水仙(スイセン)は、ヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)の球根植物であり、主に冬に白や黄色の花を咲かせる多年草です。草丈は50センチ程度で、花は独特の香りを持ちます。なお、ヒガンバナアルカロイドという毒性があるため全草が有毒です。
水仙(スイセン)の学名は「Narcissus」、ナルシストの語源であるナルキッスス(ナルキッソス)です。水仙には、ニホンスイセン、ラッパスイセン、キズイセン、クチベニズイセン、カンランズイセンといった分類がありますが、ここでは原種水仙と越前水仙(ニホンスイセン)について触れていきます。
水仙の原種 ナルキッスス・バルボコディウム
水仙の原種 ナルキッスス・バルボコディウム
水仙の原種として有名な小型原種スイセン「ナルキッスス・バルボコディウム」です。
水仙と同じくヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)です。もちろん水仙と同じく球根植物です。
ナルキッスス・バルボコディウム 花弁
ナルキッスス・バルボコディウムの花弁のアップです。
一般的なニホンスイセンよりも妖精感がします。
ナルキッスス(ナルキッソス)

ナルキッスス(ナルキッソス)
ナルシストの語源となっているナルキッスス(ナルキッソス)は、ギリシャ神話に出てくる美少年で、湖面に映る自分の顔に恋をして、「いつこの美しい者と実際に会えるのだろう」と恋い焦がれるうちに死んで花となったという事になっています。その花が水仙ということになっており、水仙の原種としてこの花にナルキッスス・バルボコディウムという名が付きました。
そういうわけで、水仙の花言葉は基本的に「自己愛」や「うぬぼれ」という感じになっています。ただし花の色や形状で若干花言葉は変わったりするようです。
ラッパスイセン

ラッパスイセン 白
参考までに花全体が真っ白なラッパスイセンです。

ラッパスイセン 黄色
こちらは全体が黄色のラッパスイセンです。
越前水仙(ニホンスイセン)

越前水仙
さて、水仙の群生地として有名なのが、福井県越前町の越前海岸です。昨年の記事でご紹介していましたが、今年また再び越前町に行ったので、越前水仙を爆撮りしてきました。

ニホンスイセン
昨年はギリギリ福井市内でしたが、今年は本場越前町です。
越前水仙の品種「ニホンスイセン」は、和名に日本とついていますが、原産は地中海沿岸であり、中国を経由して日本に流れ着いたという説が有力です。
越前水仙(ニホンスイセン)の花
水仙の花びらは、花被片(かひへん)と呼ばれる形で形成されています。内側3枚が花弁であり外側3枚は萼(がく)です。

ニホンスイセンの花
水仙の花の中心にある筒状の部分(主に黄色)は副花冠(ふくかかん)と呼ばれます。副花冠の中には、雄蕊(おしべ)が6本で雌蕊(めしべ)が1本あります。
水仙の香りはこの副花冠から出ています。

ニホンスイセンの花 裏側
水仙の花の裏側はこんな感じです。内側3枚と外側3枚を区別することができます。
越前水仙「魔王」
越前水仙の「魔王」。

越前水仙 魔王 アップ
他に見たことがないので、きっと希少品種なのでしょう。
水仙の蕾

水仙の蕾
開花前の水仙の蕾です。葉の先にぷくっと蕾がついています。
水仙の葉
まだ花も蕾もついていない成長期の水仙の葉。
ニラやネギに似た水仙の葉

ニラに似た水仙の葉
全草に毒がある水仙ですが、猪や鹿などが食べに来るようでところどころ抜け落ちていたりしました。
水仙は形状がニラやネギ(どちらかというとニラでしょう)によく似ていますが有毒なので食べることはできません。見分け方はもちろん根の部分です。
水仙は球根植物のため鱗茎(球根)がありますが、ニラはヒゲ根ですし、ニラは特有の匂いがあるため区別はしやすいと思います。なお、水仙の香りは花から出ているので、水仙の葉からは香りがしません。
そういえば2018年末、地元京都にて「ネギ味噌を作る時に誤って水仙の葉が混入し、ヒガンバナアルカロイドによる集団食中毒になった」ということがあったようです。
越前水仙の群生
越前水仙の群生です。写真は福井県越前町の越前岬水仙ランドにて。

越前水仙の群生
福井県の越前海岸は、千葉県の房総半島、兵庫県の淡路島と並び日本水仙三大群生地の一つです。
一帯はもちろん香り高い水仙の匂いでいっぱいです。

越前水仙の群生
これでもか!というほどに水仙が咲き誇っています。
越前海岸に咲く水仙の特徴としては、「日本海沿岸の寒さに耐えるため葉が硬く締まっているところ」という感じのようです。

