宿木(やどりぎ)

宿木(やどりぎ) 寄生木

宿木(やどりぎ)

宿木(やどりぎ)

宿木(ヤドリギ、寄生木)は、 ビャクダン科ヤドリギ属の半寄生の灌木で、他の樹木の枝の上に生育するようです。セイヨウヤドリギ系の亜種らしいのですが、モノの見事に木と一体化していました。なお、宿木(ヤドリギ、寄生木)とは、広義にはヤドリギ類 (Mistletoe) の総称的な通称のようです。葉っぱは1組ずつ対になっており比較的肉厚です。ヨーロッパや西部・南部アジアが原産のようです。

宿木の葉っぱをよく見るとおもちゃのヘリコプターのプロペラのような形状をしており、革っぽいというよりも、おもちゃに使われるラバー系の素材っぽく、少し肉厚でした。

宿木2

伏見区にて宿木というものを初めて見ました。宿主樹木としてエノキやヤナギ類、ブナ・ミズナラ・クリ・アカシデ・クワ・サクラ属の木など、他の木に寄生する植物のようですが、養子のうさぎの尻尾のような形状をしています。クリスマスのリースなどに利用されるようで旬のものといえば旬のものですね。寄生先の落葉樹が葉を落としている中、ヤドリギだけが地に根もつけず、宙ぶらりんで青々とした葉をつけています。

他の木への寄生のしかた

宿木(ヤドリギ、寄生木)の他の木への寄生のしかたは、想像通りという感じで、実を鳥が食べて、その糞が宿主樹木に落ちるとそこから発芽し、樹皮から侵入して根を張って育つという感じのようです。宿木の実には粘着性があり、その粘り気が鳥の糞にまで影響して、他の木に張り付きやすくなっているようです。

学名:Viscum album(Viscum album subsp. coloratum)

「半寄生」という名の独立心

ヤドリギ(宿り木)は、その名の通り他の樹木に寄生して生きていますが、完全に相手に依存しているわけではありません。彼らは自ら緑色の葉を茂らせ、光合成を行っています。これを植物学的には「半寄生(はんきせい)」と呼びます。

水分やミネラルといった原材料は宿主から拝借しますが、成長に必要なエネルギー(炭水化物)は、自らの力で作り出しています。すべてを奪い尽くすパラサイト(完全寄生)とは異なり、最低限のライフラインだけを借りて、あとは自分の才覚で生きていく。その生き方は、どこか都会的で、ちゃっかりとしつつも、ある種のプライドを感じさせるバランス感覚の上に成り立っています。

鳥を操る「ネバネバ」の物理学

ヤドリギが繁殖するために開発したシステムは、驚くほど精巧です。その実は鳥たちにとって魅力的な食料ですが、中の種子は「ビスシン」という強力な粘着物質で覆われています。

レンジャクやヒヨドリが実を食べると、種だけは消化されずに排泄されます。この時、種はネバネバした糸を引いて、鳥のお尻から簡単には落ちません。鳥が気持ち悪がって枝にお尻をこすりつけた瞬間、種はしっかりと樹皮に接着されます。空を飛ぶ鳥を運び屋として利用するだけでなく、その着地(種まき)の瞬間までをコントロールする。この粘液の物理的特性こそが、地面に落ちれば死んでしまう彼らが、空中で命をつなぐための生命線です。

神話が宿る「金枝」の正体

ジェームズ・フレイザー氏の名著『金枝篇』のタイトルにもなった「金枝(きんし)」とは、このヤドリギのことであると言われています。特に、聖なる樹木であるオーク(ナラ)に宿ったヤドリギは、古代ケルトの祭司ドルイドたちにとって、最も神聖な力が宿る依代(よりしろ)でした。

落葉樹であるオークが冬に葉を落とし、死んだように見える中で、唯一青々とした葉と黄金色の実を輝かせているヤドリギ。それは「不死の命」や「復活」の象徴として崇められました。地面に触れさせてはならないという禁忌(タブー)も、その力が大地に吸い取られてしまうことを恐れたからでしょう。私たちがクリスマスにヤドリギの下でキスをする風習も、この古代の「神秘的な生命力」を分け合う儀式が起源にあるのかもしれません。

宿主との「危険な抱擁」

外からは見えませんが、ヤドリギの根(吸器)は、宿主の樹皮を突き破り、その内部深くまで侵入しています。単に刺さっているだけではありません。宿主の形成層や木部にまで到達し、細胞レベルで結合して、あたかも「接ぎ木」されたかのように一体化しています。

この結合は非常に強固で、台風などで宿主の枝が折れる際も、ヤドリギの結合部から折れることは稀だと言われています。一度抱きついたら、死ぬまで離れない。その執着心は、植物というよりも、何か情念を持った生き物のようです。

枯れた後も続く「空中のオアシス」

ヤドリギは、生きている間だけでなく、枯れた後も森の生態系に貢献し続けます。ヤドリギの密集した枝ぶりは「ウィッチズ・ブルーム(魔女の箒)」とも呼ばれ、リスやモモンガ、あるいはフクロウなどの鳥類にとって、外敵から身を守るための最高の巣場所となります。

ある研究では、ヤドリギが多い森ほど、鳥の種類や数が多いというデータもあります。木にとっては迷惑な居候かもしれませんが、森全体で見れば、多くの命を支える「空中の集合住宅」あるいは「生物多様性のホットスポット」としての役割を果たしているのです。冬の空を見上げて、木々の枝に丸い塊を見つけたら、そこには目に見えない豊かな生態系が広がっています。

Category:植物

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