ハエトリグサ(蠅捕草、ハエトリソウ)は、北アメリカ原産、ウツボカズラ目モウセンゴケ科ハエトリグサ属の食虫植物です。食虫植物の中でトップクラスに有名な植物です。

ハエトリグサ(ハエトリソウ)
名称はハエトリグサ、ハエトリソウ、ハエジゴクといった名前ですが、蠅だけでなくダンゴムシやアリ、ハチなども捕食するようです。その他、牛乳や肉片、チーズ、鰹節なども消化可能なようです。

ハエトリグサ(ハエトリソウ)
原産は北アメリカ大陸で、ノースカロライナ州とサウスカロライナ州の郊外の湿地に自生しているようです。1属1種ですが、ロゼットタイプやエレクタタイプなどの種類が存在します。
ハエトリグサの捕虫方法
ハエトリグサの捕虫方法は、見ての通りの葉で捕まえるというもので、開いた葉の内側から無視を誘引する蜜を分泌しておびき寄せ、感覚毛(トゲ)が感知すると葉が素早く閉じて捕まえるというものです。
閉じる速度は約0.5秒と早く、内外細胞の膨圧の変化の差を利用して閉じるといったメカニズムのようです。

ハエトリグサ(ハエトリソウ)捕虫方法
感覚毛(トゲ)は両側に3本ずつの計6本で、間違って無駄な動きをしないようにということなのか、1回触るだけでは反応せず、短期間に2回連続刺激を受けると閉じるという感じになっています。なお、刺激を感知するトゲが同一の場所でなくてもよく、2回目の刺激に関しては別の場所でも反応するようです。
「数」を数える植物の知性
ハエトリソウは、単に触れたから閉じているわけではありません。彼らは驚くべきことに、秒単位で「数」を数えています。
葉の内側にある感覚毛に一度触れただけでは、彼らは動きません。それは雨粒や風による「誤作動」を防ぐためです。しかし、最初の接触から「約20秒以内」にもう一度触れると、彼らはそれを「生きた獲物」と断定し、0.5秒という神速で葉を閉じます。 さらに、捕まえた後もカウントは続きます。中で虫が暴れて5回以上の刺激が加わると、初めて消化液の分泌スイッチが入ります。無駄なエネルギーを使わないための、冷徹なまでの計算と記憶力。彼らは脳を持たない哲学者なのです。
筋肉なき「0.5秒」の物理学
動物のように筋肉を持たない植物が、なぜこれほどの速度で動けるのでしょうか。その秘密は「電気信号」と「水圧」にあります。
感覚毛が刺激されると、葉の細胞に活動電位(電気信号)が走ります。これは人間の神経伝達と同じ仕組みです。この信号により、葉の外側の細胞が急激に膨張し、内側の細胞が収縮することで、葉全体が反り返るようにして閉じます。 これを「座屈(ざくつ)現象」と呼びます。コンタクトレンズを裏返す時の、あの「パコッ」という動きと同じ原理です。筋肉ではなく、物理的な構造の歪みを一気に解放することで、瞬きの速さを実現しています。
アマゾンではなく「ノースカロライナ」の孤独
食虫植物というと、熱帯のアマゾンやジャングルの奥地を想像しがちですが、ハエトリソウの故郷は意外な場所です。アメリカ合衆国の「ノースカロライナ州」と「サウスカロライナ州」の一部。この極めて限られたエリアにしか自生していません。
四季があり、冬には霜が降り、雪も積もるような場所です。世界中で愛されていますが、地球規模で見れば、彼らは非常に狭い地域で、絶滅と隣り合わせで生きてきた孤独な種族です。ジャングルの怪物ではなく、温帯湿地の繊細な住人であるという理解が、彼らと暮らすための第一歩です。
優しさが招く「冬の過労死」
ハエトリソウを枯らしてしまう最大の原因、それは皮肉にも「人間の優しさ」です。
冬になり、寒そうだからと暖かい部屋に入れてしまうと、彼らは休むことができません。原産地の気候の通り、彼らには冬の「休眠」が不可欠です。寒さに当てて、地上部を枯らせ(あるいは成長を止めさせ)、球根の状態で深く眠らせる必要があります。 冬に暖かい部屋に置くことは、人間で言えば24時間働き続けさせることと同じです。春になる前にエネルギーを使い果たし、過労死してしまいます。心を鬼にして、凍らない程度の寒い場所に追いやる。その冷遇こそが、春に再び目覚めるための深い愛なのです。
檻から「胃袋」への完全密閉
虫を捕らえた直後の葉は、まだ両手の指を組んだような「檻(おり)」の状態です。小さな虫なら隙間から逃げることができますが、これはわざと逃しているのです。小さすぎる獲物は、消化するコストに見合わないからです。
逃げられない大きさの獲物だと分かると、葉の縁が徐々に密着し、完全に「密閉」されます。ここから葉は捕獲器から「胃袋」へと変貌します。無菌状態の内部に消化液が充満し、数日から1週間かけて虫を溶かし、養分を吸収します。再び葉が開いた時、そこには風に飛ばされるほど軽くなった、虫の抜け殻だけが残されます。
「遊び」で命を削るストイックさ
面白がって、指やペンでわざと葉を閉じさせる行為。これは彼らにとって、命を削るほどの重労働であることを知ってください。
一度閉じた葉を再び開くために、彼らは莫大なエネルギーを消費します。獲物が得られない「空振り」が数回続くだけで、その葉は疲弊し、枯れてしまいます。最悪の場合、株ごと衰弱死することもあります。彼らの狩りは、生きるか死ぬかの真剣勝負です。その口を閉じさせる権利があるのは、彼らの糧となる虫たちだけです。
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