依頼主側の意図

自分の専門分野だけについて語り、依頼主側の意図を無視するような人によく出くわします。インターネットの普及により情報がパーソナライズされていった結果なのかもしれません。

これは商いに限ったことではありません。いたるところで「話が通じない」ということが起こっています。

専門性に特化していることは良いことのように見えますが、それによって盲点が出てきます。自分の専門分野以外のことは見えなかったり、問題を抽象化すること自体をせずに問題を「関係なし」とバッサリ切り捨てたりするようになってきます。

経歴が長くなったり専門性に特化してくると相手の意図や気持ちがどんどん見えなくなる

また職業人としての経歴が長くなると、依頼主側の意図、気持ちがどんどん見えなくなってきます。

一番わかり易いのは、医者と患者の関係ではないでしょうか。

経歴が長くなったり、専門性に特化していったりすればするほど、「患者の気持ち」は見えにくくなります。

実際問題として、患者は何かしらの「苦」を取り除きたいという意図がありますが、医者としては自分とは関係のない分野の話となると、「知りません」とバッサリ切り捨てることも起こってきます。

本来、病に関して言えば、「苦がなくなればそれで良い」ということになりますし、企業で言えば何かしらの問題があっても「結果的に収益が上がればそれで良い」というような一段抽象化された意図があります。

少し上の視点から俯瞰してみると、解決策は無数にある場合があります。

そうした中、業界を問わず効率性のために分業化されているので、自分の扱う具体的分野以外のところの話になると、「知りません」「わかりません」だけで終わらせようとしたりします。

行政の電話相談窓口等々でもありがちです。「自分たちの部署が取り扱うものか否か」だけを見て、そうでない場合は切り捨てるというようなこともありますし、背景から先に話すと「ちょっと違いそうだ」と思うと話を最後まで聞かずに電話を切ろうとします。

これは役所よりも、役所が外部委託している電話相談窓口でありがちです。役所の場合はどこに連絡をすればいいのかを教えてくれたりもしますが、委託業者の場合は「わかりません」で終わることが多いというのが実情です(早口のおばさんに多いですね)。

つまり、目の前にやってきた人が何を意図をしているか、何を解決しようとしているのかを見ようともしないというような感じですね。

市場の原理が働く空間であればある程度最適化される

これが市場の原理が働く空間であればある程度最適化されていきます。端的には、自然淘汰されていくということです。

しかし、そういう原理が働きにくい空間、あまり市場の原理を持ち込んではいけない空間というものがあります。

医療や行政、教育などはその分野になると考えられます。

しかしながら市場の原理が最適化してくるような構造を完全に排除すると、その空間の人達は「井の中の蛙」となり、本当の目的は達成されにくくなります。

病院であれば、体の具合が悪い人が来ているのに、「予約」であるにも関わらず平気で1時間待たせるような環境になるということです。

これも特定の病を治すというものではなく、「少しでも健康になってもらう」や「苦を取り除く」という少し抽象化したところから考えると、工夫が必要な面であるところはすぐに見えます。完全に意向に沿うものでなくても、改善に目を向けることはできます。

どのような分野でも依頼主側の意図や希望というものは、具体的に提示されたある特定のものだけではなく、さらにその奥に何かしらの意図や希望が潜んでいます。

それが見えるようになると、全く異なる解決策が見えてくるかもしれません。

商いでそれができるようになると、相手の意図を含めた上で、さらにより良いものを提示することができます。

行き詰まりを打破する

物事を抽象化して考えることは、時に行き詰まりを解消します。

今見えている解決策はコスト等の問題で実現が難しく、かといって解消しないままでいるということはジリ貧後の破綻を意味するというような感じで行き詰まっているような状況の時に、それを打破するものとなります。

また本質的な解決策ではないものに手を出して誤魔化していたものが根本から解決するということもよくあります。

そうした行き詰まりの解消にはコツがあります。物事を抽象化するだけでは不完全です。自分の考えを悪く思う必要もありませんが、自分の考えを固定化するということは避けなければなりません。

「自分は変わりたくないんだ、世界が変われ」と言っても、自分の世界を構成しているのは自分です。

その自分は何によって構成されているかというと、自分以外との関係です。それは物理的実体と認識しているものもあれば、記憶を含めた情報である場合もあります。

不調の本当の理由

例えば、近年よく中高年向けの健康食品の広告を見かけます。それだけよく売れているのでしょう。

具体的にどこかの場所が不調であるというのはわかりますが、「元気でいること」が本当の意図であるわけです。しかしその裏には、実は「自分自身の考えは変えたくないが、お金は払うので不調を取り除いて欲しい」という意図もあります。

