ボッサードの法則とは、物理的な距離が心理的な距離に影響を及ぼすという効果で、特に男女間の感情の親密度において物理的距離が近いほど心理的な親密感が増すという効果である。
「いかに近い距離にいるか?」が、両者の親密度に大きく関わるというような感じで、近距離恋愛や遠距離恋愛について語られるような「住んでいる場所」といった物理的距離をはじめ、部屋の中といった身近な空間における物理的距離も心理的な親密度に影響を与えるというような法則性である。
例えばこれは同じ学校に通っている間は仲が良かったものの、進学や就職により物理的な距離が遠くなってしまってからは、心理的な距離も遠くなってしまうという傾向を示す。
負担や重要度と「距離」
物理的距離が近いほど心理的な親密感が増すといった効果のその背景には、コミュニケーションにかかる「負担」といった面や接触回数による意識の中の重要度の順位の変化というものが影響していると考えられるだろう。
古い文献でも「別れさせるには、一方を遠くに行かせるのが良い」と記述されていたりもする。親密度の高い両者を説得によって引き離すよりも、物理的距離が離れれば、お互いに関心がなくなっていくだろうというようなことは、ボッサードの実験よりもはるか昔から感覚で理解されていたということになる。
ボッサードの法則は、遠距離恋愛の破綻のしやすさを示すことで知られるが、とどのつまり、これは人の関心や重要度など「いかに手軽で都合が良いか」ということが大きく影響していることを示唆する。
情報で距離を埋めるとしても不完全
物理的距離に依存はしている中、結局は意識上での距離ということになるので、現代ではあまり関係がなさそうに考えられたりもするが、意識的な情報の質として「五感の臨場感」が大きく影響を及ぼすので「インターネット回線を利用して連絡が取れるので大丈夫」ということにはすぐにつながらない。
電子的なやり取りは大半が言語・視覚・聴覚といった領域であるため、五感を総動員したリアルタイムでのコミュニケーションを取ることができないからである。
とりわけ男女間の親密度においては、肌のふれあいといった触覚的なコミュニケーションが取れないことは、親密度を下げる要因となる。
本当に好きなら地の果てまででも
考えれみれば、どのような理由であれ、相手のことが本当に最も重要であるのであれば、どちらか一方がどちらか一方に合わせるように、または双方が工夫をして物理的距離を保つようにするはずである。
「就職のために引っ越さなければならない」という理由で別れを告げられたということは、結局「それほど関心がなかったが、それまでは現状の都合的に最適だったのでとりあえず付き合ってみていた」という程度だったことになる。
本当に好きなら地の果てまででも追いかけていくはずであり、また地の果てまででも追いかけられてくるはずである。
物理的距離が離れることで離れてしまうような関係性は、「根本的に執著するほどのものではない」ということになる上、「地の果てまででも付いていく」のであれば、語るまでもなく物理的距離は保たれるのだから問題は生じないということになる。
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