人はどこにその家を建てるべきか

現在、賃貸物件を探しながらもなかなか決まらず不動産屋さん泣かせの日々を送っています。家を買ってもいいのですが、別に買う気も特にありません。

お金をすぐに借りてしまう人の習性として、ある程度の所得があると見込んだ場合すぐに不動産を購入しようとしますが、買った瞬間に買った価格では到底売れないようなものです。

すぐに賃貸の家賃と比較して、家賃を払うくらいならローンを払うという考えに飛びつきますが、不動産の購入はハイリスクとまではいかなくてもそこそこのリスクです。

単身赴任

今ではどうかわかりませんが、家を買ってしばらくすると単身赴任を命ぜられるということがあります。会社に黙っておけばわからないだろうと思っても、住宅ローン控除の事を総務などに言ってしまえば、すぐにバレます。

せっかく家を買ったのに、買った本人が数年単身赴任ということはよくあります。住宅ローンがあると、すぐに会社をやめることは無いだろうという足元を見られての転勤命令です。あまり読んだことはありませんが、島耕作などでありそうな話です。

というより、実際に友人の一人が大阪府北部に家を買った瞬間に、九州に転勤になりました。中小零細ならまだしも、大企業の場合はよくあります。一般職だからと思っていても、「出世だ」ということで、地域総合職のような職種になって、例えば京都支店から和歌山支店に異動だということも十分にありえます。

隣人が変人

またすぐに動けないということはリスクです。賃貸ならば隣の住人とモメても比較的低予算で転居できますが、新築分譲などだと、得体の知れない人が隣人になることがあります。

昼間にちょこっと見に行っただけではそんなことはわかりません。夜に外に出て叫びながら水を撒き散らす痴呆の高齢者などがいる可能性もあります。

そういったわけで、不動産購入か賃貸かを単純に価格では決められない可能性があります。

一生で支払う金額を考える

結局、家族構成や生活の変化によって、必要となる間取りは変わってきます。家族が多いと言っても、十年、二十年経てば誰かは亡くなり、また生まれ、独立して出て行くなど、様々な形に変化するでしょう。

平均して80年、30歳だとあと50年くらい生きるのに、その50年間変化が無いはずがありません。

賃貸ならばそういった時に柔軟に対応することができます。

と言っても、友人の一人は間取りの広いそこそこの部屋を特優賃で借りたものの、離婚して結局無駄にしばらく大きい部屋に住んでいたということがありました。人生などそれくらい不安定なものです。

賃貸だったから損失は少なかったものの、これが分譲マンションならばすごい損失です。

地価の変動

また、地価というものは常に変動します。そして長期的に見れば、下がる要因でいっぱいです。

人口が減少すればそれだけ住む場所の需要も減ります。マンションが高層化していけば、住める場所の数、面積は増えます。

単純な需給で考えても地価は下がる要因でいっぱいです。かつては人口増加や核家族化、一人暮らしなどが増えて需要の方が高まる要因がたくさんありましたが、そうしたものは頭打ちになり、一方で下がる要因の方が増えてきました。

ということで、資産価値としては下がる要因がたくさんあります。場所にもよりますが、せめて土地の分くらいは買ったままで売れると安易に考えない方が賢明です。

単価の違い

さて、現金預金というものは最強の代替性があります。

何にでも使えるものです。

スーパーの値引きの数十円については逐一考えている人でも単位が一万倍を超えると盲目になったりします。500円のものの10%は50円ですが、500万円の10%は50万円、5000万円の10%は500万円です。

5000万円のものを10%割得で買うことができれば、スーパーの50円など雀の涙です。

1万回くらい無視しても大丈夫になります。

しかし、そういった単価の大きい物を購入する際は、なぜか考えることがストレスになり、あまりよく考えません。

そうした損失が積み重なると結構な金額になりますし、もらえる方、払う方それぞれの金利を複利計算で考えれば、想像しているよりも大きな損失になったりしてしまいます(丼勘定で長丁場)。

動きたいとき動けるということ

ローンも結局お金を借りることには変わりありません。

住宅ローンの場合は、万が一死んでしまった場合は団信こと団体信用生命保険によって何とかなりますが、団信の医療特約などまで頭にあるのか疑問です。

仮に医療特約で、医療費やローンの原資はある程度はまかなえても、たいてい病休などで長期休暇になると、役職を降ろされたりします。

すると、考えていた目論見は外れることになります。支払いが滞るとまではいかないかもしれませんが、余裕はなくなっていきます。

実際に年功賃金、終身雇用などは既にあてにならないどころか、そんな恩恵を受けた世代はほんの少しです。

自分の就業不能だけでなく、両親など家族の介護や配偶者・子供の病気や事故などなど、急なアクシデントも他にもたくさんあるでしょう。

そういったケースが起こっても、十分に余裕なくらいのキャッシュフローなのかということが問題になります。

そういった場合は、負債があっても現金があるかどうかということが最大のポイントになります。キャッシュフローだけ意識して、バランスシートを膨らませてちょっとずつ返しながらご臨終でも構わないといえば構わないことです。

現金さえあれば、何ら焦ることはないのですが、おそらく家を一括とか10年ローンくらいで買える人くらいでないと、そこまでの余裕はないでしょう。

現金預金を含めて、流動性の高い金融資産をたくさん持っている場合は、舵取りが楽になります。

まあ簡単にいえば明日から仕事を辞めても問題ありません。

辞めたいのに辞められない、そんな原因は一つでも少ないほうがいいでしょう。

辞めたい時に辞められる、動きたいとき動ける、できるだけ憂いのない状態が一番いい状態です。もちろん莫大な資金があれば、家を購入しようが、嫌なら損失が出ても売って、また違うものを買えばいいだけですから問題ありません。

人はどこにその家を建てるべきか 曙光 473

Category:曙光(ニーチェ) / 第五書

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