営利という字の並びはよく見ますが、栄利という字の並びはそれほど出くわすものではありません。注釈には栄達利益と解説されていました。つまり、高い地位になることや儲けることといったところでしょう。
本来、地位はその人の役割に応じたものであるべきであり、利益についても人の役に立った分だけもたらされるものであるべきです。しかしながら、世の中には、一見で合理的そうでありながら、その実、実際の地位のあり方や収入のあり方を狂わせる仕組みがたくさんあります。
そうしたものの代表例は、お役人の出世のあり方でしょう。
お役所や半分お役所のような団体には、「なぜこんな人がこの役職なのだろう?」と思わざるを得ないような人がよくいたりします。
その答えは簡単で、体育会系思想や共産・社会主義的な発想に基づく(労働者側の生活の安定というような面ですね)「年功」という仕組みがフルで活用され、実際の実績や人望よりもテストで出世できるようになっているからです。
「年功」と「昇進試験」の高い比重
もちろん、勤続年数や試験による昇進といったものを完全に不採用とする必要はありません。確かにある程度はそれが能力に比例する部分があるからです。しかし、人と人が関わる社会においては、論理半分、コミュニケーション半分といったところなので、本来は「半分くらい採用しておく」くらいがちょうど良い、といったところとなっています。
そんな中、かなり高い比重で年功と昇進試験が重視されているというところから、「なぜこんな人がこんな役職につき、こんな権限を持っているのだろう?」という事が起こったりしています。
まあ元々官僚制度というものの発端が脳筋体育会系の教祖孔子がもたらした仕組みなので致し方ありません。
それが自由競争によって最適化されるということも起こりませんし、それが安定を求める人達といえば聞こえがいいですが、実力に不安のある人達にとってはありがたい仕組みとなっているわけです。
もちろん世の中にはフリーライダーを防ぐために仕方ない分野、市場経済・自由競争原理を持ち込んではいけないような分野があります。
しかしながら世の中を見渡すと、そうした致し方なさはそれほど感じないような分野においても脳筋構造が働いていたりします。
住民票は出せません
そういえば以前、家族が住民票を取りに行くということなので、某区役所に行ったときのことです。
他のエリアではどうなのか知りませんが、京都市内においては他の区に住民登録されていても住民票が出せるので、通りがかりに他の区役所に寄りました。
僕は外で待っていたのですが、なかなか終わりません。
さんざん待たされた挙げ句「この区と関わりがないのであればでせません」と言われたそうです。
「は?」
ということになり、京都いつでもコールに電話してみました。
「京都市内であれば住民登録されている区役所以外の区役所でも住民票を発行できると思っていたのですが、できないと言われました。実際にはできないですか?」
と聞くと
コールセンターの方のほうが
「は?」
という感じになられました。
「いえ…住民票の発行は可能ですが…どこの区役所ですか?」
「〇〇区役所です。今、前にいるんですが…」
「おかしいですね…」
というやり取りとなりました。
再度、区役所に入り、もう一度問いただしてみるとお偉いさんが謝りながら出てきました。
お役人は何をどう思って何を根拠に「できない」と言ったのか?
で、結局住民票は発行してもらえたのですが、「できない」といったお役人は何をどう思って何を根拠に「できない」と言ったのでしょうか。
最初は、用紙記入台付近にいる「ご相談承ります」役のパートの方に聞いたそうですが、一応確認のためその方は窓口の正職員に聞きに行ってくれたそうです。
すると「できない」と答えたそうです。
「他の区に登録されてる場合、この区役所では住民票は出せない」ということでした。
しかしながら本来は京都市内であれば居住区以外の区役所でも住民票は発行できるはずです。
間違いを自信満々に答えるということは「プロ意識がない」どころの話ではない
行政手続きに関して素人の僕ですら知っているようなことについて、知らないどころか間違いを自信満々に答えるなど、プロ意識がないどころの話ではありません。
それでも「安定」して生きていけるというのはいいですが、「コンパで公務員がモテる」と一元化して語るなど笑わせるなということです。
再度窓口に行ったから良かったですが、電話相談もせず帰っていたらいわば泣き寝入りのような形になります。
でも出世にも給与にも響きません。そうした空間に浸かっている人間に魅力があるとは思えません。
ただ、本当の地元の区役所においてはそんなことは感じたことはありませんし、すべての人がそうであるという認識はありません。
しかしながら、制度には人を狂わせる要素があるとは思っています。先の例は区役所レベルなのでまだそれほどといった感じですが、制度上先のような人でも「勤続年数やテストで権限を持つようになる」ということは、一種の恐ろしさがあります。
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栄利にのみ走りて士家の風なきは。
「住民票は出せません」
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