臆病さは時に方向が変わると強さに変わります。
臆病さを強さに変えた人たちということで、臆病さが良いふうに出たケースについて少し触れておきます。
臆して前に進めないくらいなら根拠なきままにでも自信を持って挑むということが良いというような風潮がありますが、根拠なき自信よりも臆病さを強さに変えることで生まれた自信の方が信頼できます。
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事業主や創業予定者のレベルも本当に千差万別といった感じで、想像以上に幅があります。なんだかんだで経営相談に応じることも多く、望んだわけではないのですがコンサルティング的な依頼を受けることがたまにあります。
そんな中、事業計画書の相談やビジネスプランコンテスト的なものの審査も手がけることもあります。
臆病さを強さに変えた人たちといった感じで「彼を知り己を知れば百戦殆ふからず」という「孫子の兵法」で有名な孫子の言葉をそのまま体現したような若者に出会いました。
己の弱さを知る
あるビジネスプランのコンテストの事業プレゼンテーションで、声がまあまあ震えている系の若者たちがいました。
しかしながら質疑応答のたびに的確な答えを返してきます。
文句なしの予選通過です。
詳細は控えますが、まあ一番の強みは、近年の傾向としてありがちな、「そんなの検索すればいいんじゃないですか?」系の慢心が無い点でした。
直接関係者に話に聞きに行って実情を調べたり、現地調査をしたり等々、リアルなデータを用意してきていたのです。
「やってきたことには自信がある」という状態
その裏には、自分への自信のなさがあります。
しかし、自分に自信がなくても「自分のやってきたことには自信がある」という感じでした。
臆病だからこそ、うまく口八丁手八丁で切り抜けられるような性格ではないからこそ、可能な限り準備をしてきたという感じです。
「今の時代にそこまでリアルな情報を用意しているなんてすごいね」
と声をかけてみると
「僕は臆病なだけです」
と答えてきました。
でも、それはそれで強さになるんだなぁということを実感しました。
天才ではなくても、こういう人が事業を通じて世の中を引っ張っていくんだろうなぁと思いました。
「自分」に自信がないからこそ
その時の参加者の中には、その人と真逆のような人もいました。
いわゆる「勢いでいけるっしょ」系の人です。
その気楽な感じや根拠なき自信は、それはそれとしていいですが、それが慢心という形で悪い方に働いていました。
勢いだけで乗り越えられるときもあればそうでもない場合もあります。
その時の説得相手は、百戦錬磨の経営者や金融関係者です。
「自分も相手も見えていない」
と言う感じでした。
臆病な自分はどう準備しておくべきか?
一方、先の彼は、自分に自信があるわけではありません。
しかし自分の弱さと、相手というものをよく洞察し「臆病な自分はどう準備しておくべきか?」ということを考え、そして実行しました。
結果は満場一致でグランプリ。賞金を獲得していきました。
臆病であることは時にその臆病な自分がどうすれば自身を持って人に話をすることができるかというところの原動力となります。
相手から鋭い質問が来るかもしれないということを想定して、先回りして準備をするというところに力を注ぐことができます。
そうして自分自身で納得して自信を得るという部分は、相手を説得できてこそという部分にも貢献しますが、それ以上に「大切なプランが破綻しないように詳細を調べて検討する」という部分に大きく関わってきます。
厳しい相手から来る質問以上に現実の社会環境はもっとシビアです。それを傲りから「勢いでいけるっしょ」と慢心で挑んで通用するような分野と通用しないような分野があります。
根拠なき自信で行動力があるというのも、時に武器になりますが、それではしのげない場合もあります。臆病さは行動力の面でマイナス要因となりそうですが、その臆病さをどう捉えるかによって、他の追随を許さない強みすら作り出すことができるという良い例だと思います。
彼を知り己を知れば百戦殆ふからず
まさに「彼を知り己を知れば百戦殆ふからず」という感じで、負けない戦いを実行したという感じでした。
なんだか若手の起業家といえば、斬新で天才感のあるような人ばかり注目されますが、世の大半の企業にとって大切なのは堅実さです。
勢いも大切ですが、慢心や傲りが生じると、どこかで足を掬われます。
スター性はないかもしれませんが、こちらも手を抜くことのできないほどの強さです。
臆病であっても、自信がなくても、それはそれでいいふうに出てくる場合があるという感じでした。
臆病であったとしても、それに溺れずに「自分に自信はないが、自分の準備してきたことには自信がある」という状態で挑んできた彼らには、会場中のみんなから拍手喝采の嵐がやってきていました。
そういうのもかっこいいんじゃないかなぁと思います。
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