリスト教、つまり驚くほど単純化されたキリスト教をかろうじて持つにすぎない。 曙光 92 序

確かニーチェは、本来のキリスト教徒らしいキリスト教徒はイエス・キリストだけであるというようなことをどこかで書いていました。

イエス・キリストを離れたキリスト教は、歪んで歪みつつ資本主義という形で現代にも残っています。ウェーバーのプロ倫なんかでプロテスタンティズムと資本主義の関連性が書かれています(というよりもタイトルがまんまですからね)。

「キリスト教の臨終の床で」ということなので、なんとなく資本主義についてでも触れていきましょう。

ポイントを押さえて行動の一部を掠め取る

資本主義は、資本家のための主義・思想です。資本を持っている者の都合のための理屈であり、一度奪って支配したものを延々と自分たちの子孫に残すための仕組み、という面があります。

そして、それが覆らないために、表向きには横暴な手段には出ません。なぜなら直接支配すると暴力的革命が起こる可能性があるからです。

そこで取られている手段は非常に簡単で「通貨を押さえる」というところで、あとは何かしら制度等々でポイントを押さえて人の行動の一部を掠め取るということをして無限に資本を増やしていくというパターンです。

世の中ではお金が大切だと言われていますが、お金を使って人と人がやり取りすることで、間を掠め取られていくというのが本質です。

仮に物々交換だったり、お金を介さずに互いの役務の価値を相殺していく形であれば、間でパーセンテージを掠め取られることはありません。

貨幣・通貨を軸にした考え

本来経済は、最も効率よく生産性が上がったり、分配されたりというような形で、各人が最も少ない労力で最も多くの幸せを味わえるようにするためのもののはずですが、あまりに複雑になりすぎてそうした本質は無視されています。

だいたい経済が語られるときは貨幣・通貨が軸になって考えられます。

しかしそうした貨幣・通貨があるからこそ資本主義が成り立ち、お金を刷るだけでいい人たちが、さらに人の行動の一部を掠め取りながら無限に資本を手に入れることができるのです。

人の行動の間に入って一部を奪う

日常生活に例えてすごく単純に考えれば、AさんがBさんから10万円で仕事を依頼し、同じようにBさんがAさんに10万円の仕事を依頼した場合、「じゃあお互いに仕事で返そう」ということになれば税金はかかりません。

しかしながら、お金を媒介すると、10万円に対して今なら8000円(その後、10000円)ずつ消費税がかかります。二回のやり取りなので16000円(その後、20000円)は、国に取られていきます。そして、10万円ずつがそれぞれの所得となり、所得額に応じた所得税のパーセンテージが掠め取られていきます。

(互いに消費税の控除をし合うことができる内容であれば相殺できますが、そうでないケースの場合は掠め取られるという感じになります)

つまりお互いにお金を介さずにそれぞれのサービスを提供したなら、誰かに持って行かれる分はありませんが、お金を介すことで何もしていない人たちが幾許かのお金を取っていくのです。

これが、資本主義の本質です。

たったひとつの問題があるとすれば、相手を信用できるかどうかというところです。

それを解消するのがお金、という形になります。

つまり、お金というものがないとやり取りしにくくしつつ、お金の発行に関する権利はもちつつ、一方的に制度を設けて人の行動の間に入って、その一部を奪い取っていく、ということです。

それが資本主義です。

この本質に近い構造、この中の一部の構造を持った企業は大きく成長してます。

「制度を設けて人の行動の間に入って、その一部を奪い取っていく」

ということです。

そう言えば、この点は「倫理的世界秩序の妄想」で触れていましたね。

罪の意識は資本主義的洗脳

個人的なやりとりも脱税的に見え、無条件に罪だと思うことがあるとすれば、それは資本主義に洗脳されています。

といっても国家も中継地点です。元凶は時間の基準となっているところあたりというのが本当のところでしょう。

仮に人の行動の半分がお金を介さない個人的な物々交換になれば、今の社会がどのようになるのか、ということを考えると面白かったりします。

といっても、社会全体がどうのこうのより、自分がどうあるかというところだけで十分です。社会など虚像にしかすぎないのですから。

キリスト教の臨終の床で 曙光 92

Category:曙光(ニーチェ) / 第一書

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