木槿(ムクゲ)は、アオイ科フヨウ属の落葉低木。漢字から「もくげ」と呼ばれたりする他「ハチス」という別名があります。

木槿(ムクゲ)1
花はフヨウ属らしい花で色はピンクから白といった感じです。同じアオイ科フヨウ属のハイビスカス系の花をつけます。

木槿(ムクゲ)
木の高さは3mほどで上方に直線的に伸びるのが特徴です。葉は縁に粗い鋸歯がついた卵形~卵状菱形で互生します。分裂葉と不分裂葉があり、分裂葉は3つに分かれます。

木槿(ムクゲ)2
秋の七草における「朝貌(あさがお)の花」は、朝顔とされますが、桔梗(ききょう)とする説が有力という中、一説にこの木槿(ムクゲ)とする説があるようです。一般的に木槿(ムクゲ)は中国原産とされていますが、はっきりとした原産地はよくわかっていないようです。
木槿(ムクゲ)の花
木槿(ムクゲ)の花のアップです。花期は夏から初秋です。

木槿(ムクゲ)花1
ハイビスカス系の五弁花で、中心に向かって色が濃くなる感じがいいですね。花の色はピンクの他に白や赤、紫などのものがあります。
学名: Hibiscus syriacus
「一日花」が紡ぐ永遠のパラドックス
ムクゲの花は、朝に開き、夕方にはしぼんで落ちる「一日花」です。その潔さは、しばしば「儚(はかな)さ」の象徴として語られます。しかし、韓国ではこの花を「無窮花(ムグンファ)」と呼び、国花として制定しています。「無窮」とは、極まりがない、永遠という意味です。
一見矛盾しているように思えますが、栽培してみるとその真意が理解できます。一つの花は一日で終わりますが、その横には無数の蕾(つぼみ)が待機しており、夏から秋にかけて途切れることなく次々と咲き続けるからです。個としての命は短くとも、全体としての命は永遠に続く。この「継承」のリズムこそが、ムクゲが持つ本来の力強さであり、長い歴史の中で人々を勇気づけてきた理由なのかもしれません。
茶人が愛した「底紅」の幽玄
多くの品種がある中で、特に茶道の世界で珍重されてきたのが「底紅(そこべに)」と呼ばれるタイプです。白い花弁の中心だけが、ほんのりと赤く染まっている姿を指します。
中でも「宗旦木槿(そうたんむくげ)」は、千利休の孫である千宗旦がこよなく愛したことで知られています。真っ白な清らかさの中に、一滴の紅(あか)が差すことで生まれる緊張感。それは、静寂の中にある秘めた情熱や、生命の鼓動を連想させます。華美を排し、精神性を重んじる侘び茶の世界において、このわずかな色彩の対比は、言葉以上に雄弁なメッセージを放っているようです。
ムクゲの枝を「折る」ことの難しさ
庭木としてムクゲと付き合う時、その枝の強靭さに驚かされることがあります。剪定した枝を手で折ろうとしても、皮が非常に強く、容易にはちぎれません。
実は、ムクゲの樹皮には強くて長い繊維が含まれており、古くはこの繊維を取り出して紙の原料にしていました。「和紙」の素材といえばコウゾやミツマタが有名ですが、ムクゲもまた、私たちの文化を記録する媒体としての役割を担っていた時期があるのです。容易には折れないその枝は、風雨に対する物理的な強さだけでなく、歴史の風雪に耐えてきた植物としての芯の強さを感じさせます。
剪定という名の「対話」
「ムクゲは切れば切るほど良くなる」と、私たちプロの庭師は口を揃えます。多くの樹木が強剪定(太い枝を深く切ること)を嫌う中で、ムクゲは驚異的な回復力を見せます。
落葉期の冬に、ほとんどの枝を切り落として棒のような状態にしても、春になれば勢いよく新芽を吹きます。むしろ、枝を更新させることで花付きが良くなる性質を持っています。遠慮は無用です。ハサミを入れるという行為は、ムクゲにとっては傷つけることではなく、若返りを促す激励のようなものです。失敗を恐れずに大胆に関わることができる、その懐の深さもまた、この木が愛される理由の一つでしょう。
芙蓉との決定的な違い
よく似た花である「芙蓉(フヨウ)」との見分け方は、葉の形や大きさだけではありません。もっと直感的な、手触りの違いがあります。
秋風に揺れる芙蓉の葉が大きく、手のひらのような柔らかさを持つのに対し、ムクゲの葉はより小さく、切れ込みが鋭く、硬質な手触りをしています。また、芙蓉が半低木として横に広がる傾向があるのに対し、ムクゲは直立する性質が強く、空へ向かって真っ直ぐに伸びようとします。優美で女性的な芙蓉と、凛として直立不動のムクゲ。似ているようでいて、その立ち振る舞い(アーキテクチャ)は対照的です。
雨を知る花
雨の日のムクゲを観察したことがあるでしょうか。多くの花が雨に打たれてうなだれる中で、ムクゲは水分を含んでより一層鮮やかに発色するように見えます。
特に白や薄紫の花弁は、雨粒を弾くのではなく、光と共に受け入れるような透明感を帯びます。韓国の詩や歌の中で、苦難(雨)の中でも咲き続ける姿が歌われるのは、単なる比喩ではなく、実際の生態に基づいた描写なのです。晴れた日の明るさも素晴らしいですが、雨に濡れた時の静謐な美しさこそ、この花の真骨頂といえるかもしれません。
アオイ科フヨウ属
アオイ科フヨウ属 ハイビスカス
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