インパチェンス(アフリカホウセンカ)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草で、アフリカホウセンカの名の通りアフリカ原産です。

インパチェンス(アフリカホウセンカ)1
インパチェンス(インパチエンス)は属の学名(Impatiens)ですが、日本においてはアフリカホウセンカの呼称として定着しているようです。

インパチェンス(アフリカホウセンカ)
インパチェンスの花
インパチェンス(アフリカホウセンカ)の花は一重咲きのものから八重咲きのものまであり、花の咲き方には種類があります。また色も白や赤やピンクなど、多種多様な色の種類のものがあります。
一重咲きのものは、扇風機の羽根を薄く平らにした系の咲き方をしています。
インパチェンスの実
インパチェンス(アフリカホウセンカ)の実は、つまんだりするとポンッと弾けるようにクルクルクルクルとなり中身が飛び散る仕様になっています。職人の技術と遊び心で作ったかのような感じがします。
クルクルなったあとの実の外側は、おもちゃの電話コードや海外のおやつのグミなどでありがちな形状となります。
学名:Impatiens walleriana
「我慢できない」という名の物理法則
インパチェンスの学名 Impatiens は、ラテン語で「我慢できない(Impatient)」を意味します。この名は、熟した種に指先が触れた瞬間、パチンと音を立てて弾け飛ぶ性質に由来します。
これは単なる比喩ではなく、植物細胞内の「ターゴ圧(膨圧)」を利用した高度な物理現象です。果皮の内側の細胞がパンパンに膨れ上がり、限界ギリギリの張力を保っています。そこへわずかな刺激が加わると、均衡が崩れ、皮が瞬時に巻き上がり、その反動で種を遠くへ射出します。自らの子供たちを旅立たせるために、爆発という激しいエネルギー解放を選ぶ。静止しているように見える植物の中に、これほどの動的な衝動が秘められていることに畏怖の念を覚えます。
花の裏側に隠された「距(きょ)」の誘惑
花を正面から見るだけでなく、ぜひ裏側を覗いてみてください。花の後ろに、細長く伸びた管のような突起があることに気づくはずです。これを「距(きょ)」と呼びます。
この細い管の奥底には、甘い蜜が隠されています。これは、特定の長さの口吻(こうふん)を持つ昆虫だけを招き入れるための選別装置です。短い口の虫では蜜に届かず、無理に入ろうとして体に花粉をつけることもありません。長いストローを持つ蛾や蝶だけが、この蜜を味わう対価として受粉を請け負うことができます。花の形は、彼らが契約したいパートナーの形そのものなのです。
「サンパチェンス」という革命的進化
本来、インパチェンスは強い日差しが苦手で、日陰を彩る植物でした。しかし、その常識を覆したのが、日本の種苗会社(サカタのタネ)が開発した「サンパチェンス」です。
インパチェンス属の種間交雑によって生まれたこの品種は、真夏の直射日光の下でも咲き誇る驚異的な耐久性を手に入れました。それだけではありません。サンパチェンスは、他の植物に比べて極めて高い蒸散能力を持っています。
葉から大量の水分を蒸発させることで、周囲の温度を下げる「打ち水効果」を発揮し、さらに二酸化炭素や窒素酸化物の吸収能力も高いことが実証されています。単なる園芸植物を超え、都市のヒートアイランド現象や環境汚染と戦う「環境浄化植物」としての地位を確立した、植物育種の傑作です。
水風船のような茎の脆さと強さ
インパチェンスの茎を触ると、ひんやりとしていて、少し透き通るような瑞々しさがあります。組織のほとんどが水分で満たされており、まるで水風船のようです。
この構造ゆえに、少しの衝撃でポキリと折れやすいのが欠点です。しかし、彼らは転んでもただでは起きません。折れた茎を湿った土に挿しておけば、驚くべき速さで発根し、新しい株として再生します。脆(もろ)いということは、裏を返せば、体を分割して増えるチャンスが多いということでもあります。個体としての頑丈さよりも、群れとして生き残る柔軟さ。彼らの戦略は実にしなやかです。
ホウセンカとの「爪」の違い
日本の庭先でおなじみの「ホウセンカ(鳳仙花)」も同じインパチェンスの仲間ですが、決定的な違いはその咲き方にあります。
ホウセンカが葉の脇に花を抱え込むように咲くのに対し、アフリカホウセンカ(インパチェンス)は長い花柄(かへい)を伸ばして、葉の上にふわりと浮き上がるように咲きます。この違いが、日陰でも花を目立たせるための進化であり、現代のガーデニングにおいて立体的な演出を可能にする要素となっています。かつて女の子たちがホウセンカの花汁で爪を染めたように、インパチェンスの花びらもまた、指先を彩る儚いマニキュアになります。その遊び心を通じて、私たちは植物の持つ色素の鮮烈さに触れるのです。
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