夏の七草

夏の七草です。1945年6月に日本学術振興会学術部 野生植物活用研究小委員会が、戦時中の食糧難の時節にも食べられる植物として、次の7種類を「夏の七草」に選定したそうです。

藜(あかざ)

アカザ科アカザ属の一年草。畑や空地などに多く、葉はゆでて食べることができるようですが、シュウ酸を多く含むため生食には適しないようです。ホウレンソウもアカザ科のようでホウレンソウ系の味がするようです。うさぎはシュウ酸を含むものは食べられません。ということは、ホウレンソウもダメですが藜もダメのようですね。

白藜(シロザ)の新芽の粉が紅色のものをアカザと呼ぶようで、アカザをシロザの1変種として取り扱っているようです。

藜(あかざ)

猪子槌(いのこづち)

ヒユ科イノコヅチ属の多年草。日のあまり当たらない場所にいるそうです。花はやや小型のようです。

狭義には、ヒナタイノコヅチに対して日陰猪子槌(ヒカゲイノコヅチ)、フシダカ、コマノヒザとも呼ばれるようです。

初冬の冷え込みの強い朝など気温が著しく低下している時に、イノコヅチの枯れ枝に白い氷がつく、氷柱現象とよばれる現象があるようです。

猪子槌(いのこづち)

莧(ひゆ)

葉鶏頭(ハゲイトウ)、雁来紅。ヒユ科ヒユ属の一年草。アマランサスの食用品種。ケイトウ (Celosia argentea) は同科別属です。

ヒユ属の種分化は分類により約20種~約300種と非常に多様で、雑種も多く分類は難しいようです。

莧(ひゆ)

滑莧(すべりひゆ)

スベリヒユ科スベリヒユ属の多年生植物。茎は赤紫色を帯びて夏に枝先に黄色の小さな花を咲かせるようです。山形県では「ひょう」、沖縄県では「念仏鉦(ニンブトゥカー)」と呼ばれるようです。

自生環境は、道端や畑などで、地を這って分枝。葉は長円形の多肉質で互生、ぬめりがあります(食べるとリンゴ酸の酸味もあるようです)。

スベリヒユは、CAMという光合成システムを持っている(CAM型光合成)ため、非常に乾燥に強いようです。

滑莧(すべりひゆ)

白詰草(しろつめくさ)

クローバーです。マメ科シャジクソウ属の多年草。白い花が葉の柄よりやや長い花茎の先につきます。小学生の時、よくシロツメグサの冠を作ったりしました。そんなことを忘れかけていた高校生の時に、当時の彼女が作ってくれたのが非常に新鮮だったのを覚えています。僕のイメージではシロツメグサで記憶していますが、シロツメクサでないと変換が出ないので、正式には濁点をつけないのでしょう。

原産地はヨーロッパ、ということで帰化植物です。花期は春から秋。自生環境は、野原や荒れ地、公園にもよくありますね。

白詰草(しろつめくさ) クローバー

姫女菀(ひめじょおん)

キク科ムカシヨモギ属の越年草。白い花を付けますがハルジオンとよく混同されるようです。和名はヒメジョオンですが、ハルジオンにつられてヒメジオンと言われることがあるようですが、ヒメジョオンが正しいようです。漢字で書けばすぐにわかりますね。

種子の数、寿命共に驚異的な数字であり、すさまじい繁殖能力をもっているようです。

姫女菀(ひめじょおん)

露草(つゆくさ)

ツユクサ科ツユクサ属の一年草。青花(あおばな)と呼ばれるようですが、花の青い色素はアントシアニン系の化合物のようです。開花時に全草を採って乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱などに用いられるようです。栽培変種の大帽子花(オオボウシバナ)は、容易に落とすことのできる染料として、よく下絵に絵の具として使われていたようです。友禅染めの染料として使われたりしました。滋賀県の草津市の特産物らしいですが、血糖値を下げる効果があるようで、コーヒーやお茶、お菓子に使われたりするようです。知人がそういう事業をしています。

露草(つゆくさ) 青花(あおばな)

