蔓日々草(つるにちにちそう)は、キョウチクトウ科ツルニチニチソウ属(ビンカ属)の常緑蔓性多年草または亜低木です。

蔓日々草 ツルニチニチソウ2
ツルニチニチソウの学名は「Vinca major」ですが、小型種のヒメツルニチニチソウの学名は「Vinca minor」です。メジャーとマイナーという区別が長調と短調のようであり、少し楽典的で面白かったりします。

蔓日々草 ツルニチニチソウ3
蔓日々草(つるにちにちそう)は、耐寒性、耐陰性、耐乾性に優れる生命力が非常に強い植物です。

蔓日々草 ツルニチニチソウ4
茎が地表を這う形で伸び、節から根を下ろして広がります。

蔓日々草 ツルニチニチソウ
なお、蔓日々草(つるにちにちそう)はキョウチクトウ科であるものの、その花の形状からか「ツルギキョウ」と呼ばれることがあるようです。しかしながら、ツルギキョウという本家のキキョウ科の植物がいるため呼称としては適していません。
蔓日々草の花
花期は春から初夏で、若干扇風機のプロペラ系の形をした花を咲かせます。

蔓日々草 ツルニチニチソウ 花2
色は薄い紫です。

蔓日々草 ツルニチニチソウ 花3
蔓日々草(つるにちにちそう)の花は一応筒状なのですが、筒の先端が裂けて開いているため、5弁花のように見えます。

蔓日々草 ツルニチニチソウ 花4
花の根元が五角形から星形の筒状なので、花の真ん中も五角形から星形になっています。
白色の花
蔓日々草(つるにちにちそう)はたくさんの花をつけますが、ひとつだけ白色の花を見つけました。花が咲いてから色が抜けるのか、この花だけ変異したものなのかどうなのかはわかりません。単に変種的に色素が無いという感じなのでしょうか。
蔓日々草の蕾

蔓日々草 ツルニチニチソウ 蕾
ちなみに白色の花の近くにあった蔓日々草の蕾はこんな感じです。若干ドリル状で凝縮されて紫が濃い感じになっています。
蔓日々草の葉
蔓日々草(つるにちにちそう)の葉はこんな感じです。方向的に交互に生える感じですね。なお、白や黄色の斑入り品種もいるようです。

蔓日々草 ツルニチニチソウ 葉2
学名:Vinca major
花の中心に封印された「逆五角形」
風車(かざぐるま)のような青紫色の花弁に目を奪われがちですが、プロフェッショナルが注目するのは、その中心にある「穴」の形状です。近づいてよく観察してみてください。そこには、完璧な「五角形」が描かれています。
しかし、それはただの五角形ではありません。花弁の広がりとは逆の角度で刻まれた、幾何学的な「逆五角形」の構造を持っています。これは副花冠(ふくかかん)の一部であり、蜜を求めて訪れる昆虫だけが、この厳重な幾何学のゲートを通過し、奥にある蕊(しべ)に触れることを許されます。単に美しいだけでなく、特定のパートナー(長い口吻を持つ虫)以外を拒絶するための、堅牢なセキュリティ・システムとしての美しさがそこにはあります。
庭を飲み込む「緑の津波」
「日陰でも育つ最強のグラウンドカバー」という謳い文句は真実ですが、それゆえに危険でもあります。ツルニチニチソウの生命力は、時に「侵略的」という言葉さえ生ぬるいほどの暴力を秘めています。
地面についた茎の節々から次々と根を下ろし、無限に増殖していく彼らは、管理を怠れば、隣に植えた繊細な草花を覆い尽くし、光を奪って絞め殺してしまいます。それは静かに、しかし確実に庭を飲み込む「緑の津波」です。彼らを庭に招き入れるということは、その圧倒的な野生を、ハサミ一本でコントロールし続けるという、終わりのない契約を結ぶことを意味します。境界線を越えた茎は、慈悲なく切り捨てる。その冷徹さが、美しい庭を維持する条件です。
「先祖返り」との静かなる戦い
園芸店で人気の、葉に白や黄色の模様が入った「斑入り(ふいり)」品種。これらは日陰の庭を明るく灯す照明のような役割を果たしますが、育てているうちに、突然「真っ緑」の葉を持つ強力な枝が現れることがあります。
これは「先祖返り」と呼ばれる現象です。斑入りは美しいですが、光合成能力という点では劣っています。植物自身は、より生存に有利な、葉緑素たっぷりの緑色の葉に戻りたがっているのです。もしこの緑の枝を放置すれば、成長の早い緑の枝が斑入りの枝を駆逐し、数年後には普通のツルニチニチソウに戻ってしまいます。美しい斑(ふ)を維持するためには、緑の枝を見つけ次第、根元から摘み取る必要があります。それは、植物の本能と人間の美意識との間の、静かなる戦いです。
脳を巡る「毒と薬」の境界線
ツルニチニチソウ(および近縁のヒメツルニチニチソウ)は、古くからヨーロッパでは民間薬として使われてきましたが、同時に有毒植物でもあります。その体内には「ビンカミン」などのアルカロイド成分が含まれています。
この成分は、現代医学において脳の血流を改善し、記憶障害や脳梗塞の後遺症治療薬の原料として研究されてきました。しかし、素人が葉を煎じて飲めば、重篤な副作用や中毒を引き起こす危険な毒草となります。脳を活性化させる薬効と、命を脅かす毒性。その境界線は紙一重です。美しい青い花の下には、人間の脳神経に直接作用するほどの、危うくも強力な化学物質が流れていることを忘れてはいけません。
イタリアが恐れた「死者の花」
明るく爽やかなイメージとは裏腹に、イタリアなどの一部地域では、かつてこの花を「死者の花(Fiore di Morte)」と呼び、葬儀の際に子供の棺を飾る花として用いた歴史があります。
常緑で決して枯れない強い生命力が、「永遠の命」や「死後の生」の象徴として見出されたからです。墓地に植えられ、主がいなくなった後も、墓石を覆い尽くして咲き続ける姿。その少し不気味なまでの生命力に、人々は生と死を超越した何かを見ていたのかもしれません。庭の片隅で冬でも青々と茂る彼らの姿は、ただ美しいだけでなく、永遠という時間の重みを感じさせます。
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