越前水仙の群生
越前海岸の水仙の群生の開花時期は年々早まっているようですが、概ね1月初旬前後くらいが満開のシーズンのようです。一応開花のシーズンは12月から2月という感じです。

越前水仙の群生
越前岬水仙ランドを少しだけ北上した所にある梨子ヶ平(なしがだいら、梨子ヶ平台地・梨子ヶ平園地・梨子ヶ平千枚田水仙園)が最強の水仙群生地のようですが、今回は時間の都合上水仙ランドのみとなりました。
美しき「毒」の要塞
水仙の凛とした姿に心を奪われますが、彼らが全身を猛毒「リコリン」で武装した要塞であることを忘れてはいけません。葉をニラと、球根をタマネギと間違えて食べてしまう事故が後を絶ちませんが、この毒は人間だけでなく、野生動物に対する強力な警告でもあります。
鹿やイノシシが畑を荒らしても、水仙だけは綺麗に残されている光景を見たことがありませんか? 彼らは本能的に、この植物が致死的な化学兵器を持っていることを知っています。あの美しい立ち姿は、外敵に怯える必要のない「絶対的な安全」を手に入れた者だけが許される、余裕の現れなのです。
他の花を殺す「嫉妬」の粘液
水仙を切り花として楽しむ際、プロフェッショナルが最も警戒するのが、茎の切り口から出る透明な「粘液」です。
このヌルヌルとした液には、毒性成分やシュウ酸カルシウムが含まれており、同じ花瓶に入れた他の花(特にバラやチューリップなど)の導管を詰まらせ、急速に萎れさせてしまいます。まるで自分以外の美しさを許さない嫉妬心のようですが、これは傷口を塞ぐための自己防衛反応です。他の花と一緒に生ける場合は、切った後に水中で粘液を洗い流し、一晩単独で水揚げをする「袴(はかま)処理」を行うこと。その一手間が、彼らの毒気を抜き、共存を可能にする儀式となります。
「副花冠」という進化の謎
水仙の最大の特徴である、中心のカップ状の部分。これを「副花冠(ふくかかん)」と呼びますが、実はこれが植物学的に「何であるか」は、長い間議論の的でした。
花びら(花弁)でもなければ、雄しべでもない。彼らだけが独自に進化させた、第三の器官です。一説には、香りをより遠くへ拡散させるためのメガホンの役割や、特定の昆虫を内部へ誘導するためのトンネルの役割があると言われています。花びらの色を変えるのではなく、新しい器官をゼロから作り出す。その進化の飛躍(ジャンプ)にこそ、水仙の美学が凝縮されています。
ナルキッソスの「首」の角度
学名「ナルシサス(Narcissus)」は、ギリシャ神話のナルキッソスに由来し、水面に映る自分に見惚れて花になったという伝説はあまりに有名です。しかし、植物学的な視点で見ると、あの「うつむいて咲く角度」には、もっと切実な理由があります。
それは、雨から花粉を守るためです。冬から早春にかけて咲く彼らにとって、冷たい雨は受粉を妨げる致命的な要因です。首を横、あるいはやや下に向けることで、傘を差すように内部の雄しべと雌しべを守っているのです。ナルシストだからうつむいているのではなく、種を残すために慎重に顔を伏せている。その謙虚な機能美こそが、結果として伝説と重なり合ったのです。
風雪が育てる「筋肉質」な香り
福井県の越前海岸に咲く「越前水仙」。なぜ、あのような厳しい日本海の吹きっさらしで、これほどの名花が育つのでしょうか。
実は、寒さと強風こそが、彼らの品質を高めるスパイスです。日照時間が少なく寒い環境では、植物は徒長(ひょろひょろと伸びること)できず、細胞が緻密に引き締まります。結果、茎は太く硬く、花持ちが良くなり、香りも凝縮されて強くなります。温室で甘やかされた水仙にはない、野生の筋肉質な美しさと芳香。それは、逆境こそが才能を開花させるという、自然界の厳しい教えそのものです。
ヒガンバナ科
- ヒガンバナ科ヒガンバナ属 彼岸花(ヒガンバナ)曼珠沙華(マンジュシャゲ)
- ヒガンバナ科クンシラン属 君子蘭(クンシラン)
- ヒガンバナ科アガパンサス属(ムラサキクンシラン属) アガパンサス(ムラサキクンシラン)
- ヒガンバナ科ネギ属 ジャンボにんにく(ジャンボリーキ)
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