その他 夏の七草

自然写真家 亀田龍吉氏の著書「写真でわかる雑草の呼び名事典」より、亀田氏選夏草七種。露草は重複のため除外します。

「あとがき」にあるように、雑草という言葉の裏には、人間の役に立たないものは十把一絡げにしてしまえというような人間の勝手と傲り、自然への無関心が見え隠れするように思います。植物の名前も人間の勝手なラベリングにしか過ぎませんが、「雑草」という括りにはそういった傲りがないと出てこないと思います。

白茅(ちがや)

イネ科チガヤ属です。初夏に白い穂を出します。茅根(ぼうこん)とよばれる、白茅の根茎には利尿作用があるようです。また、花穂を乾燥させたものは強壮剤として用いられるようです。

自生環境は荒れ地など日当たりのよい空き地や、河原、道端、畑などに細い葉を一面に立てて群生します。

白茅(ちがや)

昼顔(ひるがお)

秋の七草の朝顔は昼顔とする説もあるそうです。つる性の多年草で、地上部は毎年枯れ、春から蔓が伸び始め、夏にかけて道ばたなどに繁茂します。朝顔と同様に朝に開花しまずが、そのまま昼になっても花がしぼまないことから昼顔というようです。朝顔は小学校で育てたり、鑑賞用に栽培されることがよくありますが、昼顔はほとんど無いようで、一度増えると駆除が難しいため、大半は雑草として扱われるようです。

昼顔(ひるがお)

藪萱草(やぶかんぞう)

ユリ科の多年草。川岸や湿原などに自生。春先の新芽は山菜として利用されるようです。

ヤブカンゾウは中国原産の多年生草本であり、栽培されていたものが野化しているようです。草丈 は約80cm、開花期は7〜8月のお盆前後です。

藪萱草(やぶかんぞう)

蕺(どくだみ)

毒溜、魚腥草(ぎょせいそう)、地獄蕎麦(じごくそば)、之布岐(しぶき)

開花期は5~7月頃で、半日陰地を好み全草に強い臭気があります。生薬名十薬(じゅうやく、重薬)は開花期の地上部を乾燥させたもので、煎液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがあるようです。

お茶にもよく入っていますが、おばあちゃんとよく一緒に摘みに行ったのを覚えています。

蕺(どくだみ)

三葉(みつば)

こちらもセリ科ですが、うさぎの大好物です。蕎麦やお吸い物に最適な日本を代表するハーブですが、よく水耕栽培されているようです。6 月から8月に5枚花弁の白い小さな花を咲かせるようです。

多年草なので、越冬してまた芽を出します。

三葉(みつば)

野薊(のあざみ)

キク科アザミ属の多年草。薊の仲間は真夏から秋によく咲くそうですが、野薊は初夏に咲くようです。土手などで赤紫の花を咲かせます。

葉は羽状に中裂し、縁に棘があります。茎葉の基部は茎を抱き、花期にも根生葉は残るようです。

アザミ(薊)は、キク科アザミ属及びそれに類する植物の総称で、標準和名として単に「アザミ」とする種はないようです。

野薊(のあざみ)

夏の七草の選定の学術的背景と生態学的意義

「夏の七草」は、平安時代から定着している春の七草とは異なり、歴史的に複数の選定案が存在します。最も広く知られているのは、昭和初期に植物学者の牧野富太郎博士が提唱したカラスウリ、センノウ、ヨロイグサ、ミソハギ、カワラナデシコ、オミナエシ、ヒオウギという組み合わせですが、これらはいずれも日本の夏を代表する自生植物であり、分類学的にも多岐にわたります。

分類学から見る多様性

夏の七草に選ばれている植物は、ウリ科、ナデシコ科、セリ科、ミソハギ科、アヤメ科、スイカズラ科(旧オミナエシ科)と、科のレベルで重複が少なく、極めて多様な進化を遂げた群によって構成されています。これは、春の七草の多くがアブラナ科やキク科に偏っているのと対照的です。夏の強い日差しと高温多湿な環境に適応するため、それぞれが異なる形態的特徴(ミソハギの抽水植物としての性質や、カワラナデシコの乾燥耐性など)を備えている点は、植物生態学的に極めて興味深い観察対象となります。

