アリッサム

アリッサム(黄花アリッサム、アウリニア・サクサティリス)

アリッサム(Alyssum)は、アブラナ科アリッサム属/アウリニア属の耐寒性多年草または一年草です。春の訪れとともに、石垣や斜面から溢れ出すように咲き誇る、鮮烈な黄金の花々。一般的に「アリッサム」の名で親しまれていますが、その実体は、一年草のスイートアリッサムとは一線を画す、強靭な宿根草「アウリニア・サクサティリス」です。「アリッサム」の名称で異なる種の植物が園芸品種として売られていたりもするようですが、香りのある十字形の黄色の明るい小花をたくさん咲かせるアリッサムが本来のアリッサムということのようです。黄花アリッサムと呼ばれたりもします。

アリッサム2

アリッサム2

春に茎を立ち上がらせるサクサティレ種のアウリニア・サクサティリス(学名:Aurinia saxatilis)と茎が蔓状に伸びるモンタナム種のアリッサム・モンタナム(学名:Alyssum montanum)などがあります。

アリッサム

アリッサム

アウリニア・サクサティリス(Aurinia saxatilis)は、黄花アリッサムや宿根アリッサムと呼ばれたりします。

アリッサムの花

アリッサム 花

アリッサム 花

黄色の非常に小さな花がたくさん咲きます。

アリッサム 花2

アリッサム 花2

アリッサムの葉

アリッサム 葉

アリッサム 葉

アリッサムの葉はややシルバー掛かっています。

サクサティレ種「アウリニア・サクサティリス」学名:Aurinia saxatilis

モンタナム種「アリッサム・モンタナム」学名:Alyssum montanum

ありっさむ

「岩」を愛する黄金の魂

かつてはアリッサム属に含まれていましたが、現在はオーリニア属へと分類が変更されたこの植物。学名の種小名「サクサティリス(saxatilis)」が、ラテン語で「岩場に生える」という意味であることをご存知でしょうか。

彼らの故郷は、中南部ヨーロッパの乾燥した岩肌や、石灰質の荒地です。肥沃でふカフカの黒土よりも、石ころだらけの痩せた斜面や、石垣の隙間のような場所でこそ、彼らは真の生命力を爆発させます。水も肥料もほとんど与えられず、ただ太陽と岩の温もりだけで生きる。そのストイックな生き様は、園芸植物というよりは、高山植物の孤高さを感じさせます。

「草」を卒業し、「木」になる

アウリニア・サクサティリスを一年草だと思って育てていると、良い意味で裏切られることになります。彼らは冬を越え、何年も生き続ける宿根草(しゅっこんそう)ですが、年数を経るごとに、その姿は「草」から「木」へと変貌していきます。

株元の茎は茶色く硬くなり、樹皮のような質感を帯びてきます。これを植物学的には「亜低木(あていぼく)」と呼びますが、この木質化した部分こそが、彼らが過酷な環境を生き抜いてきた年輪であり、勲章です。春、ゴツゴツとした老木のような枝から、瑞々しい銀灰色の葉と鮮烈な黄色の花が吹き出すコントラスト。それは、時間の経過が生み出す「盆栽」にも通じる、渋みのある美しさです。

視覚を奪う「色彩の暴力」

春、アウリニアが一斉に開花した時の光景は、単なる「黄色い花」という言葉では片付けられません。それは、目に焼き付くような、圧倒的な彩度の「黄金の光」そのものです。

彼らは一輪一輪の繊細さを見せるのではなく、数千、数万の花が集まって一つの巨大な発光体となることで、遠くの虫たちに存在をアピールします。その鮮やかさは、隣に植えられた他の花の色を霞ませてしまうほど強烈です。プロフェッショナルは、この暴力的とも言える黄色を御するために、あえて補色関係にある「青紫色のムスカリ」や「紫のパンジー」を足元に配置します。

互いの色を極限まで高め合うこの組み合わせこそが、春の庭における黄金比であり、アウリニアの輝きを最もエレガントに制御する方法です。

湿気という「毒」との戦い

日本の園芸家にとって、アウリニアを育てる上での最大の敵は、寒さではなく「湿気」です。乾燥した岩場出身の彼らにとって、日本の梅雨や秋の長雨は、窒息にも等しい苦しみです。

夏場、株が蒸れて下葉が黒く溶けてしまうのは、彼らが「溺れて」いるサインです。これを防ぐためには、風通しを良くするための透かし剪定(せんてい)と、水はけの良い土作りが不可欠です。彼らを愛するなら、水をやる優しさよりも、水を断つ厳しさを持ってください。「石の上にも三年」と言いますが、アウリニアにとっては「石の上こそが安住の地」なのです。

銀色の葉が語る「防御壁」

花のない時期、アウリニアの葉が美しい銀灰色(シルバーリーフ)をしているのには、物理的な理由があります。

葉の表面を覆う微細な毛が、強い日光を反射して葉の温度上昇を防ぎ、同時に体内の水分の蒸発を抑えているのです。あの銀色は、ファッションではなく、乾燥と熱から身を守るための高性能な断熱シールドです。花が終わった後も、このシルバーの葉は庭に静寂と涼やかさをもたらしてくれます。黄金の情熱と、銀色の冷静。この二つの顔を持つことこそが、アウリニア・サクサティリスの尽きせぬ魅力なのです。

アブラナ科

Category:植物

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