
ブンゼン-ロスコーの法則(Bunsen-Roscoe law)とは、光化学変化に関する法則で、「光の強度と呈示時間とは相補的な関係にある」という法則である。感光物質に及ぼす光の影響はその光の強度「I」と呈示時間「t」の積「I×t」となる。

ブンゼン-ロスコーの法則(Bunsen-Roscoe law)
ある限定された範囲で視覚系の感光物質にも、これと類似した関係が成り立つ。これが定式化されたのがブロックの法則である。
ブロックの法則
ブロックの法則(Bloch’s law)とは、光覚閾の時間的加重に関する法則で、呈示時間の増加に比例して光覚閾は低下すると予測する法則。

ブロックの法則(Bloch’s law)
光覚閾においては、ある一定限度までは、光覚閾は呈示時間と相補的な関係を示すが、呈示時間の増加に比例して光覚閾は低下するというのがブロックの法則で、数学的には、刺激輝度「L」と呈示時間「t」の間に、「L×t=一定」という関係で記述される。また、このブロックの法則は、閾値よりも上の一定の明るさの光についても成り立つ。
ただ、条件によってはブロックの法則予測を超える「ブローカ-ズルツァー効果」というものが示される場合がある。
光化学的相反則から視覚の時間的積分への展開
光という物理的エネルギーが、いかにして化学反応や神経活動へと変換されるのか。その定量的関係を記述する試みは、写真化学の領域から始まり、やがて人間の視覚情報処理の核心に迫る生理学的法則へと昇華された。
ブンゼン・ロスコ―の法則と相反性の原理
19世紀半ば、化学者ロベルト・ブンゼン氏とヘンリー・ロスコ―氏は、光化学反応における基礎的な法則を確立した。彼らは、反応の生成量が「光の強度(Intensity)」と「照射時間(Time)」の積に比例することを発見した。すなわち、弱い光でも長時間照射すれば、強い光を短時間照射した場合と同じだけの化学変化が得られるという「相反則(Reciprocity Law)」である。
この発見は当初、写真乳剤の感光特性を説明するためのものであった。しかし、この物理化学的な原則は、生物の網膜における光受容プロセスにも驚くほど正確に適用できることが後に判明する。物質の世界と知覚の世界をつなぐこの普遍性は、エネルギー保存の法則が感覚システムにおいても有効であることを示唆する象徴的な事例である。
ブロックの法則と完全加算の臨界
視覚心理物理学において、この相反則を人間の閾値知覚に適用したのが、1885年のAM・ブロックによる「ブロックの法則」である。彼は、光の提示時間が一定の範囲内(臨界持続時間)であれば、光の強度と時間の積は一定になることを示した。つまり、10ミリ秒光る強い光と、100ミリ秒光るその10分の1の強さの光は、全く同じ明るさとして知覚される。
しかし、この「完全加算」が成立するのは、およそ100ミリ秒(0.1秒)程度までという厳密な限界が存在する。この「臨界持続時間(Critical Duration)」を超えると、時間の延長はもはや明るさの増大には寄与しなくなる。この限界点の存在は、視覚系が無限に光を溜め込むのではなく、一定の時間窓(タイムウィンドウ)ごとに情報を区切り、リセットしながら処理していることを意味している。
視細胞レベルにおける光子の時間的積分
現代の神経生理学の視点では、ブロックの法則は網膜の光受容体(ロッドおよびコーン)における「時間的積分機能」として解釈されている。視細胞は、到来する光子(フォトン)を即座に信号化するのではなく、ごく短い時間枠の中で受け取った光子の総数をカウントし、それを一つの神経インパルスとして出力する。
この積分機能のおかげで、夜間のような極めて光量の少ない環境下でも、生物は微弱な光子をかき集めて「光」として検知することが可能となる。最新の研究では、この積分時間が環境の明るさに応じて動的に変化することも確認されており、暗所では積分時間を長くして感度を稼ぎ、明所では短くして時間分解能を高めるという、高度な適応制御が行われていることが明らかになっている。
高速ディスプレイ技術とフリッカー知覚の現代的課題
現代の映像技術において、ブロックの法則とその限界値は極めて実用的な意味を持っている。LEDのパルス幅変調(PWM調光)や、VRヘッドセットにおける黒挿入技術は、すべてこの視覚の時間的加算特性を利用、あるいは回避するように設計されている。
光の点滅が融合して定常光に見える「臨界融合周波数(CFF)」とブロックの法則は表裏一体の関係にある。最新のディスプレイ工学では、人間の知覚限界ギリギリの超高速点滅を用いることで、モーションブラー(残像)を低減させつつ、必要な輝度を確保するという繊細なチューニングが求められている。古典的な法則は、最先端の視覚体験を支える工学的基盤として、今なおその価値を失っていない。
ブンゼンロスコーの法則(Bunsen Roscoe law)
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