歴史的・文献学的アプローチ

夏の七草には、牧野案の他に、明治時代の書家・前田黙鳳(まえだ もくほう)が提唱した「ひまわり、ほうせんか、おしろいばな、あさがお、ながみひなげし、さるすべり、のうぜんかずら」という案もあります。しかし、前田案にはヒマワリ(北米原産)やオシロイバナ(南米原産)といった外来種が多く含まれるのに対し、牧野案は万葉集などの古典文学にも登場する「日本古来の野草」で統一されています。ここに、近現代の植物学者が試みた「日本の原風景としての七草」の定義づけという、人文学的な意図を読み取ることができます。

資源植物学としての側面

学術的な視点で見れば、夏の七草の多くは、単なる観賞用ではなく「生薬」としての機能を有しています。

  • カラスウリ(王瓜): 解熱・利尿作用
  • カワラナデシコ(瞿麦): 消炎・利尿作用
  • オミナエシ(敗醤): 解毒・排膿作用

これらが真夏の過酷な時期に選定された背景には、暑気あたりや感染症が多発する季節において、身近に存在するこれらの有用植物を認識させ、その知識を共有するという、実利的な博物学の側面があったことも否定できません。

都市化と現代の生態系

現代の環境保全学の観点から夏の七草を見直すと、これらはかつて全国の里山や水辺に普通に見られた種ですが、現在では開発や環境変化により、カワラナデシコやミソハギのように自生数が減少している種も含まれています。春の七草が「食(粥)」という形で現代まで文化的に保存されたのに対し、夏の七草は「観察と愛でる対象」に留まりました。

これらの七草を同定し、その生育環境を理解することは、単なる季節の知識を得るに留まらず、かつて日本列島に存在した植生の多様性と、それを支えてきた湿地・草原といった二次的自然の重要性を再認識するための入り口となるでしょう。

牧野富太郎による「夏の七草」選定の学術的基準

牧野博士が昭和10年(1935年)に提唱した夏の七草は、当時の学術的な知見と、日本の自生種を守るという強い教育的意図に基づいています。その選定基準は、主に以下の三つの柱で構成されていました。

日本固有種および古来種への限定

博士が最も重視したのは、その植物が「日本の原風景」を構成する土着の種であるかどうかという点です。当時普及し始めていたヒマワリやコスモスといった外来種を一切排除し、万葉集や古事記の時代から日本列島に自生していた種を選びました。これは、外来種に押されつつあった日本の固有植生に対する注意を喚起し、分類学者として「日本の植物学」を確立しようとした博士のアイデンティティの表れでもあります。

生育環境(ハビタット)の多様性

選定された7種を生態学的に分析すると、驚くほど生育環境が分散されていることがわかります。

  • 水辺・湿地: ミソハギ(抽水植物に近い性質を持つ)
  • 乾燥した草地・河原: カワラナデシコ、オミナエシ
  • 森林の縁・半日陰: カラスウリ、センノウ
  • 山野の開けた場所: ヨロイグサ、ヒオウギ

このように異なる環境に住む植物を一つずつ選ぶことで、この七草を網羅的に観察しようとする者は、必然的に水辺から山野まで、多様な生態系を巡ることになります。これは、自然界の全体像を把握させるための博物学的な「フィールドワークのガイド」として機能させるための設計でした。

 分類学的・形態的な対照性

植物の構造(形態学)を学ぶ上での「教材」としての価値も計算されています。

  • 蔓(つる)性: カラスウリ
  • 単子葉植物(平行脈): ヒオウギ(アヤメ科)
  • 双子葉植物(網状脈): カワラナデシコ、オミナエシ等
  • 散形花序(傘状の花): ヨロイグサ(セリ科)

特にヒオウギという単子葉植物を混ぜ、かつヨロイグサのような複雑な花序を持つセリ科を加えることで、植物の形態的特徴を比較・同定する際の基礎的な訓練となるような構成になっています。

教育的デバイスとしての七草

牧野博士にとって、夏の七草は単なる季節の娯楽ではなく、日本人が「身近な自然の多様性」を正しく認識するための教育的デバイス(装置)でした。

それぞれの植物が持つ薬理成分(アルカロイドやサポニン等)や、夜に開花するカラスウリの生理生態、アリによって種が運ばれるヒオウギの散布戦略など、一つ一つの種が植物学の広大な入り口となっています。これらの7種を理解することは、日本の夏という季節を、多角的な生物学的視点から再構築することと同義となります。

Category:植物

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