ジャーマンカモミール(カモマイル)

ジャーマンカモミール(カモマイル)

ジャーマンカモミール(カモマイル)は、キク科シカギク属(カミツレ属、マトリカリア属)の耐寒性一年草です。薬用植物として用いられる他、カモミールティーなどの利用も盛んです。和名として加密列(カミツレ)、加密爾列(カミルレ)と呼ばれる他、フランス語読みでカモミーユと呼ばれることもあります。ここではジャーマンカモミール(German chamomile)について触れていきますが、カモミール(カモマイル)の名は、キク科カマエメルム属のローマンカモミール(ローマンカモマイル)など他の植物の名称として用いられたりします。

ジャーマンカモミール(カモマイル)2

ジャーマンカモミール(カモマイル)2

ジャーマンカモミールの花

ジャーマンカモミール(カモマイル)

ジャーマンカモミール(カモマイル)

ジャーマンカモミール(カモマイル)の花は、キク科らしい真ん中が黄色い白の花です。開花が進むにつれ、白い舌状花が垂れ下がり黄色い部分が盛り上がりずるむけ感が増していきます。りんご系の甘い香りを放ちます。

学名:Matricaria recutita

学名に含まれる「マトリカリア」とナツシロギク(フィーバーフュー)

ジャーマンカモミールの学名はMatricaria recutitaですが、似たような花を持つマトリカリアという近縁種の植物がいます。

このマトリカリアは、カモミールと同じキク科ですが、キク亜科で属は ヨモギギク属(タナセツム属)に分類されており、学名は「Tanacetum parthenium」です。ナツシロギクやフィーバーフューと呼ばれたりします。

かつては、ジャーマンカモミールと同じマトリカリア属(シカギク属、カミツレ属)に分類されていたため、園芸においてはマトリカリアと表記されることが多いという感じのようです。

錬金術が生み出す「青」の神秘

この可憐な白い花の中に、鮮やかな「青」が眠っていることをご存知でしょうか。ジャーマンカモミールから抽出される精油(エッセンシャルオイル)は、インクのように深い青色をしています。これは「アズレン(カマズレン)」という成分によるものですが、興味深いことに、咲いている花の中にこの青い成分は存在しません。

花に含まれる無色の「マトリシン」という成分が、蒸留という熱のプロセスを経ることで化学変化を起こし、美しい青色のアズレンへと生まれ変わります。熱という試練を経て初めて本来の色と薬効を現すその様は、まるで中世の錬金術のようです。この青色には優れた抗炎症作用があり、荒れた肌や傷ついた心を鎮める力として、古くから珍重されてきました。

最高の香りを捕まえる「花弁の反り返り」

収穫のタイミングを見極める時、花が最も美しく咲き誇っている瞬間を選びません。実は、白い花びらが水平に開いたその時ではなく、少し盛りを過ぎて、花びらが地面に向かって「反り返った」時こそが、収穫のベストタイミングといえます。

花びらが下がり、中心の黄色い筒状花(管状花)がぷっくりと盛り上がった円錐形になった瞬間。この時こそが、薬効成分である精油の含有量がピークに達する時です。見た目の美しさよりも、内包するエネルギーが満ちるのをじっと待つ。栽培とは、こうした自然の呼吸に合わせる作業の連続です。

「植物のお医者さん」という異名

カモミールは人間を癒やすだけではありません。隣に植えられた他の植物をも元気にする力があると言われており、古くから「植物のお医者さん(コンパニオンプランツ)」として知られています。

弱った植物の近くにカモミールを植えると、その植物が活力を取り戻したり、あるいはキャベツや玉ねぎの風味を良くしたりする効果が報告されています。自らの根から有効な成分を土中に分泌しているのか、あるいはその香りが益虫を呼び寄せるのか。周囲に良い影響を与え、共に生きるものをエンパワーメントするその在り方は、理想的なリーダーシップの姿にも重なるかもしれません。

「大地のリンゴ」が意味するグラウンディング

カモミール(Chamomile)という名は、ギリシャ語の「カマイメロン(カマイ=大地の、メロン=リンゴ)」に由来します。踏みつけられそうなほど小さくても、踏まれるたびにリンゴのような甘い芳香を放つことから名付けられました。

ジャーマンカモミールは一年草であり、ローマン種のように地面を這うというよりは、空に向かって伸びていきますが、その香りの質はどこか土の温かさを感じさせます。不安で心が浮ついてしまった時、この香りを嗅ぐとほっとするのは、「大地のリンゴ」という名の通り、私たちを地面(現実)へと優しく引き戻し、グラウンディングさせてくれる作用があるからでしょう。

学名「マトリカリア」に宿る母性

ジャーマンカモミールの学名は Matricaria chamomilla ですが、この Matricaria はラテン語の「子宮(matrix)」に由来すると考えられています。古くから婦人病の薬として、あるいは月経痛を和らげる「マザーハーブ(母の薬草)」として親しまれてきました。

その優しく包み込むような作用は、鋭い痛みやヒステリックな感情をなだめ、子供が母親の腕の中で眠るような安心感を与えます。現代社会において、私たちが無意識に求めているのは、こうした無条件の受容と安らぎなのかもしれません。このハーブティーを飲むという行為は、自分自身の中に眠る「母なるもの」との対話の時間ともいえるでしょう。

キク科

Category:植物

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