蕺(どくだみ)はドクダミ科ドクダミ属の落葉多年草で、毒溜、魚腥草(ぎょせいそう)、地獄蕎麦(じごくそば)、之布岐(しぶき)などと様々な呼び方をされています。蕺草と書くこともあります。葉はハート形(心臓形)で、長さは約5cm程度です。互生し、ハート形なので、先端は尖っています。葉は全緑の場合もあれば、縁や葉脈、茎がやや赤紫色を帯びる場合もあります。
どくだみの開花期は5~7月頃で、半日陰地を好み全草に強い臭気があります。生薬名十薬(じゅうやく、重薬)は開花期の地上部を乾燥させたもので、煎液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがあるようです。主要成分は、脂肪族アルデヒドのデカノイルアセトアルデヒド(decanoylacetaldehyde)のようです。なお、ドクダミの名称は、「毒溜」「毒矯み」ということで毒を抑えるというような意味が由来になっています。どくだみは、ゲンノショウコ、センブリと並んで日本三大民間薬の一つとして捉えられています。
「どくだみ茶」と言った感じで、お茶にもよく入っていますが、おばあちゃんとよく一緒に摘みに行ったのを覚えています。特有の強い臭いがありますが、
ドクダミの自生環境は道ばたや、湿った林内などで、茎頂に、白いか弁のように見える4枚の白色の総苞のある棒状の花序に淡黄色の穂状の小花を密生させます。
どくだみが開花する時、蕾状態からぺりっと弁がとめくれる様子です。
ドクダミの花は裸花と呼ばれ、花弁も萼(がく)もなく、中心の花柱が3つある黄緑色部分が雌蕊で、その周りに3つの雄蕊があるのみです。果実には3つの突起があります。
どくだみは繁殖力が高く、ちぎれた地下茎からでも繁殖するようです。毎年春になると芽が出ます。
学名:Houttuynia cordata
毒を「矯(た)める」という逆説
ドクダミという名前は、その響きから「毒を含んでいる」と誤解されがちですが、本来の意味は「毒を矯める(=正す、治す)」に由来すると言われています。あるいは、毒痛み(どくいたみ)を和らげるからとも。
いずれにせよ、この植物は毒草ではなく、毒を制する最強の解毒剤としての歴史を持っています。江戸時代の貝原益軒も『大和本草』の中で「十薬(じゅうやく)」として称賛しました。10種類の薬効がある、あるいは馬に食べさせると10種の病気が治るという伝説から来ています。道端で邪険にされているその草が、実は薬局一つ分に相当するほどのポテンシャルを秘めているとしたら、私たちは足元の宝物を随分と見過ごしていることになります。
乾燥すると消える「殺菌の魔法」
ドクダミの最大の特徴であり、嫌われる原因でもあるあの強烈な臭気。あれは「デカノイルアセトアルデヒド」という成分によるものです。
この成分は、カビや黄色ブドウ球菌に対しても強力な殺菌作用を発揮します。生の葉を揉んで傷口に貼るという民間療法は、化学的にも理に適った行為です。しかし、不思議なことに、この成分は乾燥させると化学変化を起こして消失します。代わりに、穏やかな薬効成分へと変わり、あの臭いも消え失せます。
生の状態では強烈な臭気で他者を寄せ付けず(殺菌し)、乾燥して死を迎えることで、穏やかな良薬へと変身する。その劇的な変化は、まるで自らの激しさを昇華させて徳を積む、修行僧の姿のようでもあります。ドクダミ茶が香ばしく飲みやすいのは、この成分変化のおかげです。
東南アジアで見せる「美食」の顔
日本では雑草扱いのドクダミですが、ベトナムや中国南西部に行くと、評価が一変します。そこでは「魚腥草(ぎょせいそう)」や「折耳根(ジョーアールゲン)」と呼ばれ、ハーブとして愛されています。
特にベトナム料理において、ドクダミは魚料理や生春巻きに欠かせない重要なアクセントです。あの独特の香りが、魚の発酵食品や脂っこさと混ざり合うと、不思議なほど爽やかな風味に変わり、食欲を刺激します。パクチーと同じく、好き嫌いは分かれますが、一度その味のマリアージュ(調和)を知ってしまうと、ドクダミなしの料理が物足りなく感じるようになります。文脈が変われば、悪臭も芳香となる。価値観の相対性を教えてくれる食材です。
地下を支配する白いネットワーク
ドクダミを庭から完全に駆除しようとしたことがある人なら、その絶望的なまでの生命力を知っているはずです。地上部をいくらむしり取っても、数日後には何事もなかったかのように新しい芽が出てきます。
その力の源は、地下深くに張り巡らされた白い地下茎(ちかけい)にあります。この地下茎は、少しでも切れ端が土に残っていれば、そこから再生することができます。節々から根を出し、水平方向に無限に広がっていくネットワーク構造は、インターネットの分散型システムのように強固です。個体を叩いても全体は死なない。この植物と戦うということは、目に見えない巨大な地下帝国と戦うことに他なりません。
八重咲きに見る「清純」の極み
観賞用として見直されているのが、八重咲きの品種(Houttuynia cordata ‘Flore Pleno’)です。
通常のドクダミが一重の十字形であるのに対し、八重咲きは白い苞(ほう)が幾重にも重なり、まるで小さな白いバラか、精巧な細工物のような美しさを見せます。その純白の姿からは、あの泥臭いイメージは微塵も感じられません。葉の色が五色に変化する「カメレオン(五色ドクダミ)」という品種も、カラーリーフとして世界中のガーデナーに人気です。雑草としての逞しさと、園芸植物としての美しさ。その両方を行き来する変幻自在さもまた、この植物の底知れない魅力です。
「入浴剤」としての肌への慈愛
飲むのが苦手という方には、お風呂に入れることを強くお勧めします。生の葉、あるいは乾燥させた葉を布袋に入れて湯船に浮かべると、素晴らしい薬湯になります。
特にあせもや湿疹、肌荒れに悩む人にとって、ドクダミ湯の抗炎症作用は優しく作用します。湯気とともにほのかに漂う土と草の香りは、高級なバスソルトにはない、原始的な安らぎを与えてくれます。肌を通して大地の力を吸収する。それは最も贅沢な身の清め方かもしれません。
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