チャービル

チャービル

チャービル (chervil) はセリ科シャク属の耐寒性一年草(一年草~二年草)です。和名は茴香芹(ウイキョウゼリ)。フレンチによく使用されるハーブで、フレンチパセリ(French parsley)とも呼ばれたりします。なお、フランス語ではセルフィーユと呼ぶようです。

美食家のパセリと称される香り高きチャービルは、ソースなどに使用すると本格的で高級感のあるものに仕上がりますが、いわゆる「足が早い」という感じで、パセリ等に比べて保存期間はかなり短めです。なお、養子のうさぎもかなり気に入っていたようでした。

チャービル

チャービル

チャービルの葉は三回羽状。若干巻き気味です。育てる場合は、半日陰の涼しいところで育てます。挿し葉で増やすのは無理なようで、種子から育てる必要があります。地域にもよりますが、2月から4月に種まきをします。

チャービルの花

チャービルの花

チャービルの花

パセリ等他のセリ科の植物と同じように、チャービルも細かな白い花をつけます。繖形です。

チャービルの花2

チャービルの花2

乾いていたり暑い環境には若干弱く、そうした環境においては結構早く花がつくため、葉の収穫量が減るようです。ハーブとして葉を収穫することを意図する場合は、やはり半日陰の涼しいところでやや湿った環境がいいということのようです。

なお、このチャービルに、バジル、チャイブス、タラゴンを加えて作る「フィーヌゼルブ」というハーブミックスは、フランス料理で結構メジャーなようです。

学名:Anthriscus cerefolium

「美食家のパセリ」が嫌う熱

チャービル(セルフィーユ)は、よく「美食家のパセリ」と呼ばれますが、扱い方はパセリよりも遥かに繊細さが求められます。最大の違いは、熱に対する耐性です。

パセリがある程度の加熱にも耐えて香りを残すのに対し、チャービルの持つアニスのような甘く優美な香りは、熱を加えた瞬間に霧散してしまいます。煮込み料理の最初にこれを入れるのは、プロの厨房では許されない行為です。火を止め、皿に盛り付け、客席へ運ぶ直前。そのラストワンマイルにのみ、このハーブの出番があります。料理の余熱だけで香りを立たせる。その瞬間の美学を知っているかどうかが、使い手としての力量を分けます。

卵との「幸福な結婚」

フランスの料理人たちは、特定の食材の組み合わせをマリアージュ(結婚)と呼びますが、チャービルにとっての最高の伴侶は間違いなく「卵」です。

シンプルなオムレツに、刻んだチャービルをたっぷりと混ぜ込んでみてください。チャービルの持つ清涼感が、卵特有のわずかな生臭さを完全に消し去り、黄身の甘みを驚くほど引き立てます。それは調味料で味を足すのとは違う、食材同士が互いの欠点を補い合い、長所を伸ばし合う理想的な関係性です。朝食のスクランブルエッグに緑を散らすだけで、その皿は日常を超えた一皿へと昇華します。

「フィーヌ・ゼルブ」という四重奏

フランス料理には「フィーヌ・ゼルブ(fines herbes)」と呼ばれる、繊細なハーブのミックスがあります。その主役を務めるのがチャービルであり、そこにパセリ、チャイブ(シブレット)、エストラゴンが加わります。

これらを細かく刻んで混ぜ合わせたものは、単独では出せない複雑で奥行きのある香りを生み出します。誰か一人が突出するのではなく、互いに手を取り合ってハーモニーを奏でる。チャービルは、ソロリストとしても優秀ですが、アンサンブルの中でこそ、その調整役としての真価を発揮するのかもしれません。

根を触られるのを拒絶するプライド

可憐な見た目に反して、チャービルは栽培において頑固な一面を持っています。それは「直根性(ちょっこんせい)」という性質です。太い根が一本、地中深くへ真っ直ぐに伸びていくため、一度根付いた場所からの移動(移植)を極端に嫌います。

苗を買ってきて植え替えようとすると、根が傷つき、そのまま枯れてしまうことがよくあります。種を直接土に蒔き、その場所で一生を終えさせるのが、彼らに対する礼儀です。「ここが私の生きる場所だ」と決めたら、テコでも動かない。その揺るぎない定住への意志は、風に揺れる葉の儚(はかな)さとは対照的な強さです。

保存できない「今」だけの香り

バジルやオレガノのように、乾燥させてドライハーブとして使うことができる植物もありますが、チャービルに関してはそれは不可能です。乾燥させると、あの魔法のような甘い香りは完全に失われ、ただの草の繊維になってしまいます。

冷凍保存も推奨されません。つまり、チャービルを味わうということは、生の、フレッシュな「今」を味わうことと同義です。保存がきかないからこそ、その一瞬の香りに価値が生まれます。利便性や効率を追求する現代社会において、この「待ったなし」の生命力は、私たちに時間の尊さを教えてくれているようです。

葉が赤くなるサイン

育てているチャービルの葉が、緑から赤紫色に変色してくることがあります。これは病気ではなく、寒さに対する防衛反応、あるいは根詰まりのサインです。

特に冬場、寒さに当たると葉は紅葉し、アントシアニンを蓄えて身を守ろうとします。見た目は少し痛々しいですが、植物自身が生き延びようと必死に代謝を変えている証拠です。その変化を見逃さず、環境を整えてやるか、あるいはその変化さえも季節の彩りとして愛でるか。そこに対話の余地が残されています。

セリ科

Category:植物

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