さてここから極端に考えていきます。

なぜ不調なのか。

おもしろくないからです。

何かに怒りを持っているからです。

というようなことが本当の理由であることがあります。

解決策は健康食品を買って摂ることではないかもしれません。

夫婦仲が悪いということが関係性における本当の理由であり、他責思考に陥っていることが自分自身の内にある本当の理由であるにも関わらず、その部分を見ないと慢性的に緊張が続いてどこかに不調が出るということがあります。

飛躍した解決策

そこで飛躍した解決策をいきなり提示すると次にような感じになります。

「腰が痛いんです」

という訴えに対して

飛躍した答えを言ってしまうと

「あなた自身を完成させ、配偶者を導きなさい」

というのが本当の答えである場合もあるわけです。

夫婦が同じ空間にいることが緊張をもたらし、それが腰に出ていることがあります。

では腰にいいものを摂ったり、ストレッチしたりすると治るのかというと、その場は多少はマシになりますが、根本の緊張は続いているのでまた痛みが出てくるわけです。

では仮説として腰の痛みを夫婦仲の問題から起こる緊張と考えた上で、夫婦仲の問題をどうするのかを考え直してみましょう。

狭い視野で考えると、「離婚」とか「周りを巻き込んで説教して相手を従わせる」とかそういうレベルのことしか考えられません。

とにかく「自分は固定で」という狭い見解です。ただ、それはそれで一つの正当性があります。なので考え方のカードとして保持しておく分には構いません。

「腰が痛いんです」

という訴えに対して話を聞くと、

「共感してもらえた」ということで気が和らいで少し痛みがマシになることがあります。

それはそれで苦を取り除くという面ではいいですが、行き詰まり感は否めません。

根拠無き「機嫌が良い状態」をキープする

そうした時は、とにかく最高の状況、体感をイメージして、現実を無視しておきます。最初慣れませんが、どんどん慣れてきます。

すると機嫌が良くなります。

相手は変わりません。

なかなか変わりませんが、意味不明の機嫌の良さに相手は違和感を感じ始めます。

最初は、色々な疑いをかけられるかもしれません。他に好きな人ができたのではないかとか、宗教にハマったのではないかとか、気が狂ったのではないか、というような疑いですね。

それでも根拠無しで機嫌が良い状態が続くと、相手は「疑って、嫌がらせをして、いつも通りの不仲になろう」という気もなくなってきます。

すると相手も変わるか、縁が切れます。

しかし、既に現実に関係なく機嫌が良いので、変わってくれなくても縁が切れなくても関係がありません。

これを擬似的な空間で無理やりやっているのが宗教です。

なので、「いつまでも腰が痛い、医者が頼りにならない」となると宗教に走ってしまうのです。

ただ、たいていの宗教は資産を根こそぎ持っていこうとしたり、無駄な執著を生んだりします。なので、そちらに行くというのも間違いです。

なぜならそんな空間にいかなくても同様の機能をもたらすことはできるからです。

それと「依頼主側の意図」がどう関係があるのかと思う人もいるかもしれません。

しかし、この構造はすべての事業にも大きく関係しています。

とにかく相手は現状が不満で、それを解消したいという意図を持っています。

それを目の前の具体的なサービスや商品が「その問題を解決すること」にハマるかハマらないかという浅い考えをしていると、市場の原理が働くところではあっという間に行き詰まりになるということになります。

また、これだけ変な宗教がポコポコといっぱい出てきたりするのは、医療等のあり方にも問題があるということです。すべてのケースがそうであるというわけではありませんが、そういうケースもよくあると考えます。

「医療と宗教は関係ないだろう」と思うのは、抽象思考能力が足りません。

「人の苦を取り除くことなど考えているような気がしない」ということが見抜かれて絶望されているからこそ、他の道に行ってしまうということにもなりますし、「拝んだら治った」というようなことを起こしてしまうという感じになります。

「そんな事はありえない」というのも具体性に縛られています。

「あなたが見えていて操作可能な情報の空間では、そんな事はありえない」というだけです。

Category:miscellaneous notes 雑記

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